日常風景の切り取り

あらやしき

麻婆豆腐を作って食べるだけの話

 豆腐を使い切ってしまいたいので、今日は麻婆豆腐を作る事にした。


 まずは玉ねぎを切る。まとめて買ったものの最後のひとつだ。いつも買っている安い玉ねぎが売り切れてたので仕方なく買ったものだ。


 いつものように皮を剥く。この玉ねぎは張りがあるというか、どうにも皮が剥きにくい。良い玉ねぎというものはこういうものなのだろうか?


 四苦八苦して皮を剥き終えて上下の茶色い部分を切り落とす。


 その後、四等分にしてから一つずつ千切りにしていく。


 自炊を始めた当初は手動のみじん切り器なるものを買って、あれやこれやを細切れにしてたものだが、近頃はそれすらも面倒になって来た。


 さて、玉ねぎを切ると目がしみるというが、実のところ、そういう事態はあまり起こらない。


 強いて上がるなら、この若干良い玉ねぎを買ったその日に切った時だ。


 やはり、新鮮なら目に染みる成分がより多く残っているのだろう。


 これを買ったのは、果たして何日前だっただろうか? まぁ、腐ってなければなんでもいい。


 玉ねぎを切り終えてフライパンを用意する。そこの深いフライパンだ。殆ど鍋のように使っている。


 そのフライパンに油を敷き、玉ねぎと挽肉を投入する。100グラム程度の豚挽肉だが、1人には十分な量だ。


 火をつけると、ジューッと心地良い音がして、肉と玉ねぎに火が通っていく。


 みじん切りにしてた時は意識していなかったが、大きく切った時は生焼けにならないように気をつけて、よく火を通さなければならない。


 しかし、焼きすぎると肉が焦げてしまうので、そのバランスが大事だ。


 双方いい感じに焼けたところで、水と麻婆豆腐の素を入れる。


 スーパーには中華をはじめ、料理の素が多数売られている。


 私のようなものぐさでも、一端の料理人になれたように錯覚出来るくらいにはバリエーションがある。


 さて、その素に書いてあったレシピには水を180mlと書いてあったが、適当に200を入れてやれ。


 そもそも、このレシピに書いてある材料は豆腐だけで、玉ねぎと挽肉は私が勝手に加えたものだ。


 今更水が少し増えたところでどうということはない。


 水を入れる瞬間、激しく油が跳ねたがじきに収まる。次に麻婆豆腐の素を入れる。


 が、液体が出た後で中に何か残っている感触がある。


 おそらく乾燥した挽肉だろうか? 固形物も素の中に入っているのだ。


 それが内に引っかかって出てこないのだ。


 嫌な具合に口が閉じてしまい、菜箸で絞っても効果がない。


 ふと思い立ち、菜箸で袋の口を開き、中の固形物を掻き出す。


 これで袋が空になった。何事も工夫だ。


 素が水に染み渡り、フライパンの中が赤くなっていく。


 ここで豆腐を入れる。


 いつも買うのは安い小型の絹ごし豆腐だが、絹ごしだとこういった混ぜものに使った際に形が崩れて跡形もなくなってしまう。


 なので、今回は木綿豆腐を使う事にした。


 小型の絹ごし豆腐は手に乗るサイズだが、今回の木綿豆腐は手からはみ出るサイズだ。


 手に乗せて賽の目に切っていくが、気をつけないと手からこぼれ落ちてしまいそうだ。


 掌の上で縦横に格子状に切り、その上部を切りながらフライパンに落としていく。


 あとはとろみを加えれば完成だ。


 素に付属してるとろみ粉を小鉢に移し、少量の水を入れてかき混ぜる。


 そして、コンロの火を止める。これをしないととろみが逃げてしまうのだそうだ。


 とろみ粉をフライパンの中に満遍なくふりかけ、サッと混ぜてから再び火をつける。


 今度は様子を見るように弱火にして、豆腐を崩さないようにおたまでゆっくりとかき混ぜていく。


 しばらくするととろみがついてくるので、これで完成だ。


 続いてお楽しみの実食タイム。


 百均で買った白い皿に、3合炊きの炊飯器から白米をよそり、その上に麻婆豆腐をかける。


 やはり、この食べ方が一番美味い。


 同じく百均で買った木製のスプーンで掬って口に運ぶ。


 中華特有の旨味が口の中に広がっていく。


 大きく切った玉ねぎのシャキシャキ感が良いアクセントになっている。


 その上、挽肉の肉汁が良い感じに混ざって美味い。


 もはや挽肉なしの麻婆豆腐は考えられない。


 忘れてはいけない木綿豆腐。


 豆腐自体にはそれほど味はついてないが、それが麻婆を引き立て、更に麻婆が豆腐を引き立てる。


 やはり、木綿豆腐を使ってよかった。


 そんな事を思いながら、あっという間に食べ切ってしまった。


 もう一杯いただくとしよう。

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