第36話 ポータル異常レスキュー (12)

【荒野のジャングル】

【中立地帯】

【310年】

【15:00】


 健二、エリーと私は魔帝国野営地から逃げ出した。


「今、そちらに暴風雨が来ている」


 レイラニが通信してきた。


「了解。その暴風雨は、我々の無線通信に支障をきたすか?」


「はい。前のチームとは暴風雨のために連絡が途絶えました」


「そうか」


「チームアジュール。頑張って」


 突然、レイラニと交信できなくなった。空は一気に雨嵐で暗くなった。


「レイラニ、聞こえるか?」


 返事はまだない。


 その間にも、影魔王と魔物たちは追いかけてくる。雨も降り始めた。


「寒いし、ぬかるんでるし、もう最悪だ」


 健二が文句を言った。


「そうね」


 エリーがうなずいた。


「健二、エリー。嵐の中で走る方法を知っているか?」


「いいえ」


 健二とエリーが答えた。


「私は悪魔を何とかする。二人は嵐が過ぎるまでどこかで隠れていてくれ」


「ミキチ、待って。あなたは嵐の中で訓練したことがあるの?」


 エリーが尋ねた。


「ああ。地球ではどんな天候でも走る訓練をしていた」


「なぜ?」


 と健二が尋ねた。


「子供の頃、ボストンマラソンを見ていた。雨の中走りきった選手に感動したんだ」


「川内優輝?」


「そうだ」


「なるほどね。頑張って」


 健二が手を振った。


「ミキチ、生き延びろよ」


 エリーも手を振った。


 私は呪文を唱えた。


【呪文:煙幕】


 煙が私たちを覆った。健二とエリーは別々の方向に走っていった。


「魔物ども!こっちだ!」


 私は魔物たちをこちらに引き寄せるために叫んだ。


 煙が晴れた後、影の魔王と魔物たちは私を見つけた。彼らは私を追い続けた。


「他の2人の魔法のランナーはどこだ?」


 と影の魔王が尋ねた。


「わからない」


 と私は答えた。


「まずお前を殺す」


 と影の魔王が笑った。


「魔王様!他の2人の魔法のランナーを追うべきでしょうか?」


 と悪魔の兵士が尋ねた。


「いや、目の前の魔法のランナーを殺すことに集中する」


 体力が落ちてきたので、エネルギージェルを食べ、チューブの水も飲む。 また、足元が悪いので、泥に足を取られないように気を付ける。


 魔物たちが火の玉や矢を投げてくるが、それをかわし、嵐の風も手伝ってくれる。


 この雨嵐をうまく利用しなければ。



 ***


【司令室】

【魔法のランナー旅団本部】

【ルナ王国 、フェブルタウン】

【310年】

【15:10】



 レイラニはチームアジュールとの通信が途絶えた後、すぐにアナウンスボタンを押した。


「コードレッド!チームアジュールがシャドウ魔王と交戦中!」


 レイラニはスピーカーを通してアナウンスした。


 サラ司令官が現れ、レイラニの元へ向かった。


「レイラニ。状況報告は?」


「サラ司令官。チームアジュールがシャドウ魔王と遭遇しました」


「そうか」


「それと、嵐の干渉により、チームアジュールとの通信が途絶えました」


「前のチームとの通信が途絶えたのも、それが原因だったのか?」


「はい」


「援軍を送れるか?」


「嵐が収まれば、ミアと通信できます。彼女は大軍事同盟キャンプにいます」


「チームアジュールが持ちこたえることを期待するしかないな」


「はい」

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