1巻 3章 8話

翌朝、雨は上がり水の都に爽やかな風が吹いた。


wolに到着するとキティとメダカが立ち話をしていた。

クラウン達に気付き、水中保安警備員たちは拍手で招き入れた。


メダカが嬉しそうにディスプレイを出し、読み上げた。

「オリビアを含め、スワイプ窃盗団20名、全て逮捕できました。wolから感謝を込めて特別報酬とトロフィーを送ります。監視小屋にいた盗賊と盗賊長のアントニオは時々うなされているよ。洒落た名前を名乗っているけど、これから本名や、どの星から来たとか、後はこちらで調べます。ご苦労様でした。」


拍手が起きた。


奥からウォウォラエが大きな木のヘラとアメの瓶を持ってきた。

「君たち、盗品の返却のみだけど、クエスト受けてもらえる?逮捕した人数が多いから事情聴取に時間がかかりそうなの。先に、このパーラーとなくならないキャンディーポットだけ届けて欲しいの。私の大切な友人の持ち物なの。謝罪と罰金の見守りは後日、私が責任持ってやるわ。じゃ、また後で。」


クラウンはディスプレイを出してクエストを受けた。


チョコのプリズムを追って、ピッツアの美味しいミックの店に到着した。

閉店の看板がかかった薄暗い店内から店主のミックは現れた。

「あれー?この前、来てくれたよね?君たちが返却に来てくれたのー?」

ブラストがうなずき、大きな木のヘラを渡すとミックは涙を流した。

「開店の記念に友人達にもらった、友情のパーラーが帰ってきた。ありがとう。」

「またお店は再開しますか?」ブラストがたずねると、涙を拭いてミックが答えた。「夕方にパーラーが帰ってきた記念パーティーをするから、君たちも来てくれ!さあ、サインするよ。」

「シシッ!またうまいの食べれるぞー!」スノーはディスプレイにサインをもらってテンションが上がった。


⭐️


3人と2匹は浮かれながらルイーズの店を訪れた。

「さっき、ウォウォラエから連絡あったのー。みなさん、ありがとう!」

ふりふり小走りでルイーズが迎え入れた。

「ルイージ!みんな戻ってきたよー。」

ルイーズが嬉しそうに2階に呼びかけた。

ふりふり階段をルイージが降りてきた。

「さっすが!やりましたね!この街のヒーローです!はい、これ。クラウンさんにレモン味、ブラストさんにミント味、スノーさんはマンゴー味です。」

手元を見てクラウンは驚いた。

「限定のなくならないキャンディー瓶!いいのー?」

ルイージは深くうなずき鼻先をピクピクさせながら話した。

「正確にはフタに仕掛けがあって、材料補充しないといつかは無くなります。キャンディーがなくなったらフタをゆっくり回してください。」

「ありがとう。僕たちの好きな味だー。」

クラウンは感動していた。

「それはルイーズがみなさんの好みを、この前覚えました。」

ルイーズも嬉しそうに耳をピクピクさせた。

「限定品を3つもいいんですか?」

クラウンはルイーズにたずねた。

「限定品って呼ばれてるけど、ルイージがフタを作ってます。雨季の間しかここにいないので作った分だけ売っていたら、限定品って呼ばれるようになりました。」


「このフタさえ持っていればフレーバーはステーションでも補充できるからご安心ください。クラウンさん、サインしましょう。」

ルイージにサインをもらって、盗まれた瓶を無事に返せた。


お店のモニターにウォウォラエからのコール。

「みんな一緒ね!ちょうど良かった。クエストにサインしたわ。ありがとう!夕方、ミックの店に集合よ〜。営業再開おめでとう!ルイーズ。」

「ありがとう。みんなのおかげよ。」


夕方、集合の約束をして、預かってもらっていた荷物を持ってラグーナ・ステーションに向かった。

雨季の川幅は広く、桟橋に向かうと、ゴンドラがたくさん川を渡っていた。

キョロキョロしているブラスト。

「ブラスト、待って!チョコ、セレナーデのゴンドラに連れて行って!」

チョコからプリズムが出て10隻ほど移動した。

「セレナーデついてますか?」

「さあ、どうぞ。ゆっくりセレナーデをお楽しみください。」

クラウンはチョコを抱きかかえゴンドラに乗り込んだ。

3人と2匹は美声と景色をゆったり味わった。


⭐️


サイプレス号船内。


ーwolから特別報酬とトロフィーが届きましたー

小包を開けると金色の有翼の獅子像のミニチュアが3つ届いていた。

「いいねー。」スノーは微笑んで棚に飾った。


「スワンからログきてる。」

ブラストがモニターに画像を出した。


ーみんな元気?私は元気よ。フローレンスにお花をもらう代わりに、鱗粉で癒して、ムーシャインの療養所は評判になってきたの。クリオネ花が欲しいって仲間も呼んだのよ。この前、フローレンスのお誕生日パーティがあって仲間とショーをしたのー


ログの画像は盛大で、フローレンスを囲み、スワンと他に3人のピクシーエンジェルズがスタッフや患者と写っていた。療養している患者の中にフリーが楽しそうに写っていた。


3人はスマイルマークを押した。

ーギガスに追いかけられたけど、みんな元気にやってるよー

ブラストはルイージ牧場で撮った記念のログをスワンに送った。


⭐️


「シシッ!オレ達もパーティー!の前にギルドに報告行っとくか。」

スノーの提案でギルドにも立ち寄り、返却クエストの報酬も受けとった。

「スッキリしたー!」ブラストが思いきり伸びをした。


夕方まで3人と2匹は街並みをゆっくり気ままに歩いた。細い路地のチーズ屋、運河沿いのカフェテラス、アンティークの道具屋にはさっそくwolに付き添われて盗品の返却に来ている盗賊が見えた。


流行りのスペース食屋、アロマ屋、花屋から市場まで活気にあふれていた。


教会にも行ってみた。司祭が嬉しそうにドリンクを飲むジェスチャーをしたので、3人はうなずいて微笑んだ。


ゆっくり街並みを歩くだけでも素敵な気持ちになった。

桟橋近くの緑地エリアで、運河を眺めながら3人と2匹はゴロゴロ気ままに過ごした。雲はゆっくり流れて行く。

クラウンは今まで味わった事のないリラックスを感じた。


夕日に見惚れていると、スノーが立ち上がった。

「そろそろ行くか。お腹空いたな。シシッ!」

2人も立ち上がって、マルゲリータを絶対食べるだの言い合いながらミックの店に向かった。

お店に明かりが戻り、賑わっている。ウォウォラエ、マーサー、キティ、メダカ、ルイージ、ルイーズ、司祭、常連客たちで大繁盛だった。

ウォウォラエがこちらに気づいて手を振った。


⭐️


4章に続く。

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