七夕短編小説

さっぷ(SaP)

七夕の大きなお節介

ある日、友人と学校帰りに立ち寄った商店街で、なんとなくイベントで飾られていた笹飾りに冗談混じりに願い事を書いてみた。


ある日、お母さんとお買い物に来た近所の商店街で催されていた七夕イベントで、ちょっとした出来心で願い事をしてみた。



「「それがまさかあんなことになるなんて……」」






 俺達が目が覚めた時、そこは全く知らない人気の無い砂浜だった。


 時間は大体夕方に差し掛かるかというくらい。わたし達はその直前に着ていたであろう服装のままそこで気を失っていたみたい。


(なにこの状況。えっ?俺、さっきまで部屋でゲームしてた筈だよな?ていうかちょっと待て。隣りに居るのって同じクラスのカオリちゃん?え?ま?)

(ちょちょちょっ!ちょっと待って!どうしてわたし。わたしっ!ユウタ君とこんなところに!?)


 とにかく俺達は状況がすぐには飲み込めず、ただ慌てるばかりだった。



『おっ?お二人さん目が覚めたようだね』



 そんな俺達にどこからか声が聞こえてきた。


 私達はまだ落ち着かない心をなだめながらただその声に耳を傾ける。



『どうだい?キミたち。二人の願い事が叶ったわけだけど、うまくやれ……て訊くのは野暮だね』



 すると、その声はまたよくわからないことを言い始めた。

 けれど、その言葉にわたし達は心当たりが無いか少し思い返してみる。


(願いが叶った?一体なんのことだ?いや、まぁ見様によっては嬉しい状況ではある……のか?)


(願い事?えっと……あっ)



『おっ!彼女さんの方は気が付いたみたいだね♪彼氏クンの方はまだみたいだけど、現状に満足してそうだしまぁいっか』



 俺達の様子を見てなぜか声は楽しそうな感じになり、俺達の反応を待つこともなく話を続ける。




『それでは!この度は世の迷えるすれ違い男女のみなさんを幸せにする【七夕お願い叶え隊キャンペーン】当選おめでとうございます!今回はそれぞれの「好きな娘と一緒に海に行ってみたい」って願いと「憧れの人と二人っきりで静かな砂浜で過ごしてみたい」ていう願い事を叶える為にこの様なシチュエーションをお贈りさせて頂きました!夜更けにはお二方共、ご自宅までお送りしますので安心して愛を紡ぎ合ってくださいませ。それでは!』



 声は言うことだけ言ってそのまま途切れてしまった。


 俺達はそれから帰るまで、お互い気恥ずかしなりながらただ二人で並んで海を眺めつつ、余計なお節介へ感謝の愚痴を溢して過ごし、無事に翌日から交際関係になった。



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