【完結済】最低限健康で文化的な『異世界創造』

玄納守

レイ・スターシーカー自伝 ~第三章『我が師』より~

第1話 軍務尚書の手記

「十四歳で出会ったものは、その後の人生を大きく変える」


 少なくとも、私には当てはまる話だ。

 今や一国の軍務尚書となった私だが、十四歳までは、ただの孤児だった。


 豊かになったいまのアルディラ共和国からは、想像すらできないだろう。

 当時のアルディラ王国は無茶な領土拡大と巨大な災害、そして長引いた内戦で傷つき、多くの戦災孤児を産んでいた。


 荒廃という言葉がぴったりの国だった。

 十四歳の私はそこを彷徨う戦災孤児の一人だった。


 私があの日出会った「中年のおっさん」は、それまでに出会った大人の中では、誰よりも思慮深く、誰よりも孤独で、誰よりも変人で、そして誰よりも優しかった。


 私の人生に最も大きな影響を与えた人物だ。

 名をシド・スワロウテイルという。


 今や出版に携わるものや、芸術文化に携わるものであれば、この名を知らないものはいないだろう。今では「新アルディラ芸術の祖」や「最初の文化人」としても知られている。

 だが当時は、もっと殺伐とした通り名で知られていた。


 例えば「王国随一の冒険者」「竜殺し」「アルディラの盾」「王国長槍術師範」といったところか。


 ……いや。一番有名なのは「傭兵王」か。


 シドは、内戦終了後、それらの名声から逃げるように突然引退を表明し、北の銀嶺山シルバーピークで、こっそりと隠遁生活を始めていた。まだシドが世界を変える前の話だ。


 当初、私がそこを訪れたのは、弟子入りすることが目的ではなかった。

 彼を倒したら、王軍に入れてやると唆されたからだった。


 私はシドをに銀嶺山を登っていた。

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