エビ、飛ぶ

紺野真

エビ、飛ぶ

なんの変哲もない朝だと思った。

家の外から聞こえる生活音が声がなんだか違う。


カーテンを開けるとその理由が分かった。

エビが、空を飛んでいた。

それもただのエビではない。お寿司のネタの状態のエビが沢山空を泳いでいる。


僕は呆気にとられていて、同じような人々や喜んだり深刻そうにしている人々と一緒に空飛ぶエビを眺めていた。


SNSを覗くとどうやら全国的に空にネタが飛んでいるらしい。

ただ、地域によってまぐろ、イカ、アナゴ、サバなど様々である事が分かった。


駅前の寿司屋は臨時営業で、エビ握りの安売りとシャリだけの販売をしており行列が出来ていた。


母親の手を離れてジャンプしてエビを捕まえて口に入れた少年が怒られていた。


大きな袋を持ってエビをかき集めている集団がいた。


僕の目の前をエビが通り抜けて尻尾が当たりそうになってヒヤッとした。


海や空や魚、環境などの専門家たちは頭を抱えていた。


空飛ぶエビは危険だ、権力者の陰謀だ、環境汚染が原因だ、と声高らかに叫ぶ人たちが現れた。


みずいろの空を背景に桃色のエビが飛んでいるのは意外と映えるから、そのまんまでいいんじゃないかなあ


大きな独り言を言ってみた。


このエビたちはいつまで飛んでいるのか、どこから来たのか分からないけれど僕にはあまり関係ないと思った。


だって僕の一番好きなお寿司はダブルチーズインハンバーグ軍艦だし。

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エビ、飛ぶ 紺野真 @konnomakoto

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