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「癖なんだと思うよ。ジャンルは、面白そうだったら、食わず嫌いはせずに何でも読むよ。そのせいで面白い作品に出会えないなら、すごくもったいないから」
「ふーん、普段そういうこと考えてるんだ。で、話が戻るけど、君は、恋愛小説を読んで、その経験を自分の中で生かせてるわけ?」
「え」
寝耳に水、とはこういうことを言うのだろう。
「えっと、僕が恋愛小説を読んで、つまり――」
恋愛、か。なかなか恥ずかしい説明を強いられそうで、じゃっかん口ごもってしまった。
「――もし僕が誰かと恋をするとして、その恋愛に読んだ小説の内容を生かすってこと? ……うーん、無理だと思うな」
「え、なんで?」きょとん。彼女はそんな表現がよく似合う表情で、目をまるくして上目遣いに僕を見ていた。
「なんでって…………」
僕はすぐには答えなかった。
現実と物語は違う。小説ではよく、登場人物のふとした行動の行間を読むけど。特に国語の現代文の問題では時にそうしたことが求められる。でも、現実で、人間の行動全てに意味があるなんて思って実際に行動したら、笑われて呆れられて最悪嫌われるほうが多いと思う。実際さっきも、僕がよく教室でひとりで本を読んでいるという話と、堅物のくだりの時にそうだった。柄にもなくそうした部分が出て、微妙な反応をされてしまった。
「逆に君はどうなのさ、水野さん」
僕は少しばかりむすっとして質問を投げ返す。
「私?私は、恋愛小説も読むよ。もちろん、読めば読むほど現実の私自身の恋に、生かせると思ってる」
彼女は自信たっぷりに、はつらつと答えた。
「そっか。僕は――」
「君は?」
「僕は、物語の中の恋愛と、実際の自分とはまったくの別ものだって気がしてる。そもそも、自分がこういう物語みたいな目に遭うことが想像できない。もしかしたら、身体能力抜群の主人公の手に汗握るスパイものや、異世界での大冒険くらい、自分に置き換えようとした時の現実味がないかもしれない」
答えると、彼女はやや戸惑ったような顔をしていた。
「なるほどね? 君のこと、少しは分かってたつもりだったんだけどな……まぁいいや。ところで君にとって、大切な友達は誰?」
さっきから変な質問ばかりだな。僕はちょっと考えてから答える。
「いないよ。僕みたいな本ばかり読んでる無愛想な奴でも、ちょっと前まで、クラスの色んな人が、お昼食べようとか、今度遊び行こうとか、色んなことで声をかけてくれたけど、はっきり言って、友達なんて呼べるものは、僕の知る限り、ひとりもいないね」
言い切った僕の顔を見て、彼女は
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