第9話 プレデター

 前回のお話の中で、うちのイモリちゃんはごはんの好き嫌いをしたことがない、と書いたかと思います。


 実は、それについてちょっとした裏話というか、エピソードがありまして。



 イモリちゃんを飼育し始めた頃、水槽のコケのお掃除をお願いしようと思って、石巻貝いしまきがいという貝さんを数匹、イモリちゃんの水槽に入れていたんです。


 ――もう、お分かりの方もいらっしゃるかもしれませんが……。


 その石巻貝さんたちが、亡くなっていくんです。


 お迎えした石巻貝さんたちは、みんな、一~二センチメートルくらいの大きさで、元気で、しっかりとした殻をお持ちだったのですが、次々に亡くなって、からっぽになった殻が水槽の底にころんと転がっている――という状況が続きました。


 初めは、特に変だとは思っていませんでした。

 石巻貝さんは生き物ですし、こんなに小さいのですから、ちょっとした環境の変化や、何かの偶然で急に亡くなってしまうことはあるでしょう。


 しかし、私はある日、見てしまったんです。


 イモリちゃんが、一匹の元気な石巻貝さんの殻に――。


 ぱくっ! ぱくんっ!


 一生懸命ぱくぱく攻撃をしているところを。


 そのとき、私はさとりました。


 イモリちゃんは、石巻貝さんの背中の殻をお口で攻撃し、石巻貝さんを壁からがしたり、ひっくり返したりして、石巻貝さんの体の柔らかいところを上に向けさせ――。


 食べていたようなのです。



 イモリちゃんは悪くありません。


 飼い主にとっては「お掃除をお願いした石巻貝さん」でも、イモリちゃんにとっては、「おいしい石巻貝さん」です。


 飼い主がイモリちゃんの狩猟能力を見くびっていたことは悪かったのですが、客観的な事実を見れば、「イモリちゃんがおいしい生餌いきえを食べた」ということですからね……。

(『餌用』として売られているわけではない生き物を餌として食べさせるのは、衛生面等の理由からあまり良くないという噂を聞いたことがありますが、イモリちゃんはその後も元気ですので、少なくともこの時は大丈夫でした。)


 でも、イモリちゃんに食べさせようとは思っていなかった石巻貝さんが食べられてしまったのは、悲しいことでした。


 皆さんも、イモリに限らず、そして同種・異種に関わらず、生き物を複数匹いっしょに飼育する際には、それぞれの子の生態や性格、そして相性、飼育環境などを、ぜひ、よく考えてほしいなと思います。


 良かれと思って一緒にしても、とても悲しい結果になってしまうかもしれません……。



 しかし、イモリちゃんが石巻貝さんをぱくぱくしている姿、あれは忘れられません。


 イモリちゃん、完全にプレデターの目をしていました。

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