【EXシナリオ】5話 第2回ジュリアンを出しに盛り上がる女子会
■男子禁制酒場『薔薇の隠れ家』
「第2回! ジュリアンをダシに盛り上がる女子会開催やー、よいしょー!」
「「「よいしょー!」」」
主催であるレイナの声に合わせて木製コップのぶつかりあう音が個室に響く。
なお、最後の掛け声は最近王都の上流階級の淑女の間で流行っている掛け声とのことだ。
情報源は今回初参加のアリシア・ローレライからである。
テーブルに所せましと並ぶ料理を摘まみ、お酒やジュースを口にしていく女性陣。
消音魔法のお陰もあり、みんな自由に振舞っていた。
「こんなに楽しい会を私抜きでやっていたなんて、ずるいわよ」
「リリアンさんはその時、魔法学院にいってましたからね」
同じ冒険者パーティ【鋼の守護者】のメンバーであるエレナがリリアンを宥める。
ジュリアンとは5年前からの付き合いではあるが、ここ最近はジュリアンの活躍を聞くばかりだった。
詳しい事情を聴きたい二人はパーティメンバーからの話に注目している。
「食べ放題とは豪華なのだ! このステーキをもう一枚!」
「あちしも一枚欲しいにゃ」
今回が初参加のメンバー最後の一人であるセリーヌは花より団子とばかりに料理をバクバクと食べていた。
「せっかく遠方からアリシア嬢ちゃんが来てるんやから、アリシア嬢ちゃんからの情報を聞きたいとこやね」
司会進行をしているレイナはアリシアを目標に定める。
ジュースを飲んでいたアリシアはケホケホとむせて、視線が集中するなか話を始めた。
「私は5歳までジュリアンと一緒でした。婚約者になったのも親のつながりからなのであまり面白い話はないんですが……」
「せやかて、アリシア嬢ちゃんの態度をみるにただの婚約者だからって態度やなかった気がするなぁ~?」
恥ずかしいのか顔を赤くしてしどろもどろになっているアリシアにレイナは遠慮なく追撃していく。
「エピソードとしては5歳の私の誕生日に……私の方から告白して婚約者になったんです」
「「「告白!」」」
酒の進みそうなキーワードに全員の視線がアリシアに集中した。
◇ ◇ ◇
——5年ほど前、ローレライ邸——
その日、誕生日を迎えたアリシアは辟易していた。
庭園でパーティが開かれて、多くの貴族が祝福にやってきている。
けれど、見ているのはアリシアではなくローレライ家のことだ。
魔導具を開発、管理してきている公爵の家柄というのは貴族たちにとっては親しくしたい要素である。
それを避けるために、昔から友人として仲良くしていたアイゼン伯爵家の双子のどちらかと婚約するという話にもなっていた。
「好きでもない人と婚約するなんて嫌だなぁ……」
アリシアが中庭でパーティを眺めながら、挨拶する人達の応対も終わったところで少し気分転換に歩いた。
見知った庭は多くの貴族が集まっていて、騒がしい。
静かな場所に行こうと、庭でお気に入りの花壇の前にいくと先客がいた。
日陰にある椅子へ腰掛けて、本を読んでいる。
「何の本を読んでいるの?」
「魔法の本だよ……俺、魔法を早く使ってみたいんだ」
魔法適性がわかる儀式までは魔法を使えないのがこの国のルールになっていた。
便利な魔法だが、結局のところ戦いの道具になってしまう。
魔導具は魔法を人の役に立つことに使えるので、アリシアは普通に魔法をつかうよりも魔導具を作ることに興味をもっていた。
「だって、風魔法って使い方を考えれば空を飛べるじゃん?」
「確かに……」
「土魔法だって、地面を耕せば農家の助けになるし世の中を便利にできるじゃないか」
少年の発想はアリシアになかったもので、驚きと共に少年に強い興味を持つ。
それから、いろんな魔法の使い方の話をしているとつまらない誕生日が楽しいものになっていった。
「お嬢様! こんなところに、旦那様が探していましたよ」
「わかったわ、あなたの名前聞いていなかったわね。私はアリシア・ローレライよ」
「俺はジュリアン・アイゼン。最強の魔法使いになる男だ」
なんの打算もない笑顔を向けられたアリシアはジュリアンを婚約者に決める。
その後、魔法適性の試験によって、婚約の話は破談になってしまった。
◇ ◇ ◇
「ジュリアンは昔から独自の発想をされていたのですね」
「そうなのです。ジュリアン様は聡明なのです」
エリカが関心していると何故か、ミツキが自慢気に胸を張る。
「聡明というよりかは、ちょっと大人びすぎているというか、子供らしくないというか……真面目ではあるわよね」
リリアンは酒を飲み、料理を摘まんで振り返った。
イーヴェリヒトに来てからは、ジュリアンに魔法の基礎を教えて来たのはリリアンである。
ルミナエア魔法学院の卒業生でもあったので、十分な教育ができたとは思っていた。
しかし、冒険者登録してから数か月でAランクになるまで才能を開花させたのは意外である。
「まぁ、私にとってジュリアンは可愛いところのあるご主人様なのだな。この体で迫っても手を出さないので男として不安なところがあるのだ」
料理を食べ終えて、一休みしていたセリーヌが爆弾発言を投げ込んできた。
ぶるんと震えるセリーヌの胸はここにいるメンバーの中で一番大きい。
セリーヌはアマゾネスと呼ばれる男がほとんど生まれない種族で、外で男を見つけて種族繁栄をしていく文化を持っていた。
「そこは、確かに……」
「でも、ほら、年齢がねぇ……」
話題が変わったことで、変な空気が流れ始める。
レイナがこれはいけないと女子会の終わりを宣言したのは当然のことだった。
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