【転生×魔法×剣×SF×追放×主人公最強】末子として生まれた王子。実は元剣聖であり、元賢者であり、元錬金術師であり、元治癒術師である
新山田
序章 第1節
これは何度目かの転生、慣れた意識の覚醒。目を開けるとぼんやりと見える景色は、至るところに装飾が施された大きな部屋。そして設えの良いメイド服を着た者達と自身を抱える産婆。そこからうら若く美しい黒髪の女性の腕に手渡される。
彼女が今回の私の母なのだろうか。和まりの状況から察するに貴族もしくはそれに準ずる位の高い地位の家に生まれたのだろう。
「はぁー私の子供・・・なんて愛らしいのかしら。これからよろしくね”レユ”」
どうやら僕の名前は”レユ”らしい。
「どうしてこの子泣かないのかしら・・・なにか体調が悪いのかしら・・・どうしましょう!バーバリー」
と驚いた顔で産婆のほうを向く。
おっと・・・役割を忘れるところだった。
「おぎゃ!おぎゃ!」
これは何度やっても慣れないな・・・。
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ここはタートルット皇国という建国して千年ほど経つ大国らしい。僕はその第八側室シル・エーギン・タートルットの第一子息として生まれた。
現皇帝フェルディナンド・エーギン・タートルットの8人いる側室の8番目。つまりは皇帝の子供の中で末弟となる。
「それでは、レユ様。これから皇族としてのマナーを学んでいただきます」
「よろしくお願いいたします」
齢4歳を迎えた。それまではほとんど学ぶ機会を与えられることはなかったのでメイドたちの話すことや母であるシルから伝え聞く情報を得るしかなかった。
だがようやく始まった!
千年も続く皇国だけあって格式は高くマナーの数も多い。
元々興味があるわけじゃないがここで生きるにはしょうがない・・・
「ふふふ、わたくしはレユ様の御兄弟、姉妹様方を教育してきましたがあなた様が一番飲み込みも早くそして何より嫌がらず学んでいただけて感動しております」
教育係のアルーナは僕に微笑みかけて喜んでいた。
まぁー例え王子や王女であってもいうことを聞かない子供相手は苦労しただろうなぁー喜んでくれて何よりだ
目の前にいる眼鏡の似合う女性に同情を寄せてしまうのはしょうがないことだな・・・僕という意識だけでいえば400歳ほどになるのだから・・・
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400年・・・我ながら長い間生きている物だと思う。最初は名も無き村で生まれた。剣と取り必死で生きた。そのおかげでいつの間にか”剣聖”と呼ばれるようになっていた。
流派を立ち上げ多くの弟子を持つことになった。だがその中で大きな野望を持つ者が一人いた。加えて大きな才能を持っていたことで野心は膨れ上がり僕は止められずある日背中を刺されて絶命した。
俗世の未練から成仏できずにいたところを高名な魔術師と出会い契約の元新たな体を授けられどうにか野心を持つ弟子を止めることができた。
だが次は高名な魔術師の野望に付き合わせれることになった。契約の元対抗できず長く付き合うことなってしまった。その中で隙を見つけては魔術書を漁り契約を破棄して倒すことができた。
・・・あとも似たような出来事を繰り返しいつの間にか400年も経っていた。
つまり今世でも倒すべき悪がいるということだ。名前はアグダバト。治癒術を極めその頂にいる者。彼女の治癒はその領域を超えて効果を発揮し対象となった者を作り変えてしまう。変えた者を”魔人”と呼び、その力を使って自身の軍団を作っていた。
その軍団をもって世界征服を行っていたことに気づいた僕は”治癒術師”として止めるあと一歩のところまで来ていた。が及ばず倒された。
そして転生した。正直その後にどれほどの時間が経ったのかわからない。なぜなら皇子として生まれた、この千年も続いているというタートルット皇国の名前すら知らなかったのだ。
そして今は、アグダバトが生きているのか死んでいるのかわからないのだ。
現在、王城の中にある宮廷図書の広間に来ていた。
「レユ様!本当にこのような文献をお読みなるのですか?難しいようでしたらわたくしが読みますが・・・」
「読めるからいい。そこに置いてくれ」
確かに4歳で読むことは不可能な専門用語がびっしりな歴史本。本来なら読めないと嘘をついても良いのだが今は事の次第を確かめる方が先決だ!
メイドに分厚く古書を置いてもらい開く。文献の名前は”ガンダーラ大陸歴史書”。
良かった・・・自分の知っている大陸の名前だ!
いくつか知っている歴史を読みながら目的の時代を探す。
「あった!」
白き魔女アグダバト。その者は人を魔人へと変える力を用いて大陸を恐怖に包んだ。昨日の隣人が突然魔人となってしまうその状況に・・・。だが一人の若者が立ち上がった。かの勇者アルニアである──
と始まり仲間を集める過程と長い決戦の話が書かれている。そして──
「勇者一行は遂に魔女を倒し大陸に平和を取り戻したのである・・・っと」
良かった。彼女は倒されていたのか!
