第3話 人間消失事件
しかし、あくまでも、
「勝つ」
ということが至上命令というわけではない。
「負けない」
ということが大切なのであって、特に、
「大東亜戦争」
を始める前に計画された。
「戦争のゆくえ」
というシミュレーションでは、
「負けない戦争」
ということだったのだ。
つまりは、
「緒戦で、連戦連勝することで、相手が戦意を喪失し、戦争終結を模索するように持って行くことで、
「戦争をしたことで得られる最大の利益」
というものを、
「どこで妥協するか?」
ということであろう。
それを考えると、
「日本国は、負けない戦争しかできないということになる」
というのが、当初の青写真だったのだろう。
しかし、それが狂ったのは、マスゴミと世論の反応だった。
「連戦連勝の日本が、どうして休戦協定に入らなければいけないのか?」
ということである。
そんなことをすると、
「日露戦争で、勝利した」
というにも関わらず、
「賠償金がもらえない」
という、日本としては、仕方のない状態を、世論は事情を分からないので、暴動を起こし、
「日比谷公会堂の焼き討ち」
ということが発生し、
「大日本帝国初」
ということになった、
「戒厳令」
というものが発令されたりしたではないか。
つまり、
「せっかく勝っているのに、なぜ、和平交渉をしないといけないのか?」
ということであり、
「まさか、最初から、負けない戦争をしている」
などと思っていないだろうから、国民からすれば、
「俺たちは勝つために戦争しているんだ」
ということで、さらには、
「ここまで、死んでいった連中に、どのような顔向けができるか?」
ということであった。
軍というのは、
「生きている人間には、その士気を高めるということもあって、厳格であるが、それもこれも、国のために死んでいった人であったり、国体でもある、天皇陛下のため」
ということで、
「一度始めれば辞められない」
ということになり、
「国民よりも、軍の士気にかかわる」
というのも、大きな問題だということになるだろう。
そんな状態だから、
「当時の日本は、元々少なかった人口が、さらに少なくなっていた」
何といっても、
「戦争が終わると、若い連中は、ほとんどが、南方であったり、満州において、戦士していたり、そうでなければ、特に満州というところでは、シベリア抑留ということで、強制的に連行され、強制労働を余儀なくされるという、陸戦協定に明らかな違反をしていたのだ」
だから、戦争終結時に、海外にいる、
「兵であったり、居留民をいかに復員させるかということも、政府の大きな問題だった」
ということである。
特に、日本における、
「この戦争の最初の原因となった」
というものに、
「人口問題」
というのがあった。
それを打開するために、満州に傀儡国家を建設し、そちらに移民させることで、食料問題を解決させたのだが、
「戦後」
ということになると、今度はそういうわけではなく、
「復興させるための、人口が足りない」
ということであった。
しかも、今度は人材が増えてしまうと、ただでさえ、物資や食料が不足しているので、さらに食糧問題が問題になってくる。
そうなると、
「食糧問題が解決さえすれば、人材をいかに確保できるか?」
ということが問題となるのだ。
ただ、日本は何とか、復興を果たした。
それは、
「いいタイミングで、朝鮮戦争が起こってくれたおかげで、戦時特需というものが、生まれた」
ということであった。
戦争が終わって、ちょうど5年目ということで、まだ日本は、焦土の状態であったが、国民においては、生活物資もままならないということで、
「栄養失調で死ぬ」
という人が相当数いたようだ。
しかし、闇市などが出てきたことで、物資を何とか調達し、生き残る人も出てきた。
ただ、まだまだ工業人口を担うだけの人材はまだまだ不足していたのだ。
それでも、何とか、戦争特需に追いつき、日本は、復興の足がかりを掴むことができたのだが、
「それは、本当に、あの状態でできたことなのだろうか?」
と考えられた。
本来は、口にしてはいけない言葉であったが、ふと、その言葉を口にしたことで、
「お前は、この時代の人間ではないのか?」
ということが、露呈しかかったということがあった。
その人物は、
「俺は未来からきた」
と言った。
しかも、その未来というのは、ごく近い未来であって、それも、
「俺だって、こんなところに来たくはなかった」
と言っていたが、
「お前がいかないと、お前は生まれてこないことになるんだ」
と言われ、しょうがないと思い、
「仕方なくやってきた」
ということであった。
「じゃあ、あなたの時代には、もうタイムマシンなどがあったのですか?」
と聞くと、
「そんなものはない。まだまだ先のことなんだけど、俺たちのこの時代の年代が選ばれたのには、理由があるということなんだ」
というのであった。
「どういうことなんですか?」
と聞くと、
「俺たちの時代でないと、お前が生まれてこないとおう理屈が合わなくなる」
ということになるんだ。
未来からやってきたという連中は、戦後数年してから生まれた人であり、当時で、高校生くらいであろうか、戦時中であれば、
「軍需工場に、徴用されている」
