第1章2 政治家と書いて能無しと呼び、商人と書いて狸と呼ぶ

〔軍事国家ユーレイン連邦 総帥付副官 村瀬 七海 コールサイン ニッケル〕

〈ユーレイン連邦西海岸中部 首都サガント 首相官邸〉


私はブルーコバルトから銃後の政治家達と折り合いを付ける様に頼まれ、空軍のEDAS AAS-72に乗り込み護衛の2人と一緒に首相官邸へと向かいました。

官邸のヘリポートでは連邦首相の後ろにいつも付いている、首相補佐官が出迎えてくれました。


「お久し振りです、七海さん。」

「ええ、お待たせしちゃったかしら?」

「いえ・・・行きましょう。」


AAS-72 から降り、握手をして短い会話をすると。私と2人の護衛は彼に付いて行く様に官邸へと入っていった。


〈官邸 第1会議室〉


「首相、村瀬様をお連れしました。」

「入って下さい。」


ドアごしにそう言われると、補佐官はドアを開いた。

ドアの向こう側には、温厚な人柄で人気を博している現ユーレイン首相 立場たちば曽々呂そそろ、軍閥畑出身のユーレイン副首相 勝賀かつが天城あまぎ、国家公安庁長官兼国家保安庁長官 ウィリス・ドノヴァンや各省庁の長官などが着席していた。


「失礼します。」


私は敬礼し、近くの空いている席に座った。

そして、


「では、現在民間方面はどうなっているのでしょうか?」


そう告げた。


「ではまず自分から。」


すると内閣省の担当者が手を挙げこう言い、報告し始めた。


「シンプルな事ですが、ソビエト・ロシア連邦や他国との緊急ホットラインが切断されています。あと・・・他国の大使館から本国との通信が出来ないとの報告が次々と・・・。」

「有線やホットラインも?」

「はい、無線有線両方です。」

「そうなんですか・・・次。」


私は大量の報告を捌き始めた。


[数十分後]


「・・・これで全部、ですか・・・。」


はぁ・・・さすがに数十分も人の話を聞くのは疲れます・・・。

でも・・・。


「はい、・・・で。」

「何ですか?」

貴方方あなたがた国防省はどうするつもりなんですか?」


・・・随分核心を突いた質問ですね、流石は・・・。


「我々国防省は公安庁と保安庁と連携して独自に動きます、勿論・・・これは総帥の意志でもあります。」

「・・・・しかし。」

「了解しました。」


渋る首相に、そう声を上げたのは副首相の天城さんだ。この人は元軍出身で良識的です。


「天城君。」

「首相、彼らはこの緊急事態に対してはプロです。ここは彼ら国防省に任せた方がよろしいかと。」

「・・・・君が言うなら、国防省に任せ――」

「異議有り!」


説得された首相が承認しようとしたが、妨げられた。


「国際平和協力局の・・・。」

蓮這れんはうですわ、首相。」


彼女は連邦外務省国際平和協力局の局長で、長年極左議員として活躍して来た人でもあります。YFBIのウォッチリストに掲載されていて他の人は兎も角、私は苦手です。


「ごほん・・・蓮這君、理由は何かね?」

「軍国主義の復活ですわ。」


え・・・今さら?

天城さんも呆れ顔。


「首相、この人――」

「人殺しは黙ってなさい!!

首相、変更――。」


話し掛けようとした私にさらっと爆弾発言して無視されました・・・。

ちょっとスイッチ切り替えようかな?


「ちょっといい?2人共」


私は近くに居た2人の護衛に耳を貸すように声を掛けました。


「ん?」「はい?」

「ちょっとあのBBAにスイッチ切り替えて話すから、他の人達によろしくね?」

「あ、はい。」「了解しました。」


そう言い、2人は周りに声掛けを始めました。


[また十分後]


2人の声掛けが終わり、皆ニコニコしてます。あのBBAに呆れていたのでしょう。

特に天城さんや対外保安諜報部FPIの人が笑いをこらえています。

では・・・スイッチON


そして私は席を立ち、


「おいBBA。」


そう言いBBAを突き飛ばしました。


「なっ・・・人殺し・・!!」

「DA・KA・RA、私は人殺しじゃない。

てかさ、調子こくなよ?」


私は笑顔で殺気を放ちながらそう告げました。


「軍国主義? バカなんですか?

