水無月だってっ

鈴香 和菜

水無月だってっ

_水無月二回目の金曜日、底のある海とは決して間違えることのできない底無し色を


した空にはノロノロと回っていくネズミはおろか飛び去っていくカモメさえ見ること


ができなかった。



_水無月三回目の金曜日、頭をクラクラさせるようなアオは距離を消滅させてしまう


カモメによってグルングルンと静止している。


 彼らは天邪鬼で、風船の様に膨らんでしまうんだ、弾けることはないけれど。。。


 彼らがまるで僕らの想像の様に浮遊しないのは彼らが水風船だからじゃない、彼ら


は全てのものに実態でいられない、素直でいられない。


 ぼくらが持つ対の輝きは本当に、嫌になってしまうくらいに、僕はよく知らないけ


れど渋谷や高速道路の壁に描かれた、人間が作った記号ではない記号の羅列が僕の脳


の中心で鎖につけられて振り回されている。


 最近縁が、透明で小さなラメの入ったベトナムのチェーン店のジュースを薄めたメ


ガネフレームを見るんだ。


 その記号たちはみやすい様になんだかそんな形になって実は僕の脳の中で鎖を振り


回しているいる人と共にディスコにでもいたりするんだろう。


 全く、僕はダンスなんてしたこともないのに。


 

_水無月三回目の土曜日、僕はフロリングの床に頭を三分の一ほど突き刺し、デザー


トの上に乗るオレンジピューレから教わったように血を流し、直立した。


 我はこの瞬間z軸になったのだと叫びたい。


 けれど僕が腐る前にグラスへと拾ってくれる裸で朝露の大学寮を思想のドローン


として回る様な奴は僕の周りにはいない。


 僕は三毛猫ではないのだ。


 ミケだかは知らないが、僕は一生、腐っても自分のことを我が輩などと呼ぶ気には


ならぬ。


 そんな訳で僕の部屋に賢者の石のレジンを流し込むものもいなければ、黄色、たま


にはピンクの花を道に落としまくるカップルや、時間投資フラッシュ兼プログラム愛


好家も、それが苺から変身してしまうまでには現れなかった。

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