【完結】ブックブリューの午後

第2話 新たな始まり

カフェ「ブックブリュー」は、いつものように穏やかな午後を迎えていた。ケンジはカウンターの奥で、タケシの指導を受けながら新しいコーヒーの淹れ方を学んでいた。今日の特訓は、フレンチプレスを使った淹れ方だった。

「ケンジ、フレンチプレスは豆の挽き方と抽出時間が命だ。焦らず、じっくりと取り組むんだ。」タケシは優しくも厳しい口調でアドバイスを送った。

ケンジは真剣な表情で豆を挽き、慎重にお湯を注いでいく。その姿を見ていたマリコは、心の中で微笑んだ。ケンジの成長を見守ることが、最近の楽しみになっていたのだ。

しばらくして、ケンジはタケシに見守られながら初めてのフレンチプレスコーヒーを淹れ終えた。マリコのテーブルにそっと置かれたカップからは、豊かな香りが立ち上っていた。

「どうぞ、マリコさん。僕の初めてのフレンチプレスです。」ケンジは緊張しながらも、自信を持って言った。

マリコは優しく微笑み、カップを手に取った。「ありがとう、ケンジさん。いただきますね。」

一口飲んだ瞬間、マリコの目が輝いた。「とても美味しいわ、ケンジさん。本当に素晴らしいわ。」

ケンジの顔には安堵と喜びが広がった。「本当ですか？ありがとうございます。」

その瞬間、カフェのドアが再び開き、新たな客が入ってきた。中年の男性で、どこか懐かしい雰囲気を持っている。その姿を見たタケシは、一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑顔に変わった。

「おや、久しぶりだな。どうしたんだ、こんなところに。」

男性はニコリと笑い、「ちょっと寄ってみたくなったんだよ。相変わらずいい雰囲気だな、この店は。」

ケンジは初めて見る客に興味津々で、彼の席にメニューを持っていった。「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか？」

男性はケンジを見つめ、「君が新しいスタッフか。頑張っているようだな。そうだな、今日はタケシが自信を持って勧める一杯をもらおうか。」

タケシは笑顔でうなずき、「わかった。特製ブレンドを用意するよ。」

その後、ケンジとタケシは一緒に特製ブレンドを淹れ、その間に男性とマリコが話を始めた。男性はマリコに、本のことやカフェのこと、そして過去の思い出を語り始めた。

「このカフェは、本当に特別な場所だね。コーヒーの香りと本のページをめくる音が、心を落ち着かせてくれるんだ。」

マリコはうなずき、「本当にそうですね。ここで過ごす時間は、私にとっても特別です。」

ケンジが特製ブレンドを持ってきたとき、男性は嬉しそうに受け取った。「ありがとう、若者。これからも頑張ってくれ。」

ケンジは笑顔で答えた。「はい、ありがとうございます！」

新たな出会いと共に、ブックブリューの午後は再び穏やかに流れていった。

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