アブラカタブラ・キャンセラー
居石入魚
第1話 魔術師とは犯罪者である
魔法が世界に対する干渉行為ならば。
魔術は日常に対する干渉行為である。
との言葉を遺したのが誰なのかは知らないし、まず魔法なんてものはボク自身の生活に影響を与える類の世界ではなかろうとタカを括り高楊枝で生きていた。そんなのは鍔広帽子を目深に被ったおばあちゃんがイッヒッヒと笑いながら鍋を掻き回しているような方々だけにしか理解出来ない言葉であろうし、幸いながらボクの対人関係には一人もイッヒッヒババアは存在しない。
だが確かに。
魔法が世界への干渉なのは理解出来た。
魔術が日常への干渉なのも理解出来た。
律を歪めるのが魔法で。
和を乱すのが魔術だ。
これは単純に現代兵器のレベルを底上げしてしまうような新兵器が魔法だと考えていい。ルールを破壊するのが魔法である。違反も無視もせず、壊すのが魔法だ。例えば世界で大きな戦争が起こらないように抑止力として機能するのは核ミサイルだけれど。代わりに隕石が任意の場所に堕ちてきたり、指定した地点にマグマを噴き出させるような魔法が在ると仮定すれば今まで機能していた核ミサイルがゴミになる。木曜日に資源ゴミの袋に入れて公民館前に棄てられていたら業者さんが「ああ、ゴミだな」と片付けてくれる。
これが、魔法だ。
ならば、魔術は?
この比喩もとても単純で、解りやすくいうと“隠し持てる毒を撃つ拳銃”に近い。先んじて捕まえる事の出来ない兇器。所持する証拠が無い兇器とも言い換える事が出来よう。しかし魔術が厄介なのは秘匿性や携行性ではなく“それが魔術に依る事件事故なのか自然発生もしくは人災としての事件事故なのか”が殆ど解らないという一点こそだろう。
解らないからこそ。
兇器として沢山使われるのは定石。
確かに魔術は日常に干渉したのだ。
干渉して。
乱したのだ。
ボクは許さない。
魔法だの魔術だの。
ぜぇ〜んぶ。
ぶん殴ってやる。
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