【短編】デスゲーム屋さん

お茶の間ぽんこ

デスゲーム屋さん

 店の扉を開けると、チリンチリンと軽快な音が鳴り響く。店内は古びたアンティーク雑貨が並んでいた。


「いらっしゃいませ」


 もじゃもじゃ頭の店主が出迎えてくれた。


「デスゲーム器具を探しにきました」


「あぁ、アングラウェブを見て来てくださったお客さんでしたか。どうぞこちらへ」


 店主は外の看板をクローズにひっくり返して案内してくれた。


 奥の部屋に行くと地下に続く階段があり、僕は店主の後に続いた。


「お客さん。デスゲーム主催者歴はどれほどですか?」


「いやぁ、まだ全然ですよ」


「おや、新人さんでしたか。うちはビギナーでも金銭的にも手を出しやすい品を用意しておりますので、気に入るものがあると思います」


 階段を降りると大きな倉庫があった。ゴツゴツした器具からボードゲームっぽい盤上ゲームまで種々雑多に置かれている。


「デスゲームのテーマはもう決めています?頭脳が試される系とか体を張る系とか精神をえぐる系とか、色々ありますが」


「迷っているんですよね。ターゲットは債務者って決めていますが」


「ほう。債務者だと頭がそこまで良くない人が多いかと思うので二択ですかね。まあその方がイレギュラー発生しづらくてハンドリングしやすいのでお勧めですよ」


「なるほど。ちなみに頭脳系だと何があるんですか?」


「定番だと、人狼ゲームとか、ポーカーやダウトなどのカードゲームですかね。これにオプションとして会場の設備とリンクさせるとなると、それなりのお値段になりますが。嘘が入り混じった駆け引きが発生しやすく、よくドラマが生まれるので、スポンサーから多額の出資を頂ける可能性が高いです」


「確かに。本当は定番ではなくトリッキーなゲームをしたいんですけどね。より独自性が出て回収率も高そうですが、イニシャルコストと管理コスト、それにインシデント対応も想定しておく必要がありそうですね」


「ですね、ビギナーであれば経験を積んで資本も潤沢になってから実施するのが良いかと」


「では体を張る系だと何があります?」


「会場の大きさにもよりますが…器具の値段を安く抑えられる鉄骨渡りとかいかがでしょう?」


「それだと高さが必要ですよね?」


「はい。10mから落下しても大けがで済んでしまうことが多いとデータが出ていますので、30mぐらいの高さがあった方が安心でしょう。もしくは、地面に刃物を敷いておくとか工夫をすれば致死率を上げることはできます」


「現実的ではないですね。他にあります?」


「地雷が埋まったタイルを敷いて、地雷が埋まってないタイルを踏みながらゴールを目指すゲームはいかがでしょう?」


「面白そうですね。爆発範囲はタイル内で済みます?」


「もちろん。最小限の爆発で対象者を確実に殺すことができます」


「ちなみに地雷タイルを区別する方法はどうすれば良いですか?設置中に誤って踏んでしまわないか不安です」


「実は地雷タイルの外枠のある一か所に赤い丸印が付いているんです。ただ、参加者に悟られないようにしているので視認は難しいでしょう。業者に依頼するのが安全かと思います」


「なるほど。ありがとうございます。精神をえぐる系だと?」


「安価で済ませるならロシアンルーレットが一番ですね。専用の拳銃を用意すればいいだけです。それでいて、引き金を引くだけで自分の生死が決まるので、参加者の精神を大きく削ることでしょう」


「確かにコスパが良いですね。入れる弾丸を調整すれば脱落人数も何なりとできますね」


「うちでは六分の一の拳銃しか扱っていないので、一丁あたりに捌ける人数は限られますが、拳銃の量を増やせばいかようにもできます」


「なるほどなるほど。ちなみに主催者が実は参加者に紛れていたパターンも検討しているのですが、弾が入っている番を引き当てない方法はあります?」


「実は弾丸が入っているチェンバーの位置によって、拳銃を揺らしたときに音が違うんですよ。三時間ぐらい耳を慣らせば、容易に見分けることができるかと」


「ありがとうございます。他も色々見たいです」


 店主に小一時間くらいデスゲームについて教えてもらった後、改めて出直してくると言って帰った。




 一か月後、債務者向けのデスゲームに参加し、必勝法を知っていた僕は生き残り、賞金を得ることができた。

「ゲームを事前に知っていれば簡単に勝てる。良いお金稼ぎだよ」

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