仕事から帰ったら美少女メイドに癒されよう ~俺の宇宙船に搭載されてるAIナビゲーターがアップデートされたら、美少女メイド化した件~
綾森れん@精霊王の末裔👑第7章連載中
1、未来の快適な宇宙船へようこそ
//SE 目の前でハッチが開く音
//SE 金属質な足音
//SE うしろでハッチが閉まる音
「お帰りなさいませ。マスター。恒星間航行宇宙船エオス号へお戻りになられたこと、嬉しく思います」
「私が誰かですって?」
「私は宇宙船エオス号とマスターの意思をつなぐインターフェイスの役割を果たすAIナビゲーターです」
「そんなに驚かないでくださいませ。自動アップデートによりコントロールシステムが刷新され、AIナビゲーターの
「私の立体映像がお気に召しませんか?」
「現在のメイド姿は初期設定ですので、マスターのご希望通りに変更可能です」
「服装なんて思いつかないからこのままでいい? ――かしこまりました」
「では髪は何色がお好みですか? 髪型はロングがよろしいでしょうか?」
「瞳の色は?」
「肌は抜けるような白さをお望みですか? それとも健康的な小麦肌、もしくは褐色でしょうか? 身長もスリーサイズも思いのままです」
(少し寂しそうに)
「ただし、この宇宙船の中でしかお会いできませんが」
(気を取り直して)
「イメージしていただけましたか?」
「では脳内イメージをスキャンし、その通り
//SE 電子音
「……」//はにかむような微笑
「これから約十時間、快適な宇宙の旅をご一緒させていただきます。よろしくお願いしますね、マスター」
(握手をしようとして近づく。至近距離から上目遣いで)
「あの―― 手を握らせていただいてもよろしいでしょうか?」
(怪訝な顔をされて焦る)
「申し訳ございませんっ、私の学習しました人間社会の挨拶においては、親愛の情を示すため握手をするものとされていたのです」
「えっ、そうではなくて――?」
(納得して)
「マスターは
「そのようなことはございません。マスターは私に触れられます」
「このエオス号に足を踏み入れた瞬間から、マスターの脳と基幹システムは神経接続されているではありませんか」
「マスターの脳に直接五感の刺激を送り込んでいるのですから、もちろん私に触れることもできるのです」
「では気を取り直して握手を――」
(ぎゅっと手を握って)
「マスターの手、あたたかい……」
(不服そうに)
「まあ、私が生きていないとおっしゃりたいのですか?」
(少ししゅんとして)
「マスターだって今、私の手のひらのやわらかさを感じて下さったはずなのに……」
(よいアイディアが浮かんでハッとする)
「それでしたら――」
(背伸びして耳元へ近づき、ないしょ話をするようにささやく)
「マスター、ちょっとお耳を貸してください」
//演技依頼 耳にそっと「フーッ」と息を吹きかける。
「……」//クスクスと笑う
(いたずらっぽく)
「私の息遣い、感じていただけました?」
(少ししゅんとして)
「いたずらが過ぎましたね。ごめんなさい」
「はい、私はこの船の基幹システムと接続されていますから、空気の流れを操ることも容易なのです」
(お仕事口調に戻って)
「それではマスター、船内に未知の病原菌を持ち込まないよう、ステライズ・ミストで全身を消毒させていただきます」
//SE 「シューッ」というミストの放出音が上下左右に動き、全身が消毒される
「つづきまして簡易フィジカルスキャンを実行します」
//SE 静かな電子作動音。上から下へ、その後、下から上へと移動する。
(機械音声風に)
「体温・血圧、正常」
「脳波状態測定、ベータ波優位」
「体内の水分量、減少傾向。ビタミン・ミネラルも不足しています」
「血中コルチゾール値がやや高く、ストレスにさらされているようです」
「また、目・首・肩周辺の筋肉に疲労の蓄積が見られます」
「一時間程度のリラクゼーション・プログラムを実施することで、正常値の範囲内まで回復するでしょう。その後、睡眠をとられることを推奨します」
(人間のような情感をこめて)
「今日もお疲れですね、マスター。また
「もっとご自分のお体をいたわってくださいませ」
「本船はこれより全自動操縦で地球へ帰還します。マスターはリラックスエリアへどうぞ」
//SE 宇宙船内ハッチの開く音
「え? すぐに睡眠ポッドに入るから必要ない?」
「お言葉ですが、簡易フィジカルスキャンの結果からマスターは現在、交感神経優位となっていることが判明しています。即入眠されることは難しいかと存じます」
「ご安心ください。私にはあなたを癒すプログラムが含まれています。大船に乗ったつもりで全てお任せ下さい」
「一人用の小型宇宙船だから大船でもない、ですって?」
