第9話 形だけの繋がり
連合軍──。
その
国が異なれば主義主張も当然異なる。好きな事を言い合った成れの果て……。それが小さな紛争を呼び、やがて大きな戦争へと進化を
しかも完全に従順なAIがそれを余計に加速させた。AIを積んだアンドロイドは
人間ではない。死を恐れぬ……違う、死という意味を理解させてないAI兵土同士を戦わせる。
これ程、楽な戦争はない。互いが殺し合う罪を背負う訳がないのだ。但し巻き込まれる民達は、実に理不尽な形で命を散らす羽目に
この世界情勢を重くみた一部の列強国や、財人達が形ばかりの手を握り、手元にある兵達を紛争解決という名目で集結させたのが、この連合軍の成り立ちなのだ。
13年前、イタリアの属領であるシチリアで起きた大爆発。この事実は当然、連合軍を動かす上層部にも知れ渡った。
だが所詮小さな島で起きた珍事として扱われた。そんなものに大事な兵を割く余裕などない。一番お偉ぶった組織というものは、当然動きも
最高の人材と最強の兵器を有した処で
増してやそのTOPが複数居れば、さらにタチが悪くなるのが道理。
そんな感じで13年もの月日を
しかしどちらかというとそれは名目に過ぎない。『演習ついでに可笑しな連中を見つけた場合、これを
──実に
ファウナ一行が見送った3機の戦闘機と、後に続いた補給艦と
「──隊長。自分、非常に
補給艦……ではなく、実は上陸向けの歩兵団が乗機している中でのやり取り。
実戦経験ゼロだが、訓練経験だけは異様に長い若い男の兵。如何にも不服な顔で、銀髪の男へ詰め寄る。
「ア"ッ? 何言ってんだ
この部隊の指揮を一任されている西洋人の隊長。名を『アル・ガ・デラロサ』という。
鋭い流し目をこの小生意気な部下へ
短く切った銀髪と迷彩色の様な緑が入り混じった不思議な頭だ。銀髪は戦場じゃ目立つので迷彩色の方は、自ら染めているのだが、その管理が余りにも雑。
伸びてきた新しい銀と染めた緑が混ざっているから、こんな可笑しなことになっているのだ。
「だってこんな出撃、絶対におかしいですよ。前を往く3機はAIの無人機。それですらステルスじゃないというのは意味が判らんのです」
このなまじ頭だけ良さそうな男。隊長へ意見するのを止めようとしない時点で、自身の甘ちゃんぶりを
「お前、
「は、はぁ!?」
デラロサ隊長に何時の間にやら背中を獲られて、こめかみに銃を
「こんな辺境だぞ、チンケな紛争なら
「我々に連合軍の広告塔になれと?」
隊長が「バンッ!」と銃声を吐いた後、その声量に負けない音で床に叩きつけらた兵士。此処までされても……いや、寧ろ此処までされたが故、より引っ込みがつかなくなる。
ギロリッ。
床に投げ出されたみっともない格好のまま、それでも
「何だ何だァ、まだ何かあんのか?」
上から見下ろすデラロサである。次は右手にナイフを握り、空いた左手をポンポン叩く。『次はこれで殺る』と言わんばかりだ。
「な、何故AI兵だけに任せないのでありますか? 増してやこんな前時代的な
「──そこまでだ。これ以上グダグダ言うなら敵前逃亡とみなし、今すぐ此処から、この私が叩き落とす。第一そのAIとやらが信用ならんからこその我々だと何故気付かん」
未だ机上の空論を訴えるのを止めようとしないこの男に対して、隊長の代わりに副長が応じた。
相手の身を斬り裂きそうな鋭い口調の女だ。『マリアンダ・アルケスタ』良い加減なきらいのある隊長に比べ、マリアンダの成すことは逐一徹底して迷いがない。
完全に染め抜いた迷彩色の髪色を見るだけで、それが
如何にも連合軍といった編成である。
「よせアルケスタ。そんな奴でも貴重な連合の兵士だ。勝手に死なれちゃ監督不行き届きで、この俺様が降格される」
「チィッ……」
如何にもキレ者といった感じのマリアンダが舌打ちした。この副長、本当に出来る女だが、歳はまだ19歳。あどけなさと
「──まあ確かに前時代的なやり方だとは正直思いますね。隊長が
此処でマリアンダ……通称マリーの矛先が
しかし隊長だけは違う様だ。確かに
「おっ、何だァ、アルケスタ。俺だけ最新型に乗れるんでやっかみかっ? 良いだろ、フフッ……」
嫌味を言われたのに寧ろ喜びニヤリッと返す隊長である。
「いえ、これっぽっちも思ってません。最新型?
「相変わらず口が達者だな
さらに不意にマリーと愛称で呼ぶ。その格好のまま静止する二人。
けれどアル・ガ・デラロサにも、マリアンダ・アルケスタの方も、その気は全くない顔つきだ。
「前時代的? 良いね良いね、大いに結構。いざとなったら俺様、ナイフ1本ありゃ、それで充分なのさ」
「でしょうね……。
恋人達の様な距離感で何とも冷ややかなやり取りが続く。
「へッ! そういう事だッ! 連合に入ってから訓練ばかりですっかり身体がなまっちまった。やっぱ戦争は
アル・ガ・デラロサ──。スペイン出身のくせにその
先程『ナイフ1本……』とほざいたが、本音を言うと一振りの刀と、日本人が描いたロボットが大好物な子供じみた人間なのだ。
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