第2話『告白日/面会日』

今日は一週間に一度の『告白日』だ。告白日とは、捜査の時点で聞き取り切れなかった犯人の動機や感情を告白する日である。

この後妻との面会が待っている。久しぶりに会えるがあまり嬉しくはない。

精神を病んだ彼女に、あまり事件のことを思い出してほしくないのだ。


「じゃあまず、お前さんの言い分を聞かしてもらおうかね。」


今度の監守は感じの良い老警官と言った印象の男だった。彼には家族がいるだろう。左薬指に指輪が嵌まっている。


「はい、監守さんの知っての通り私は…私がやりました。」


監守は黙って聞いている。


「その男は、深夜の家族全員が寝静まった後に私の家に入ってきました。私と妻はその男の薬でさらに深く眠りにつかされました。その間に私と妻は縛り上げられ、娘はベルトの様なもので締め殺されていました。田舎の、一軒家でしたから、近所に声は届きませんでした。」


沸々と、冷めていた気持ちが蘇ってきた。


「…続けて。」


「私と妻が起きた時、男は娘の屍体を…屍体を犯していました!最愛の娘が、殺され、目の前で辱められているのに、私は、何も出来なかったッ!」


「落ち着いて、続けて。」


「男は近所の中学生でした。同じ中学であった娘に、振られた腹いせだったのでしょうか、この様な蛮行に走ったそうです。

私は許せなかった。殺してやりたいと思いました。しかし彼はまだ十四歳に満たず、また証拠を残さなかった。」


「そうらしいね…。」


「ここまで来たら分かるでしょう。復讐です。私は…おっともう時間ですね。今回はここまで、次は続きをお話しします。」


「…あんた、大丈夫かい?いや、大丈夫なわけないか。すまんな娘さん、あかりさん、亡くしているのに、変なこと言って。」


         ◇◇◇


告白が終わったので、この後は妻との面会だ。久々に会うので心配する。何しろ逮捕の後一度も会っていないのだ。

錆びかけたパイプ椅子に座らされた瞬間、扉の向こうから妻が現れた。


「久しぶりやね、もう何年も会ってなかったみたいやろ。」


「久しぶり、あんたは変わりないみたいやけど。」


「最近どないしてた?私はね映画を見たよ。面白い内容やったな。」


「そんな話はええやろ。本題に入ろ。あの時何をしたのか、これだけや」


「そうやな…私はあの子、ほら犯人の。

私はあいつを殺したかったけど、でもあかんやろ。ただ殺すだけじゃ意味ない。

まずな、あかりの綺麗な身体を視姦した眼を穿り出してやった。その後殺すときに聞いた悲鳴やフラれた時に聞いたであろう声、滑らかで、ピアノみたいな声やったよなぁ、あかり。そんな罪深い鼓膜は耳かき棒で突き破ったったわ。痛いやろなぁあれ。」


「…続けて。」


「その後はなぁ、証拠ない言うて嘘ついた舌引っこ抜いたった。ほんまあの時の顔わろてまうかとおもたで、イタイ〜イタイ〜言うてな!あかんコレ警官さんに聞かされへんな。」


「…大丈夫やから、続けて。」


「で、穴という穴に虫いっぱい入れたるねん。うち田舎やからさ、いっぱいおるやろ、虫。鼻とか耳の時こしょばそうやったな。後は、庭に埋めたった。あ、もちろん生きたままな?口に土入るのしんどそうやったからガムテープ貼っといたで。あの後、埋めたところに、パセリ植えたからよう生えとるやろなぁ。」


「それ、名前つけたろうか。感錮刑言うねんで、もう受けてる刑と一緒やけどね。」


私は奇しくも同じ名前の罰を受ける。いや、意図的に、だ。その後もひとしきり喋った後面会はおしまいになった。

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