みらいせいふく
ヘルメス
第1話 新たなる旅立ち
「宇宙はとてつもなく広大、そして無限に続いている!そしてその宇宙には、私達の住む地球の様な奇跡の星が、きっとたくさんあるはずだ!」
今や誰でも言える事、無限の可能性を秘めた宇宙に対しての願望、その博士っぽいコスプレをした男が教育番組で発した言葉は、当時七歳のオレの心を動かすのには十分だった。
それから宇宙にまつわる物が好きになり、片っ端からねだったし、片っ端から読み漁った。
しかし、星の名前を大体覚えた頃に、何故か熱が冷めてしまった。テレビで日夜明かされる宇宙の神秘、科学力の向上速度、それらを見ていたら「自分が解き明かす前に他の人が全部解明するんじゃないか?」と思ったら、フッとやる気が無くなってしまった。
中学、そして高校に入ってもそれが再熱する事はない。私生活では宇宙の事を調べるどころか給料の良い会社に勤める条件を調べる程だ。
でも、そんなオレでも1つだけずっと気になっている事がある。
この広い宇宙には、オレたちみたいな生命があるのだろうか。
地球より300万光年先の星
『No.04、応答しろ。ブナヤ星攻略の進歩を報告しろ』
耳に付けてる通信機から長官の声が聞こえてきた。私は周りを見渡し、瓦礫と死体の山を眺め、手元の武器を置いてあるウェポンボックスに差し込んだ。
「こちらNo.04、ブナヤ星の総司令部『カビンスコ』を制圧。激しい戦闘の末、我が隊に3名の死者、3名の負傷者あり、救助隊を要請する。」
隣には肩を撃ち抜かれて泣き崩れる部下が1人、あとの2人は後ろでガタガタ震えていた。
『了解した04、あと…救助隊と別に、輸送機を一機手配する』
「なにか来るのか?」
『逆だ。お前が来るんだ04、新しい任務だ』
「新しい任務……?」
兵士には休暇が無いのを、改めて実感した。
宇宙巡洋艦「バルドラ」
「よ、お帰り姉貴」
艦について、会議室に着くなり私の後輩がニタニタしながら見てくる。
「ただいま05、あんた工作任務どうだったの?」
「そりゃもう完璧よ。あと数週間でアマクラの星は制圧だ」
「そ、で?ジャグ艦長?私の新しい任務は何?」
テーブルから立体プログラムが出てくるタイプのプロジェクターの前にいる髭の生えた男、ジャグ艦長に訊ねると、艦長は座るようジェスチャーし手元の資料を開いた。
「…まずは任務達成御苦労。そして新しい任務は、偵察任務だ」
「偵察?偵察機じゃなくて強襲機の私が?」
艦長がプロジェクターを起動すると、丸く所々青い星が浮かび上がった。
「この星を調査してほしい。数ヶ月前から存在は確認されていたが、先程明確な場所を特定したらしい」
「……青い星ね。これ全部水なの?」
「らしいな。それも含め、色々調べて欲しいとの依頼だ」
私は艦長の資料を覗き込んでみた。色んな記述が「不明」になっていて、推定文明レベルは「5」となっていた。
「文明レベル5?何これ、五千年前の私達の星レベルじゃん。こんな星どうするの?」
「それを見定める為にもお前を送る。未知なる星だから何があるかわからん。故にお前を送る」
「確かに偵察機には荷が重いわね。いいわ、とりあえず行ってみましょ」
「お前は発進口に向かえ、準備してれば、その間に到着するだろう」
私はプログラムの星をつついて、部屋を後にした。しばらく歩くと、後ろから05がやってきた。
「ヘマしないようにな姉貴、オレ1人にこの艦のお守りはキツイぜ?」
「しないわよあんな低レベルな星…パッと調査して終わりにするわ」
発進口で装備を整えて待っていると、急にハッチが開いた。青色の輝きが眩しいと感じていると、通信機から声が聞こえてきた。
『04聞こえるか?今回降りる地点はポイントK、目の前にあるバカでかい大陸だ。本作戦の目的は、星全体の情勢の把握、物資の現地転送、そして現地住民を最低1人捕獲だ。現地のセーフキャンプは適所に建てるように』
「了解。その他任務は通信にて受けとる」
『了解した。カウントダウン!』
私は手のひらサイズに畳まれた小型のウェポンボックスと着込んでいるバトルスーツを触って確認した。カメラに良好のサインを送ると、足元で私を支える射出機がエンジンを吹かしはじめた。
『発進まで5、4、3、2、1、発進!』
「No.04、出る!」
射出機が勢いよく動き、私は暗く美しい宇宙にとびだアンバビガバブロボバアバブバボンブベァ
「警報がなっているぞ!何が起きた」
「あ、あー…艦長、これ、04射出機にしっかり足はめてなかったみたいです…」
「またか…あれだけ確認しろと言ったのに…あちこちぶつけて、無造作に放り投げられたろ?通信は?」
「っスー…ダメっすねこりゃ…やりましたねアイツ」
「……本国に通達、04の予備の装備と、通信機を二つ申請しろ…なお、作戦は続行する」
かなり情けないポーズで青い星に落ちてる私、大気圏突入可能な体なので焦る事は無いのだが、姿勢を正し、耳の通信機を外して見てみる。見るも無惨な姿の通信機に、私は涙を禁じえなかった。
「そ、そんなぁ~…また弁償モン?…今月私ピンチなのにぃぃぃぃぃぃ!!」
悲鳴を吐き出しながら、私は落ちていくのであった。
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