第4話 初めての依頼
■冒険者ギルド受付
「合格おめでとうございます。さっそく依頼を受けていきますか?」
「エミリアさん、ありがとうございます。はい、こちらの依頼お願いします」
俺は試験会場を後にして、受付に戻ると掲示板にあったDランクの依頼をエミリアに提出した。
俺の後ろには「鋼の守護者」の面々がいる。
「二つ上のランクではあるが、俺らが一緒に行く。ソロでやらせないから安心してくれ」
「鋼の守護者様が一緒に行かれるのであれば大丈夫ですね。受理させていただきます」
エミリアが困った様子で受理を渋っていたのを感じたのか、俺の後ろにいたアーヴィンが同行を申し出てくれた。
おかげで受理をしてもらい、俺の初依頼が決まる。
今日一日は長い、10歳の誕生日を楽しむためには”冒険”しなくちゃな。
「依頼内容はアルデン村の周辺に出てきたモンスター退治。確認されている限りはゴブリン種ですね。気を付けていってらっしゃい」
エミリアさんに笑顔で送りだされると、俺たちはイーヴェリヒトから北西に徒歩で1日にかかるアルデン村に馬車を借りて向かった。
誕生日の夕飯が用意されているのをアーヴィン達も知っているので、手を回してくれたらしい。
本当頼りになる先輩冒険者だ。
■アルデン村付近
アルデン村は人口150人くらいの小さな村で、小麦畑が村の周りに広がっている。
昼時なので、畑仕事をしている人はなく、村のあちこちから昼時で火を使っているのか白い煙があがっていた。
のどかな田舎らしい風景だ。
「モンスターに村が襲われているようではないな。周辺で確認されたのであれば森に潜んでいるか、いや……動きだしたようだ」
「馬車で来て正解だったわね。いきましょう」
御者をしていたアーヴィンが森の方から動いている集団を見つけ、リリアンが馬車から降りた。
「ゴブリンだからって油断せずにいつも通り、前衛は俺がやる。フィンとリリアンは弓や魔法で援護。ジュリアンは弱ったやつにとどめを指すことを中心に動いてくれ、エレナはジュリアンに防御魔法をかけて補佐を頼む」
アーヴィンの適格な指示を受けて「鋼の守護者」のメンバーは頷き一つで動き出した。
「ウォォォ! 俺はここだ!」
アーヴィンのスキルが発動して、村の方へ進んでいたゴブリンたちの集団がアーヴィンの方へ寄っていく。
(重戦士らしいいいスキルだな)
MMOでいうところのタンクとして必要なスキルを持ってくれていることに俺は安心感を得た。
手堅いスキルとパーティ構成なので、俺は自分の役割を全うしようと動く。
長剣を抜いて、寄ってきたゴブリンに意識を向けた。
子供のような背丈だが、醜悪といって差し支えないほどの顔、近づくほどに嫌なにおいがしてくる。
ヒュンと矢が飛んできてゴブリンの腕や胴にあたる。
怪我をしたゴブリンがそれでも襲ってくるがアーヴィンが大きな盾ではじきかえしながら、槍で貫いた。
「トドメは任せたぞ」
「はい!」
俺はアーヴィンが次のゴブリンの攻撃を受け止めている間に長剣でゴブリンにトドメを指す。
頭部に突き刺さる長剣の感覚はこれから慣れていかなければいけないものだ。
(5年前は無我夢中でイノシシを倒したけど、ゴブリンは人型だからまた違うな……)
気持ち悪さがこみあげてくるのを俺は我慢して、寄ってきたゴブリンを自分からも斬り捨ててていく。
戦場の高揚のおかげか、気持ち悪さが薄れていった。
「ちょっと! 私の分も残してよ、得意の炎魔法がここじゃ使えないから出番少ないんだよ!」
矢がなくなったフィンの代わりに魔法使いのリリアンが水の槍を飛ばしてゴブリンの頭を一撃で貫いた。
得意魔法じゃないといいながらも、命中精度も威力もすごいものである。
(リリアンさんはアイゼン家にいたら重宝されただろうなぁ……フレデリックやアリシアはどうしているんだろう)
リリアンの言葉に俺は5年前のことを思い返していた。
炎のたぐいまれない才能を得たフレデリックや四属性すべての魔法の適正があるアリシアは魔法学園で優秀な成績を収めているだろうし、父上の話からすれば二人は婚約者同士になったので、この先結婚するだろう。
(いや、昔の話だ。そのルートはなくなったんだから気にしちゃいけない)
頭を左右に振って思い出を振り捨てて、目の前の敵に集中した。
「大丈夫だな、村で一休みさせてもらってから帰るとしよう」
ゴブリンをすべて倒し終えたようで、アーヴィンが警戒を解く。
「ジュリアン君は初めての戦闘なのにケガもなく、えらいですね」
俺のそばに寄ってきたエレナが俺の頭をなでてくれた。
5歳のころからお世話になっているせいか、自分の子供のような接し方をしてくる。
長い金髪を三つ編みに整え、僧侶というには背徳的な豊満な体をしているエレナさんによられると恥ずかしさが先だった。
体は子供だが、中身は高校生である。
こんなエロいお姉さんにかまわれるのはうれしい反面、リアクションに困るのだ。
「え、エレナさん! 村にいきましょう! 返り血で汚れているので洗いたいですしっ!」
「じゃあ、私が洗ってあげますね」
俺は慌てて村に向かおうとするとエレナが別方向でかまってくる。
違う、そうじゃない……そうじゃないんだよ……。
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