飛び立つことはできないから、

緑川 つきあかり

プロローグ

 多くの生徒たちが行き交う、ただの廊下。


 幾人もの生徒とすれ違っても、決して目にも留まることはない。


 けれど、たった一人の女子。


 いつものように変わらぬ生徒を横切った時、艶やかな短髪を靡かせ、整った顔立ちをした彼女は、天の輪を頭上に載せていた。


 そう、それはまるで天使のように……。

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