うちのイモリはなにもしない

柿月籠野(カキヅキコモノ)

第1話 真顔

 突然ですが、私はイモリを飼っています。


 種類は、『シリケンイモリ』です。

 日本大百科全書(ニッポニカ)によると、シリケンイモリはアカハライモリの亜種で、奄美諸島や沖縄諸島に分布しているそうです。


 シリケンイモリの見た目は、アカハライモリによく似ています。

 トカゲのような形に、黒い背中、赤いおなか


 違うところは、うちの子の場合は、背中にうっすらと、赤い点線のような縦の模様と、細かい金粉を散らしたような模様があること。そして、お腹の色が『赤』というよりは、もう少しオレンジ色っぽいところでしょうか。

 特に背中の模様は個体差が大きいので、どこかで複数匹のシリケンイモリを見ることがありましたら、観察してみてください。

 背中が全体的にゴージャスな金色に覆われた子もいますよ。


 ……といっても、シリケンイモリにもアカハライモリにも様々な子がいますから、私は、ぱっと見ただけは判別が難しいかなと思っています。


 ところで、そもそも『イモリ』って何? 『トカゲ』や『ヤモリ』とどう違うの?

 ということですが、


『イモリ』は『井守』と書けるだけあって、多くの『トカゲ』や『ヤモリ』とは異なり、水のあるところで生活しています。(トカゲやヤモリも水は飲みますが、基本的には人間のように、乾いた陸地にいますよね。)

 しかし、イモリには魚のようなエラがありませんので、水の中にいるときは時々水面に顔を出して、息継いきつぎをします。陸に上がることもあります。

 かわいいです。


 生物ですから、イモリにもトカゲにもヤモリにも様々な生態のものがいて、卵や赤ちゃん、大人などによっても様々な生活の仕方をしているかと思いますが、基本的には上のように覚えていただければ、このエッセイを読むにあたっては支障がありません。


 さて、そんなこんなで、うちのイモリについてですが。


 かわいいです。


 もちもちぽてぽてのお肌。

 よちよちのちっちゃなおてて。

 くりんくりんのおめめ。

 そして、笑っているようなおくち

 ――に見えるのは、背中側の黒とお腹側の赤の境目の形です。


 よく見ると本物のお口は、かわいいおめめの下、少し後ろの方から、反対側のおめめの方まで、わりと真一文字。

 完全な直線ではありませんが、うーん、真顔。

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