ぼくだけが夏、夏。

紺野真

ぼくだけが夏、夏。

ぼくだけが夏、夏。

朝。目覚めて水を飲む。

窓の外は太陽の光で真っ白だった。

夏。ぼくだけが夏。

誰にでもあるようなノスタルジーで窒息しそうだ。ぼくは、きっとこのノスタルジーという病で腐ってしまうのだろう。造花の向日葵は自分が生きられる季節がまた巡ってきたと笑う。


ぼくの青春という容れ物は空だった。手を入れるとざらざらとした砂利のような手触りがあった。

過去にここにはなにかがあったのだろうか。

それはいつ、どうやって失くなったのか。


外に出ようか。いつぶりか分からないが。

炎天下。ぼくには夏は眩しすぎる。アスファルトに焼かれぼくの身体は溶ける。遠くに少女の姿が見えた。

少女は消えない。ノスタルジーを孕んでいるから。

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ぼくだけが夏、夏。 紺野真 @konnomakoto

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