アクア・オーリオ
小谷幸久
プロローグ
雨の降る視界は、わずかに青みがかっていて、憎らしい。
口から出る息は白い。皮膚から熱が漏れ出ていくのを感じる。鼻先に触れた雨は固体になった。
墓から出てきた亡者のように俯きながら歩く。
体が重い。重いのは、雨を吸った服だけじゃない。ぬかるみが足を取るように、僕の頭には自己嫌悪、寂しさや
……徒労感。そう、僕は徒労感を覚えている。
野球に打ち込み、怪我で無駄となった徒労。
徒労。徒労。徒労。徒労。徒労。徒労……。
これ以上、無駄を増やすのは、もはや、僕自身耐えられない。
周囲に生物はいない。前を走る数台の車だけがいる。
交差点に差し掛かった。僕は青信号の点滅が終わるのを待った。
その時、僕の頭は早めの走馬灯に入る。
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