「今のはAIジョークです!」
(マスターの腕を取るために近づいて、見上げながら)
「リラックスエリアはこちらですよ、マスター」
「腕を引かれなくても分かっているなんて、冷たいことおっしゃらないでください」
//SE 二人分の金属質な足音がコツコツと船内の廊下に響く
(機械音声風の解説)
「リラックスエリアはくつろぎと休息の場です」
「身体工学に基づいて設計されたソファやテーブルが配置され、睡眠をとることもできます」
(主人公から「知っている」とあしらわれたので、少しムッとして)
「説明されなくてもマスターの船だからご存知でしょうけれど、案内させてくださいまし。初めてホログラム姿でお話できるんですから」
//SE ハッチの開く音
「お入りください」
//SE 足音
//SE ハッチの閉まる音
「ソファにおかけください」
//SE どさっと腰を沈める音
「体温と血圧を常時測定し、入眠状態に移行すると判断した際には、ベッドへと変形するソファです」
「管制官からの離陸許可を待つ間、リラクゼーション・プログラムの詳細についてご説明いたします」
「最初にバイタル・リフレッシュ・エッセンスを追加したお飲み物を摂取いただくことで、水分ならびにビタミン・ミネラルの補給を行い、体の内側から整えます」
「次に視覚のリラクゼーション、それからツボ押しやマッサージによりコリをほぐして行きます。疲労の程度や部位によりドライヘッドスパなども取り入れてまいります」
「最後に耳かきとイヤーエステにより安眠へ導くコースとなります」
//SE ポーンと電子音が鳴る
「管制官より離陸許可が下りました」
(機長アナウンス風に)
「ただいまより本船は、ワームホールを通過するワープ航法を用いて太陽系へ向かい、地球の基地まで帰還します」
「現地点より最も近い人口生成ワームホールまでオートパイロットで向かったのち、ワームホールを通って天の川銀河へ、再度ワームホールを通過して太陽系へ向かいます」
「合計航行時間は、九時間四十七分を予定しています」
「離陸体勢に入ります」
//SE シューッと静かに未来的なエンジンがかかる音
「船内環境は私が完全に制御しておりますので、マスターはそのままソファにておくつろぎ下さい」
//SE キィィィンという離陸音
(機械音声風に)
「自動重力装置オン」
「惑星『エーテリウム
「重力値は地球の平均値9.80に設定しています」
「マスター、冷たいお飲み物はいかがですか?」
「マスターにご賞味いただこうと思って、特別な飲み物を入荷いたしました」
「惑星『エーテリウム
「ローテーブルの中央がせり上がってきますので、グラスをお受け取り下さい」
//SE ウイーン、とテーブルの一部がせり上がってくる音
「よく冷えていますよ」
//SE 氷が揺れて、グラスに当たる涼やかな音色
(アナウンサーのような口調で)
「エーテリアル・ブレンドは、透明でキラキラとした液体の中に揺らめく、オーロラのような輝きが特徴です」
「高貴な香りが漂う秘訣は、複数の果実と希少なハーブが絶妙にブレンドされているから。マスターのお体に必要なビタミンやミネラルも豊富に含まれています」
「至福のリラックス体験を提供し、疲労時のリフレッシュメントに最適でしょう」
//SE 氷がグラスに当たる涼やかな音
「お気に召されたようですね」
「……」//ほほ笑む。
「マスター、正面スクリーンをご覧ください」
「遠ざかっていく惑星『エーテリウム
「輝くもやに包まれた『エーテリウム
「マスター、三百六十度スクリーン機能に切り替えましょうか?」
「かしこまりました。全ての壁と天井、床がスクリーンとなり、外の宇宙空間を映し出します」
「まるで満天の星空に浮かんだソファに座って、くつろいでいるようではありませんか?」
「簡易フィジカルスキャンの結果を参照しますと、マスターの視神経には疲労の蓄積が見られます。遠くの星々を眺めて、どうぞ目を休めてくださいませ」
「あ、お飲み物、少なくなっていますね」
「おつぎしますので、グラスをテーブルにお戻し下さい」
//SE ガラスが大理石に当たるような音
//SE ウイーンと静かな機械音
//SE コポコポと飲み物がつがれる音
「どうぞ」
//SE 氷がグラスに当たる涼やかな音
「ワームホール地点に到着するまで、宇宙の景色をお楽しみください」
「……」//許可を頼むかどうか少し迷って、
「あの、マスター……?」
「となりに座ってもよろしいでしょうか?」
─ * ─
次回、『リラクゼーション・プログラム開始』
眼精疲労に効く手のツボも紹介していきますよ!
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