第33話 影の正体

翌日、プロダクションの会議室に再びキャストとスタッフが集まった。美咲は匿名メッセージの内容を玲子に伝え、玲子は全員に緊急会議の趣旨を説明した。


「昨日、美咲が受け取った匿名のメッセージには、次の撮影に危険が迫っていると書かれていました。私たちはその警告を無視することはできません。」玲子は真剣な表情で話し始めた。


スタッフたちは一斉にざわつき始め、不安と緊張が広がった。「それでは、具体的にどのような対策を取るべきでしょうか?」プロデューサーの一人が尋ねた。


「まず、撮影現場の安全確認を徹底します。すべてのセットや設備を再点検し、問題がないか確認します。そして、現場のセキュリティを強化し、誰が出入りしているかを厳しく監視します。」玲子は毅然とした態度で答えた。


「また、スタッフ全員には個々に警戒をお願いしたいと思います。何か不審なことがあれば、すぐに報告してください。」美咲も加えた。


会議が終わると、全員がすぐに行動に移り、撮影現場の安全確認とセキュリティの強化が行われた。スタッフたちは慎重にセットを点検し、不審な点がないかを確認して回った。


一方、玲子と美咲は監視カメラの映像をチェックし、過去数日の間に何か異常がなかったかを調べ始めた。モニターにはスタジオ内の様子が映し出され、二人は注意深く映像を見つめていた。


「何か怪しい動きは見つかるかしら…」美咲は心配そうに呟いた。


「慎重に確認しましょう。何か手がかりが見つかるはずよ。」玲子は集中しながら答えた。


数時間後、監視カメラの映像に不審な人物が映っていることに気づいた。その人物はスタッフの名簿には載っていない見知らぬ男で、セットの周囲をうろついていた。


「この男、一体誰なの?」美咲は驚いて声を上げた。


「すぐに警備員に連絡して、この人物を確保するように伝えましょう。」玲子は冷静に指示を出した。


警備員は迅速に行動し、スタジオ内を巡回して不審な人物を捜し始めた。しばらくして、その男がスタジオの裏口から出て行くところを発見し、確保に成功した。


男は怯えた様子で、「何も悪いことはしていない、ただの見物人だ」と言い張ったが、玲子はその言葉に疑念を抱いた。「警察に連絡して、この男の身元を調べてもらいましょう。」と命じた。


警察が到着し、男の身元を確認すると、彼は過去にトラブルを起こしていた前科があることが判明した。彼の動機についても追及が進められたが、彼は一切の情報提供を拒んだ。


その日の夜、美咲は陽斗と話し合うために彼の自宅を訪れた。二人はリビングルームに座り、今日の出来事について話し始めた。


「陽斗さん、スタジオで不審な男が見つかったの。彼の目的はまだ分からないけど、警察が調査しているわ。」美咲は不安そうに言った。


「それは心配だね、美咲。僕たちはどうすべきだろう?」陽斗は真剣な表情で尋ねた。


「私たちは引き続き警戒を続けるわ。そして、あなたも十分に注意して。撮影が再開されるまでの間、できるだけ安全な場所にいるようにしてほしいの。」美咲はお願いした。


「分かったよ、美咲。君がそばにいてくれると安心できる。」陽斗は微笑んで答えた。


その後、二人は今後の対策について話し合い、互いに支え合いながら困難に立ち向かう決意を新たにした。


翌日、スタジオでは通常通りの撮影が再開されたが、キャストとスタッフは皆一様に緊張感を漂わせていた。玲子は撮影現場での指導に戻りながらも、常に周囲に目を光らせていた。


「皆さん、今日も安全に撮影を進めましょう。何か異常があればすぐに報告してください。」玲子は厳しく言った。


美咲もまた、陽斗の演技を見守りながら、撮影現場の安全を確認し続けた。彼女の心にはまだ不安が残っていたが、家族と仲間の支えを信じて前に進むことを決意していた。


しかし、その日も新たな影が彼らに迫っていた。撮影中、再びセットに異常が発生し、機材が突然故障してしまった。キャストとスタッフは驚き、混乱に陥った。


「一体どうなっているんだ?」陽斗は声を上げた。


玲子は冷静に対処し、「すぐに現場を安全にして、故障の原因を調査します。皆さん、落ち着いてください。」と指示を出した。


その瞬間、美咲のスマホが再び鳴り、匿名のメッセージが届いた。「警告したはずだ。次はもっと危険なことが起こる。」


美咲の心臓は再び凍りつき、彼女はすぐに玲子にメッセージを見せた。「お母さん、またメッセージが…」


玲子の顔は険しくなり、「これはただの偶然じゃないわ。誰かが意図的に妨害している。」と冷静に言った。


一体誰が、何のためにこんなことをしているのか? 美咲と玲子はその謎を解くために動き出すことを決意した。

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