14. まだ中学生
だが、落画鬼退治はとどのつまり警察にも
誰でもなれるわけではない、“浮夜絵師”という特異な能力に恵まれた自分にしかできない仕事であることを思い返し、それ以上の言葉を飲み込む。
「あ、いま『またか、また警察の尻ぬぐいか!』って顔したでしょ!」
「……」
せっかく飲み込んだ言葉を、この
これでは、どちらが大人なのかわからない。
この際だからと、今度は少年が口を開く。
「どうせ、
少年に図星を突かれた男は、急に表情筋を重力に任せ、泣き言にも似た言い訳を垂れ流す。
「だってさ~、そうじゃないとさあ。キミあからさまに
「そこまで思ってない」
「少しは思ってるってことっ!?」
実のところ、少年は他人に興味がないので、誰になにを言われようと感情を動かされることはない。だから
しかし、はたから見てそんな風に見える視線を作っているのならば、まだ胸の内を隠しきれていないのだろう。
この正義の名の下に与えられた能力を、復讐のために利用していることを勘付かれては厄介だ。気を付けなければならない。
――ただ。
なんとなく
それが思いのほか
「俺は仕事を選んだりしない」
「さっすがー! やっぱりキミは優しいね♡」
息つく暇もなく切り替わる
そんな少年の目の前に、先ほどの戦闘時のものか
「でもまあ、
地球は人間だけのものじゃないのに共存しようという優しい気持ちはないのかしらと、本気で怒っているのかそれともふざけているのか。表情からは判断し難いこの
「それにどんな理由があったとしても」
それまでコバエのように
「こんな残酷な暴力で解決しようって考えは、間違ってるよね」
「今回はあの
「もちろん、キミ自身もっともっと危険に晒される」
「わかってる」
少年は、目の前の顔を押し退けるように羽根を渡すと、頬の傷を伝う血を拭う。
すると不思議なことに、頬にはかすり傷ひとつはじめからなかったかのように、跡形もなく消えていた。
少年はそれを確認することもなく、今度こそ歩き出す。
年相応とは言い難い、
「げ、ショウくん。ちょっとまだこの子、消しゴムかけ足りないよ!」
「あんたがやっとけ」
動揺するような素振りを見せる
「ちょっとちょっとぉ、その言い方よ~! 年上に対する頼み方じゃないよねっ!?」
この男の食えない部分はこうしてへらへらしつつも、わざと男の掴みにくい位置へ飛ばした消しゴムを一切の無駄がない動きで、しっかりと捉えるところである。
「いつもと変わらないだろ。俺は眠いんだ」
先ほどまでのわざとらしい動揺はどこへやら、「確かにそうだよね」と、子供の方便を少しも疑わず、ぽんと手を叩いては納得してしまうちょろい男・
「ショウくんまだ中学生だもんね! それなのに夜な夜な駆り出されているこの現状は、青少年保護育成条例の観点からすると非常にまずい! 大問題だ!」
ショウは歩みを止めずに、意識だけはそっと
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