天国への推薦状
善人と悪人、白黒スパッと切り分けられない。グレーゾーンにいる人間の見極めが必要だ。だからこんな因果な仕事がある。しかし、この男はどうしたものか、厄介だ。
男には余命数ヶ月の妻がいた。妻が食べたいものを買い与えていた。プリンにケーキ、饅頭に団子、甘味の類は求められるがままに。男はそれが愛情だと錯覚し、結果的に妻は重度の糖尿病で亡くなった。
妻の天国への推薦状は私が担当した。天使の大切な仕事だ。しかし、この男の処遇はどうしたものか。善意とはいえ妻を糖尿病に罹らせた張本人だ。天国への推薦状は書けない。天国に行くには圧倒的ないいエピソードが必要だ。
妻から頼まれ、おとり調査をすることに。私は少女となり、男の店で腹をすかせたテイで万引きをしてみた。男は私を許し、大人になるまで食べ物を与え続けた。今度はバランスのいいものばかりだった。
天国にいる妻は「お人よしね」とほほ笑んでいた。来月、男は天国に来るだろう。
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