無敵

 もうすぐで夏休みという日の昼休みのこと。


「じゃんけんに無敵ってあるだろ?」


 唐突に何を言っているんだコイツは。

 そう思いながら同級生の宮元に冷ややかな視線を送る。


「ああ。だからどうした?」

「あれって、グーチョキパーの3つの要素が合わさってるだろ。だからよ。もしお前がパーを出して、俺が無敵をだしたとしたらだ。どうなると思う?」

「宮元が勝つ?」


 無敵と名乗っているんだ。普通に考えて、そうじゃないとおかしい。


「違うな。無敵には、グーチョキパーの3つの要素が合わさってる」

「それはさっき聞いた」

「だからよ。お前のパーに、俺の無敵のチョキの要素は勝って。グーの要素は負けて。パーの要素はあいこになる」


 どうしてチョキ以外の要素も使うんだ、というツッコミを一度飲み込んで、理由を聞いてみる。


「だからなんだ?」

「勝ちと負けが相殺されて、あいこが残るから、結果的にあいこなんじゃないのかって話だ」


 あ、なるほ……どらない。

 一瞬理解できそうだった自分の脳みそを殴りたい。勝ちと負けが相殺されるってなんだ。勝った事実も負けた事実も消える訳ないぞ。


「……とりあえず、その無敵とやらで俺の尾てい骨を続くのを止めろ」

「断る!!」

「チッ。……クソだりぃ」


 意識を耳に集中させ、チャイムが鳴るまで蝉の声を楽しんだ。

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