第6話 ギャルのクラスメイト

 家に帰ろうとしたところで、「あっ、違う」ということに気づく。


 そう、もう俺の家は実家ではなく白たんとの家が俺の家なのだ。


 流石に習慣として身についたものはなかなか取れそうにないなーと思いながら帰宅するが、そういえば夜ご飯とかどうしようかなと考える。


 いままでであれば自動的に出てきたのだが、ここではそうはいかない。


 基本的に養ってもらっている俺からすれば、せめて家のことはやろうと考えて、ひとまず買い物に出かけることにした。


 正直、心のどこかではまるで炊事遠足気分で少し楽しみながらスーパーに向かっていた。


 うーん、初心者でもできる料理ってなんだ?と思い、【料理 初心者 簡単 美味しい】とかいう適当ワードをぶっ込んで検索をかける。


 なるほど?テリヤキチキンね...。


 一見難しそうに見えるが...簡単なのか?と思いながらとりあえず具材を買い集める。


 鶏もも300g、片栗粉に料理酒...醤油とかみりんとか...家にあるのかな?

まぁ、一応買っておくか。

あとはサラダ油か。


 そうして、携帯を見ながら買い物をしていると、「あっれー?オタッキーじゃん!」と声をかけられる。


 そこにいたのは同じクラスのギャルである『神坂みさか りん』であった。


「...どうも」


 いや、仲良さそうに話しかけてきたが、正直話をするのはほとんどこれが初めてなことであった。


 というか、初対面にオタッキーはかなり失礼では?


「何してんのー?もしかして料理とかする系?似合わな〜w」と、手を叩いて笑う。


 なんだろう、顔面を叩いてやりたい。


 ギャルは苦手なのだ。

距離感がわからないし、誰にでも同じように接するようで、そこには彼女たちの明確な線引きが存在するようで...。


 ということで、その場を離れようと「それじゃあ」というと、「ちょいちょーい!」と後ろから抱きつかれる。


「なっ!?//」


「なーんで居なくなろうとするわけ?一緒に買い物手伝ってよー」と言われる。


 逃げようとするも軟弱、貧弱、病弱の3弱揃いの俺は抵抗することもできずそのまま腕を掴まれて、無理やり買い物を手伝わされるのだった.


「今日はねー、うちカレーなんよ!」


「...そうなんだ」


「オタッキーはカレー好き?」


「...まぁ、人並み程度には」


「へー。ウケるw」


 ツボが浅すぎるのでは?と思いながら仕方なく彼女の買い物を手伝ったのだが...。


「ねぇ、量おかしくないですか?」と、大量に買い込む彼女に苦言を呈す。


「うち大家族だかんねー」


「...そうですか」


 そんなやり取りを終え、彼女の代わりにものすごい量の荷物を持って家まで送る。


 なぜこうなった?と思いながらも仕方なくついていく。


 そうして、古めかしい一軒家に到着すると、「ありがとうね!」と荷物を受け取り軽やかな足取りで帰っていくのだった。


 家について「ただいまー」というと、ご立腹と言った感じで頬を膨らませる彼女がそこにいた。


「ど、どうしたの?」


「どうしたのじゃないよ!どこ行ってたの!連絡しても返ってこないし!」と、ガン詰めされる。


「ば、晩御飯の準備を...」


「ふーん??...って!服から女の匂いがする!どういうこと!?何!?誰!?」


「いや、お、同じクラスの人にたまたま会って...」


「むー!!怪しい!怪しい!!」


「怪しくない、怪しくない...」と、何とか説明するもなかなか納得してくれない白たんであった。

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