あの日のすいばり

あめのちあめ

第1話

 痛みが続く限り反芻できる愛の記憶と、幸せによって引き攣るこの違和感はどちらが本物なのか、そんな事ばかり考えている。


 今年の熱波で優しい夏の思い出は蒸発してしまったが、アスファルトで固められた道とビルによって行き場をなくしたそれらはじわりじわりと私の中の水分を奪っていく。


 ゆっくりと額から垂れる汗を手の甲で拭いながら、背筋にべっとりと貼り付くシャツの重さを感じて振り返る。

 もう、私の後ろをのんびりと歩く君はいないというのに。

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