安堵とともに息を吐く。とふと一つの事が頭を過ぎる。
「あれ?」
”それじゃあ僕は今世では何をしたらいいんだ?”と。
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5歳となった。
目的もなく1年が過ぎてしまった。言われるがまま予定をこなし空いた時間は図書の広間で時間をつぶした。
「レユ様!それでは今日から剣のお稽古が始まります。もしもお嫌でしたらいつでも仰ってください!すぐに止めますので!」
仕えのメイドは必死な形相で強く手を握ってきた。
「ああ、その時はよろしく頼むよ・・・」
「はい!お任せください!」
稽古をつけてもらうべく鍛錬場に向かった。
さてようやく興味のある事ができる・・・剣などもう久しく触っていないような気がする。たった年月でいえば5年ほどしか経っていないのだが・・・。
「お初にお目にかかります、レユ皇子。私はアキュート・ダリウ・ソリーと申します、以後お見知りおきを」
丁寧な皇国式の挨拶で出迎えてくれたのは皇家に仕える皇国騎士団の騎士隊長アキュート。ソリー家の長子で最年少で騎士にまで上り詰めた血筋良し、実績良しの者だ。
そのため礼儀も良く知っており子供とは言え皇家への一定の礼節を見せてきた。
大したものだと思うが・・・今後自分がこの社会で生きていくと思うとげんなりとした気になってしまうが今は挨拶を返さなくては・・・
「僕は第11代目皇帝フェルディナンド・エーギン・タートルットの側室シル・エーギン・タートルットが長子、レユ・エーギン・タートルット。以後お見知りおきを、ソリー騎士隊長殿」
礼節をわきまえつつ皇家として威厳を残す。これのどこがいいのかさっぱりわからないがここではこれが正解なのだろうと頭を垂れて胸に左手を当て右腕を広げる。
アキュートはそれをみて少し驚いた様子だった。
(僅か5歳にして礼節をわきまえるか・・・)
アキュートは自身の役割を全うするべく意を正す。
「・・・失礼、レユ皇子。それでは剣の稽古に参りましょう」
「よろしくお願いいたします」
さて剣術がどれだけ発達しているか楽しみだ!
「それではまず剣の振り方から覚えていきましょう」
彼はさわやかに笑顔を作ると金色の髪を靡かせてこちらに歩み寄り木剣を手渡してきた。
「これを使って一通り剣を振る型を学んでいきましょう」
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いくつかの丸太が立てられた場所に場所を移動した。
「まずはこの丸太に打ち稽古からです。私が剣を振るのを真似してみてください」
と丸太に小気味よい音をたてて木剣を当てていく。
(・・・ふむ)
期待してきてみればなんと児戯に等しい所作ではないか・・・。剣の道はすなわち遍くモノを斬る道。それを斬れないことを前提にして振るだけ鍛錬との呼べぬもの。
「・・・まったく嘆かわしいな」
「ん、何でしょう?少し難しかったでしょうか」
「いやなんでもない。やってみるよ」
木剣を振る。丸太に当たるとコンコンと音が鳴る。
つまらない。つまらない。つまらない。つまらない。
剣とは斬らねばならぬ、斬らねばならぬ。
なぁ木剣よ、お前もそう思うだろう?
手を伝い流れてくる小さなか細き感情のようななにか。
(斬れぬというか。なんとつまらない。お前はこの丸太を斬らねばならない。斬らねばお前は剣ではない!さぁ斬るのだ!)
アキュートは横にいた奇麗な黒髪の幼児から異様な気を感じた。
(これは・・・殺気か!?)
いくつかの死線を潜り抜けてきた彼だからこそ分かった気配の正体。だからこそそれが齢5歳が放つことに驚き少しの恐れが沸き立つ。
「皇子!少し落ちt」
斬らねばならぬ!
その一振りは精練された鋭き殺気を乗せた一閃。斬撃は止まることなく振り切られてレユは残心を起こす。そして──
「丸太が切れている!?」
上段から斜めに振り落とされた木剣によって幾つもの打ち傷が残る丸太が重力に従い地面に倒れた。
「良き」
レユの心は数百年前の”剣聖”としての追憶が言動に表立って現れていた。
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読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字があるとおもいます。
お手すきの際に良ければ報告いただければと存じます。
また、応援♡または星★を頂ければ励みになります!
併せて、『読んでいてこういう展開を期待していた』や面白いと思っていただいている点や『こうなれば面白くなるかも』などのコメントもいただけましたら幸いでございます!
どうかよろしくお願いいたします!
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