第6話 X(未知)なる存在
ファウナ・デル・フォレスタの生家とは、まるで異なる現代的な建造物。いずれ
吹き抜けの
「──我が
心の底から驚いている。ただの小娘とその護衛で在れば、敗北の要素など見当たらなかった。
確かに
「ファウナ・デル・フォレスタ、
「あら、良いではありませぬか。
透明な強化プラスチック越しの
シルクの様に長く清らかな銀髪と、白衣と司祭服の中間の様な出で立ち。顔を見ずともその口調だけで此方を
その蒼き両眼と口元、間違いなく笑っていると確信出来た。
「その呼び方は止めよ……今の我はレヴァーラというただの
──そう、今の我を創りし
今の我は、名をレヴァーラという。長い黒髪を
「リディーナ、貴様が我に与えてくれたこの
これまでの
だが見た目なんてものは気にしないという態度で在りつつも、
「あらあら、私は良きチャームポイントだと思いますが。生き物とは
「──フンッ、判らぬ。ままならぬモノを
負傷者の様子から顔を
如何にも面白くないといった態度で鼻を鳴らすレヴァーラ。確かに口元のホクロが彼女の美しさを
リディーナは、
そしてさらに発展させ、マーダの意識を他人へ移す科学的な手伝いをした言わば新しき生みの親と言えなくもない存在なのだ。
以後もレヴァーラを
「それはそうと……」
口元のホクロに変な褒められ方を貰ったレヴァーラがふと思い返す。此処からアノニモとジレリノの様な成功例が10人誕生した。
その大方を占めている連中についての話だ。
「この実験の成功者の
「さあて……私もただの
──そうなのだ。
他の成功例達も多くを占めるのが女という性別の
そして己が
もっとも13年前、この島で一番巨大な火山を吹き飛ばして離反したあの大馬鹿の様な例外とて存在する。
「女の方が遺伝子……染色体、
自身の下腹を
「Xか……。まあ確かにどうとでも
綺麗な
女の方が、あの地獄にも耐え得る身体を持っているのかも知れない。無論、
「処でこの
──取り込む。此処で言うそれは、具体的に語れば
要は
「──いや、確かに貴重な
「もし今後、我に
そう言い残すと後はどうでも良いとばかりにその場から立ち去るレヴァーラであった。カツカツッとヒールが固い廊下を蹴る音を残して……。
◇◇
「──あ、うん? わ、私寝てた?」
ファウナは洞窟の天井より染み出した氷水の如く冷たいものを額に浴びて、その目を覚ました。
慌てて身体を起こしてしまい「痛たた……」と身体を擦る羽目に
寝ているのが洞窟であれば、自然、背にしているのも同じ洞窟の固い岩肌なのだ。
「おぅ、起きたかファウナ」
「こ、此処は──」
笑顔で自分の目覚めを受け入れてくれた二刀使いのオルティスタである。ファウナがその清き蒼い瞳をキョロキョロさせる。
人間が5人も入れば満席状態になりそうな小さな洞窟であった。レヴァーラ等が居た場所との落差が激し過ぎる。
洞窟の一番奥に1つしかなかったのであろう簡易ベッドが置かれており、武闘家のラディアンヌが寝息を立てていた。
オルティスタは、
周囲に缶詰を空けた物が数多く転がっていた。
「──ふぁ、ファウナ様?」
「あ、ゴメンッ、ラディアンヌ。起こしちゃった」
如何にも眠そうな緑色の目を
主人であるファウナ
そんなラディアンヌを見たファウナとオルティスタが思わず笑顔になる。簡易ベッドなんかよりも
ひとしきり笑った後、普段の礼儀を忘れるオルティスタが、珍しく膝を
「お、オルティスタ?」
「ファウナ、そして
こんな
「──そ、そうだっ! い、いや、そうです……。私とて全く同じ想い、これまで以上に
頭がボーッとしていたラディアンヌであったが、同胞の態度に気分を改め、此方も慌てて立ち上がり、頭が地面に届くのではないかと心配になる程、深々と
「や、止めて二人共……こ、困るよ
顔を真っ赤に染めて小さくなるファウナ。声すら小さくなって
これにはラディアンヌも、オルティスタさえも「やっぱり可愛い」と、口を揃えて笑うのであった。
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