フラグ回収

ゴンゴンゴン!!!


部屋に荒々しいノック音が響いた。


「入れ」

「っ失礼します」


息をあげながら入ってきたのはカイト。しかもなぜかアシュリーも一緒だ。


(あら〜)


「下級悪魔二体と、中級悪魔一体が、北の岩場に、出現したとのことです」


二人が一緒にいることにニヤーっとしていたら、カイトが特大爆弾と落としてきた。


「また厄介な…」

「悪魔かぁ。面倒くさいんだよなー」

「アナベルさん、バッチリフラグ回収しましたね」

「下級二体と中級一体の属性は?」


さっきまでお茶の美味しさに頬を緩めていた三人も今は完全に仕事モード。魔王の威厳があるわ。リーリエ、最近遠慮がなくなってきている。(フラグとは、私の平和発言の事だろう)


「“魔”です」

「よし、アナベルいけ」


カイトがそう答えた瞬間、オースティンが出動命令を出してきた。えぇ、確かに適正だけど…


「やだ、めんどくさい」

「アナベル」

「はい。かしこまりました」


そっぽを向いて嫌だと意思表示をしていると、オースティンに再度名前を呼ばれた。魔王様からの出動命令だ。断れないのはわかっている。


「別にアナが行かなくていのに…」


いつの間にか私を膝の上に乗せていたリアンの発言は聞かなかったことにしよう。たかが中級悪魔討伐だ。これで負ける私ではない。それでいいのか宰相。


(あと、距離が…近い!)


いくら押し戻しても絶対離してくれないのでもう諦めた。


「イチャつくな」

「イチャついてない!!」


案の定オースティンからのツッコミが入る。しょうがないじゃない…


「あの、すみません。悪魔ってなんですか?」


リーリエがおずおずとこちらに質問してきた。あぁ、そっか。知らないのか。


「人間界には悪魔が出現しないんだったけな。悪魔とは、人間界・魔界・エルフの里とは別にある次元で生まれる生物だ。ある程度部類に分かれていて、武術を扱うものは“武”、魔術を扱うものは“魔”。魔術を扱う“魔”が今回の悪魔だ。魔族も親から生まれるが、悪魔は基本的に何もない所から生まれる。組織的なものはなく、だいたい単独行動だ。下級、中級、上級、伝説級のランク分けされていて、完全な実力主義だ。常に魔族を目の敵にしてきて攻撃してくるからウザいし、あと性格が悪い。最悪だ」

「その最悪の討伐を丸投げされたのよ」


オースティンがわかりやすく説明する。悪魔、なんで絡んでくるのかしら?


「じゃあ行ってきます。『ワープ』」

「あ!団長!一人で行かな」


移動魔術を使う途中で、私を引き止めるカイトの声が聞こえた気がする。まぁ、いいか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る