第28話 ダンテ現る
五人は食事処を探しブラウンハーバーを歩いていた。
「でもさ、ベルとレオナはどうやってマライア邸から逃げてきたんだ?」
アランが不思議そうに問いかける。
「手錠を壊してくれたんだ。俺たちと一緒に奴隷として働いてたおじさんが」
「おじさんが?どうやって?」
「分からない…おじさんが手錠に触ったらいきなり手錠が壊れて外れたんだ。そこからは何とか剣を見つけてレオナと二人で逃げてきたって訳」
「そのおじさんはどうなったの?」
「多分まだ屋敷に残ってるんじゃないかな…。"俺はまだ出るべき時じゃない"とか言ってたし…」
「ふーん…なんだかおかしなおじさんだね」
「まぁでもあのおじさんがいなかったら俺たちは逃げられなかった訳だし…感謝してもしきれないよ…」
そんな事を話しながら歩いていると、道の先に"食事&バープロキオン"と書かれた看板が見えてきた。
「おっ、あそこ食事って書いてあるぞ!」
「バーと食事処が一緒になってる店みたいね…もう時間も遅くなるし、ここにしましょうか」
「うん、いいと思うよー」
「俺もいいと思う」
「私も…いいと思います」
「よし、じゃあここに決定!」
五人は"プロキオン"と言う店に入ることにした。
ーーーーーーーー
「いらっしゃいませー、五名様で?」
「はい、そうです」
「すみませんね、今混んでまして…カウンター席でも大丈夫ですか?」
店員の男にそう聞かれ、アラン達は顔を見合わせる。
「はい、大丈夫です」
「ではこちらへ…」
五人は案内された席に座る。
「何があるのかしら…」
「あ、ここの店焼き飯が美味いらしいぞ!安いし!」
「いいわね、それじゃあこれにしましょうか。みんなは?」
「私もそれでー」
「俺たちもそれでいいよ!」
「おっけー!すみませーん!焼き飯五つ下さい!」
「はいよ!少々お待ちください!」
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店の中では"勇"と書かれたコートを身につけた男達が大勢で酒を飲み、どんちゃん騒ぎをしていた。
「あれって勇者団よね…」
「みたいだな…」
「ベル達、気づかれても平気かな…?」
「さっき放送で捜査は打ち切りって言ってたし平気だろ…」
そんな事をコソコソと話している時だった。
「全く…仕事はしないくせに騒がしい奴らだ。なぁ、少年」
アランの右側からそう声が聞こえた。
アランが右を見ると、アランの横には黒いローブを身につけ、深々とフードを被った男が一人酒を飲んでいた。
「えっと…」
突然話しかけられ、アランは戸惑いの表情を浮かべる。
「おっと、悪かったな。突然話しかけたりして…全く、アイツらを見てると世も末だと思うぜ。"世界の均衡を保つ存在"の勇者団があれだからな…。ここら一体はロクでもないチンピラが集まる場所になる訳だ」
そう言うと、男は勢いよく酒を飲み干す。
「………」
アランは黙って男の言葉に耳を貸す。
「少年、お前夢はあるのか?」
「夢?」
突然の問いに困惑しながらも、アランは口を開く。
「勇者団に…入ること」
「ほぉ、勇者団に入りてぇのか。そりゃあいい夢を持ってる。…あそこで酒を飲んでる無能達よりよっぽどお前たち子供の方が市民を守ってくれそうだぜ」
「………」
「少年、名前は?」
「………」
「おっと、悪い悪い。俺の名前はマ…ベルム。ベルムだ」
「…俺はアラン」
「ほう、アランか…。いい名前だ。勇者団になる夢、頑張れよ。マスター、この子達の会計も含めてくれ」
「えっ!?ちょっと…」
「いいんだよ、ここで会ったのも何かの縁だ…。これくらいさせてくれ」
そう言うと、ローブの男はアラン達の分までお金を払い、手を振りながら店を出て行った。
「なんだったの?あの人…」
「分かんない…。けど、なんかすごいオーラの人だったな…」
アランは店の出入り口を見つめ、そう呟いた。
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「へい、お待ち!」
アラン達の前に美味しそうに湯気を放つ焼き飯が置かれていく。
「うまそー!いただきまーす!!」
アランは勢いよく焼き飯を掻き込んでいく。
「美味しいね!」
エルザもアランに続きすごい速さで焼き飯を食べていく。
「もっとゆっくり食べなさいよ!!」
リサはアラン達を注意しながらゆっくりと焼き飯を食べる。
「美味い…こんな美味いもん食べたの久しぶりだ!なぁ、レオナ!」
「うん、そうだね!ベルお兄ちゃん!」
そんな二人の会話を聞き、リサは少しほっこりとした気持ちになっていた。
そんな時だった。
「アランってガキはここにいるか!!」
店のドアが勢いよく開く。
今まで騒いでいた勇者団の兵士達も一気に静まり返り、皆ドアの方へ目をやる。
「俺か…?」
アランは名前を呼ばれ振り返る。
「何?」
リサ達も声のする方へ振り返る。
するとそこには、全身に黒い鎧を身につけた男、ダンテの姿があった。
後ろには、手下の男たちが五人、立っている。
「どいつがアランだ?…ははぁ、テメェか。アランってガキは」
ダンテはアランの手の甲の光の紋章を見つめながらそう笑みをうかべる。
「あんたは…ダンテ!!」
一番最初に声を上げたのはエルザだった。
「ダンテ…?アイツがダンテなのか!?」
「えぇ、そう…私の村を滅ぼし、クロッカスの街からお金を奪っていたクズ…」
「おぉ、誰かと思えば…ジャカにいた青髪のガキか…。まだ生きていたとはな…」
「ダンテ…お前だけは絶対許さない…!!」
「はっ!許さないだと?だからどうした。…だが、俺もお前たちに用があって来たんだよ…」
「用だと?」
「お前ら…俺の部下のバーガー達とディオゲインを倒したそうだな…」
「…だったらなんだ!」
「その実力は認めてやるよ…だがなぁ、こっちは収益源と取引先を両方潰されて腹が立ってるんだ…」
ダンテはゆっくりとアランの方へ歩き出す。
「………」
アランは冷や汗を垂らしながらその場で様子を伺う。
「俺たちの計画をめちゃくちゃにしてくれたお礼…しっかり返させて貰うぜ!!」
ダンテの拳がアランに向かって飛んでいく。
アランはその場から離れようと体を動かそうとするが、なぜか体が重く上手いように動かなかった。
「ぐぁっ!!」
ダンテの拳がアランの顔面に直撃する。
アランは吹き飛ばされ、カウンターと店の壁を破り外の道まで吹き飛ばされた。
「さぁ、テメェらには死んでもらうぜ!!」
続く。
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