という年齢と言ってもいいだろう。
「俺たちがいた時代には、徴用のようなものはないので、簡単に使えると思ったんだろうな」
ということであった。
「ただ、戦後まで、20年も経っていないので、自分たちの親の遺伝子のようなものが残っていて、まだ意識の中に、軍需工場においての徴用というのが、身体に沁みついているという感じだった」
ということであった。
だから、
「もはや、戦後ではない」
と呼ばれ、当時も人手不足とは言われていたが、それよりも、
「戦後の復興」
という時代を乗り越えなければ、
「未来もない」
ということである。
ということは、いつか分からない未来からやってきた人が、戦後、20年から30年くらい経ったところの人間に対し、
「お前たちがここで、過去に行って、働かないと、親は、西洋失調や、流行病で死んでしまうことになる」
と脅されると、
「自分が生まれてこない」
という風に言われ、実際に、今でも、貧しい人は、
「栄養失調」
という現実から、離れられない時代であるということで、
「脅しは充分に効く」
ということであろう。
「だから、彼らを攫い、過去に誘ったことによって、当時、
「行方不明事件」
が多かったり、さらには、蒸発と言われる人が多かったりした。
未来人が狙う相手は、
「いなくなっても、疑われないという理由を持った人」
つまりは、
「自殺志願者のような人」
であったり、
「差別を受けたり、貧富という意味で、底辺にいる人たち」
であれば、
「蒸発した」
といっても、その理由は、
「世を儚んで」
ということで、もし、死体が見つからなかったとしても、
「断崖絶壁から飛び降りたことで、死体が上がらない」
と言われてしまうと、問題としては、
「個人の問題」
ではなく、
「蒸発事件」
ということが
「社会問題になる」
というのが、大きな問題だったのだ。
そもそも、これは、警察や政府からすれば、
「さほど大きな問題ではない」
と思っていたのかも知れない。
いくら、
「もはや戦後ではない」
と言われているとしても、そこは、
「蒸発をしなければならない社会状況は、自分たちが作ったものではなく、仕方のないことだ」
ということになるので、
「とりあえず、社会問題ということを提示しておいて、解決策を模索している」
ということにしておいて、
「俺たちには責任がないんだ」
とタカを括ることで、
「世の中の辻褄を合わせよう」
と、考えているだけのことであろう。
それを思うと、
「社会問題というものは、実際の問題と、政府の問題との、2段階の考え方がある」
ということになるだろう。
それぞれの見方から、時代背景を見ることで、当時の政治家というのは、
「いかに自分の保身に走ろうとするのだろうか?」
ということになるのだろう。
そういう意味で、未来人からすれば、あの時代の人をかどわかすということは、できさえすれば、時空警察からは、ある意味、
「盲点になる」
といってもいいだろう、
時空警察は、その時代を比較的、おろそかに見ているのだった。
元々、特撮の中にも、似たような話が書かれているものもあった。
しかも、同じシリーズであるが、違う物語であり、テーマも、
かたら、
「オカルトチック」
な話であり、かたや、
「地球侵略」
を描いた話だったのだ。
ただ、話の内容と、その目的が奇しくも同じであったが、どうやら、同じ脚本家によっ描かれた内容だったのだ。
だから、内容や、事件の動機が同じであっても、別にかまわないといえるだろう。
その内容としては、
「ある星、(ある異次元宇宙)において、平均年齢が上がってきたことで、労働力が不足してきたので、宇宙人は、地球人の若い肉体に眼をつけて、それを攫ってくる」
というものであった。
なぜ、宇宙人の、
「平均年齢が上がったのか?」
ということに言及していなかったが、考えられることとしては、
「今の時代のような、少子高齢化?」
ということであるが、当時は逆で、
「労働人口が少ないことで、産めや育てよ」
という時代だった。
そもそもが、戦争をしていたことで、若い人材は、根こそぎ戦争に取られ、そのほとんどが戦士するということが起こったことで、残ったのは、
「老人や、女子供」
ということもあり、当時は、結婚もしないうちに、戦争に行くのだから、子供が増えるわけもない。
しかも、出生率も、死亡率も高かったのだから、
「平均年齢が高くなるのも、当たり前だ」
だから、特撮ドラマとしては、
「戦争で若い人が死んでいくと、その後の労働力にも影響する」
ということで、
「戦争はいけない」
という警鐘を鳴らしていたということなのかも知れない。
それを考えると、
「人間というものが、
「戦争によって、自分たちで、自分の首を絞めているようなものだ」
ということを言いたくて、
「若い肉体を求めて、地球人を攫って、母星に連れ去る」
というやり方をするというのが、事件としては、
「人間消失」
であり、さらには、その理由が、
「平均年齢が高くなったことで、労働力が低下してしまったため、他の星の肉体をもらい受ける」
という、一見、都合のいいことのように思える。
ただ、それだって、戦争によって、若い人の命を簡単に奪えるということに比べれば、「まだマシだ」
といえるのではないだろうか?
