S小学校秘密組織・怪談解決☆あああ団(仮) 学校の怪談『時計台の太郎くん』の謎を解け!!
夏空らむね
時計台の太郎くん 第1話 私のカバンに呪われた服が!?突然あらわれた体操服のナゾ
五年生、五月。快晴の、いつもの朝の通学路。
「え~~~っ!朱里のカバンに『太郎』の服が!?」
少し先を歩いていた下級生のちびっ子たちが、びっくりした顔でこっちをふり返る。
「あ、飛鳥、しーっ」
私はあわてて飛鳥の口をふさいだ。あばれる飛鳥のポニーテールがぶんぶん揺れる。
まわりの視線が消えたことを確認してから手をはなすと、飛鳥が勢い込んでたずねてきた。
「だ、だって、『太郎』といったら、あたしたちのS小学校の七不思議の、あの『太郎くん』でしょ?どうしてその子の服が、朱里のカバンに入ってたの?」
横では黒崎くんが、真っ青になってぶるぶると震えている。
黒ぶちめがねをかけた目には、涙まで浮かんでいる。黒崎くん、男の子なのに怖がりだから……。
「えっとね……」
私はふたりに、昨日の夜の出来事を話しはじめた。
「ちょっとぉ、朱里!」
お風呂上がり、私がソファで肩まで伸びた髪の毛をタオルでごしごししていると、お母さんの声がした。
洗面所に走っていくと、お母さんが、置きっぱなしだった私のピンク色の体操服入れを開けているところだった。
「帰ってきたら、すぐ体操服は洗濯機に入れなさいって言ったでしょ!」
「ごめ~ん」
私はあわてて、推しキャラ『ハッピーはむはむ』ちゃんが描かれたカバンを、お母さんから受け取る。
「おまけに何これ!まちがえて、よその子のシャツ持ってきてるじゃない」
「……え?」
お母さんの手には、私の白い体操服と……もうひとつ、同じS小学校の体操服が。
「いっしょに洗っておくから、明日、タロウくんに返しときなさいね」
「……えっ?たろう……?」
ドキリ――私の心臓が、大きく動いた。
その体操服のタグには、黒いかすれたマジックの字で、こう書いてあった。
た ろ う
「ぴゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!」
ここまで聞いて叫んだのは、飛鳥だ。
電線のスズメが、いっせいに飛び立った。
「っ……っひぃぃ……」
その横では、黒崎くんが真っ青になってよろめいている。
ごちん。
あっ、ブロック塀にぶつかった。
「黒崎くん!しっかりして!」
……ダメだ、白目をむいてる。
このふたりがここまでおびえるのには、わけがある。
S小学校に伝わる、七不思議。
一般的に有名なのは『トイレの花子さん』だけど、うちの学校には『時計台の太郎くん』がいる。
―――S小学校の北の旧校舎のてっぺんには、時計台がある。でも、本当なら時計があるはずの場所には何もなく、ぽっかりとした黒い穴があいているだけ。
昔は時計がはまっていたのだけど、ある日、時計が外れて真下に落ちてしまった。
ちょうどそのとき校庭では体育の授業があり、落下した時計が直撃して、ひとりの男の子が亡くなってしまった。
――その子の名前が『太郎くん』。
太郎くんが着ていた白い体操服は、血で真っ赤に染まっていた。
それからというもの、時計台を見上げると、何もない黒い穴の奥から太郎くんがこちらを見下ろしていた、とか、赤い体操服の男の子が校舎をうろついていた、とか―――
……とまあ、それが『時計台の太郎くん』の怪談だ。
S小学生なら、体操服に『たろう』の名前と聞いたら、真っ先にこの話を連想する。
正直、私だって怖い。めちゃくちゃ気味が悪い。
よりによって、お気に入りのハッピーはむはむちゃんの体操服入れに、なんでそんなものが入っていたの!?
誰のイタズラかまちがいか知らないけれど、早く返してしまわないと!
私は飛鳥と黒崎くんを引きずるようにして、学校に急いだのだった。
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