TRIPLE-私の知らないあいつは私の知ってるあいつ-

@EPO_SPRIGGAN

第001話 あるいつもの日常 ゲーム内

 ここは戦場。

 ゲームの中だが実弾としか思えないような攻撃が撃ち込まれてくる。

 対戦相手はいつのもアーマードギアだからあいつだ。


『くそぉ、いつもいつも俺の前に出てくるとかストーカーか!?』


 アーマードギアのコクピット内から愚痴をこぼした。


『それを言うならこっちの方だ。いつもいつもこっちの邪魔をしやがって』


 こっちの声がそのまま漏れていた。仕方が無い、そういうゲームの仕様だから。

 敵なのに相手の声が聞こえた方が盛り上がるでしょ?とばかりに、作戦に関すること以外は周囲に筒抜けだ。

 この辺はこのゲームのご愛敬。



 このゲーム「Eternal・Glory・Gear」、通称「E.G.G.」。

 アーマードギアと呼ばれる様々な形状をしたロボット同士が対戦するゲーム。

 過去は、1対1、複数対複数のようなその場だけで完結するだった。

 現在はシステムが改装され、大人数で1度にゲームに参加し、それぞれが作戦を遂行して敵対する機体を倒していくMMOタイプのゲームになった。



 俺のアーマードギア クサナギを一気に加速させ、敵対するあいつの機体の後方に回るべく移動させた。

 当然あいつの機体ピアレイも反応し、背後を取られないように動き出した。

 しかし、向こうの方が重量的に動きが鈍い。

 ピアレイの進行方向にアサルトライフルを撃ち込みながら、背後に接近する。


『こっちの動きが鈍いのを分かって狙いやがって!』

『それは当然だろ!お前を倒すために戦ってんだから!』


 相手も逃げられないと判断した途端、一気に反転し大型ヒートソードと引き抜きこちらに向かってきた。

 こちらもヒートソードを引き抜くが、パワー勝負では分が悪い。

 それでもそのまま攻撃を仕掛ける。


  ガシッ


 お互いのヒートソードを打ち付け合う。

 こちらはホバーリングの勢いもヒートソードに乗せて打ち付けたにも関わらず、ピアレイは全て受け止め相殺した。

 こちらのフルパワーも乗せたのに。


「いいショックアブソーバーのパーツを使いやがって!」

『なんだって?』

『いいパーツを使いやがって!って言ったんだよ』

『そうだろ?お前を完膚なきまでに倒すために吟味したパーツだよ!』


 会話にあいつを引き込んで、一瞬の間を作る。

 その隙にシールドバインダーのパイルバンカーが、ピアレイの右肩を貫き、更に吹き飛ばした。


『クソぉ、ハメやがったな?』

『戦略ってやつだ!』


 流石に右肩から先を失った状態ではピアレイは、そうそう勝ちを拾えないだろう。

 そう踏んだあいつは後退し始めた。


『次は必ずぶっ倒してやるからな!』

『それはこっちのセリフだぁ!』


 まぁこっちもこれ以上深追いしてもいいことはないから、そのまま放っておく。

 大破してしまうとデスペナルティーを喰らうから、ここらが潮時なのは確かだ。

 こっちもそろそろ落ちなきゃいけない時間だし、ちょうどいい。




ヴァルトラウテSide

「くっそー、またあいつに、クサナギにやられた!

 次は絶対に潰す!!」

「どうしたの?いつものやつにやられたんだ?」

「ああそうだよ!」


 また、こいつが来た。最近このラウンジでよく会うようになったやつだ。

 緋色の袴を履いた女だが名前はよく知らん。


「ったく、敵の奴と馴れ合う気はねぇ。どっか行きやがれ」

「せっかく仲良くなれるかもと思ったのに」

「知らねぇよ」


 今日はもう店仕舞いだ。修理の手配だけはしておこう。

 あとはヤマトにメッセージを入れておくか。

 落ちたら早くご飯を食べたいし。




タケルSide

「ふう、今日もあいつのせいで全然敵の領地まで進めなかった」

「タケル、どこまで進んだよ?」

「だん吉か。全然進めてない。いつもの向こうにいる奴が邪魔しやがる」

「どれ?ああ、あの子か。一部に人気があるんだよな」

「そうか?俺からしたら邪魔な奴でしかないけどな」


  ピロリン


 おっ?セイラからか。

 何?「早くご飯」?

 もうちょっと待っててよ。


「じゃあ、落ちるからよ」

「おう、またな。ついでに……そのうち一緒に戦おうぜ」

「気が向いたらな?」


 さて、帰ろう。




ヤマトSide

 明日こそは先に進むぞ。

 しかし、それよりセイラに飯を作らないと。

 着替えて隣のセイラの家に行く。


「おじゃましまーす」

「ヤマト、遅い」

「ちょっとくらい待ってろよ。俺だってやることがあるんだから」

「エッチな事?」

「ちげぇよ」


 隣に住む晴海セイラだけど幼馴染だ。

 小さい頃に隣に引っ越して来て以来、何故か俺が面倒を見ている。

 見た目は凄く美少女で勉強も俺より出来るんだけど、こいつが使い物にならない。みんなにはクールとか言われてるけど、何も出来ないから大人しくしているだけだ。

 そのくせ、俺と2人の時はセクハラ発言をしたりするとんでもない奴だ、俺にとっては。


「あら、ヤマトくん、いらっしゃい。今日もセイラの面倒見てくれて、ありがとね」

「シズヨおばさん、お邪魔してます。

 これから飯作りますけど、食べます?」

「ありがとね、いただくわ。ねぇ?ヤマトくん、うちの子もらってくれない?」

「嫌ですよ、そんな面倒なの」

「ヤマト、ひどい」


 それはそうだろ。掃除も洗濯も飯さえも作れない奴と結婚とかないだろ。

 全部こっちがやらないといけない。

 夫婦2人共働くのが当たり前なのに、家事が全部こっちとか無理。

 セイラが綺麗だからってそれだけで我慢してられねぇんだよ。


 そんな事を思いながら、野菜を切っていく。

 両親が料理人で小さい頃から最低限調理スキルを仕込まれてきた。

 じいちゃんのところから野菜が送られてくるから、自分の分だけでなくお隣さんにも振る舞っている。

 今の御時世、レトルトやら温めたらすぐに食べられる食品がゴロゴロある。シズヨおばさんも普段そうだ。

 あの時、腹を空かせたセイラにご飯を作ってやっていなければ、こうはならなかったかもしれない。

 味をしめたセイラが飯を食わせろと言ってくるようになりし、部屋に行けばあまりの酷さに甲斐甲斐しく面倒を見てやるようになってしまった。


「ヤマト、今日の料理も美味しい」

「普通の肉じゃがだからな。しっかり食えよ」

「もう家族みたいね。ヤマトくん、やっぱりお嫁に来なさい」

「へ?」


 これは運命というものなのだろうか……

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