それを考えると、
「そもそも、戦争というものがなければ、こんな理不尽なことはないだろう」
ということなのだ。
ただ、宇宙人たちからすれば、
「背に腹は代えられない」
ということでの、致し方のない方法だったのだろうが、世間一般で考えると、
「勝手な理屈による、理不尽な誘拐」
ということにしかならないだろう。
それを思うと、
「多数決では、理不尽ということになってしまう」
ということになるのだろう。
そんな特撮ものでも、時代が数年違うだけで、発想も違ってくる。それだけ、時代が、急速に発展していた時代だったのかも知れないと思うと、実に面白いといえるのではないだろうか?
最初の、
「人間喪失では、液体のようなものに触れると、そこから、瞬時に、伝送されるという仕掛けになっている」
という、少し曖昧なものであり、少し時代が進むと、今度は、
「大型のカメラのようなもので、魂だけを抜く」
という発想になっていた。
これは、たぶん、江戸末期から日本に伝わったカメラというものが、
「魂を抜かれる」
ということで、写真に写りたくないという人が多かったことからの発想ではないだろうか?
今であれば、
「なんてバカバカしい」
と言われるであろうが、当時の人間とすれば、それくらいのことを怖がったとしても、当たり前のことであっただろう。
何しろ、昔の人は、
「電線を使って荷物が早く届く」
と思っていた人が多かったということで、
「電線に、荷物をぶら下げていた人が多かったというのだから、この発想も実に興味深いものだ」
といってもいいだろう。
だからこそ、当時のテレビドラマというのは、まだまだこれからという時代であり、しかも、電気製品の開発というのは、結構いろいろ開発されていた時代でもあった。
そういうことから、
「未来に夢を載せた発明」
ということからも、
「数年で、発想は同じでも、手段がまったく違う」
ということになるのだろう。
そんな、
「人間消失」
というのは、当時は社会問題でもあった。
もちろん、本当に、
「人が消えてなくなる」
というわけではない。
失踪であったり、自殺であったり、いろいろな悩みなどから、
「世の中が嫌になる」
ということも多いだろう。
特に、田舎から出てきて、
「出稼ぎ労働者」
というと、今までの田舎の暮らしとはまったく違う都会の生活で、
「都会に憧れを持って、都会で頑張る」
と思う人もいれば、
「都会に最初からいる人と、田舎から出てきた、まったく都会を知らない人間が、言い知れぬ、差別待遇を受けるということも結構あったに違いない。
都会の人は、田舎からの出稼ぎというものを、暖かく迎えてくれればいいが、結局は都会で育った仲間に比べれば、田舎にいた人は、差別的な目で見てしまうのも仕方のないことだろう。
同じことをするのでも、同じレベルであれば、都会の人を選ぶというのも、無理もないことだろう。
しかも、都会に憧れがあって、都会で暮らしていきたいと思っても、結局、その差別の壁というものに抗うことはできず、
「自分の孤独さ」
というものを思い知る形で、結局。どうすることもできず、人によっては、
「蒸発する」
あるいは、
「自殺に走る」
という人が増えたに違いないのだ。
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