あんたさぁ・・・何に守られてんの?」

「法律!法律が全て守ってくれる。」

「はぁ?」


・・・・このBBAは本当にバカみたいです、教育が必要みたいですね・・・。


「貴女みたいな人殺しには分からないわ!!」

「それじゃーさー、」


私はホルスターからケルテック P11を取り出し、


「こうすればどうする。」


銃口を向けてそう告げました。


「くっ・・・・こうするわ!!!」


そのBBAは大口径拳銃を懐から取り出してきました。

形からして旧ソ連製のTT-33のユーゴスラビア生産品のM54、白くカラーリングされ平和LOVE♥などとスライドに彫られた何とも悪趣味な物ですね。


「戦るか、政治家能無し?」

「そっちこそ・・・戦るか・・軍人金食い虫?」


冷えた空気が吹きました・・・・ですが。

するとドアが荒く開き、2人のTシャツ男がルガー ミニ14とタウロス CT G2 カービンを持って乱入してきてしまいました。


「隙有りっ!」


私はその隙を突いて、まずBBAの目を潰し武装の白いM54をほっぽり。

そして2人のTシャツ男が持つカービンを体術で拘束した上で取り上げました。

では・・・スイッチOFF・・・。


「護衛さん。」

「はいっ?」「はっ。」

「この3人を副官権限で逮捕します、罪状は・・・。」

「殺人未遂、脅迫と不敬ですね。」


近くで見ていたユーレイン国立犯罪者センターYCC センター長がそう加えて言ってきた。


「・・・でYCCに移送して下さい。」

「はい。」「了解です。」


そう言った2人の護衛は、持っていたコルト M5 カービンを背中に掛け倒れていたバカ3人を簡易手錠タイラップで拘束した上で連行して行きました。


「さて・・・どうもすいません、なんか会議をぶち壊してしまって。」

「いえいえ、私らもあの口うるさいババアには困っていましたから。」


私がそう謝罪すると、首相がかまわないという風にそう言ってきました。


「そうですか・・・なら・・、

あ、ヘリどうしよう・・・。」


今頃護衛があのバカ3人をヘリで誤送しているはずです。


「なら、私の車で・・・。」


そんな私に、対外保安諜報部FPIの人がそう言いました。


「いやいや、私の車で・・・。」


それにユーレイン国立犯罪者センターYCCのセンター長が反論しました。

それが口火になり、会議室が賑わって来ました。

いやはや・・・。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



〔軍事国家ユーレイン連邦 総帥付参謀 佐藤・千歳 TACネーム ティファニー〕

〈ユーレイン連邦 西海岸中部 首都サガント 商業クラブ ビルジング〉


あれから私は仮設ヘリポートでニッケルと別れ、空軍のカモフ Ka-60 カサッカに乗り込み首都にある商業クラブビルジングへと向かった。

商業クラブビルジング ―― それはユーレインの工業を総括する商業クラブの拠点であり、日夜商戦が繰り広げられている場所でもある。


〈ティファニー 、いや”少佐”。そろそろ到着します。〉

「そう、・・・未だにその名で呼ばれているのね、私・・・。」


総帥付参謀になる前は陸軍に身を置いていたので、よく”少佐”と呼ばれている。


〈”少佐”は”少佐”ですよ・・・っと、到着です。〉


そんな他愛も無い会話をしていると、すぐにビルジングのヘリパッドに到着した。


「ここで待機。」

〈了解です、”少佐”〉


私はそう言うとカサッカのスライドドアを開け、外へと飛び出した。

するとアーセナル SLR-107CR を持った守衛が出迎えてくれた。


「千歳 元少佐ですね?」

「ええ。」

「こちらにどうぞ。」



〈ビルジング 3階 大会議室〉


「千歳元少佐をお連れしました。」

「どうぞ。」


そんな返答が聞こえ、守衛はその重厚な造りのドアを開け私に入る様にうながした。

中は大学の講義室のように広く、その中にはスーツのサラリーマンが100人程度着席していた。


「久しいな、千歳元少佐・・・今は参謀か。」


その中の1人 ―― 一番奥に着席していた男、元ユーレイン陸軍グリーンベレー司令官で現ユーレイン重工業YHI兼 商業クラブ会長のヘクマス・ズン元大佐がそう告げた。


「元大佐も変わりなく。」

「・・・・我々クラブの状態を見に来たのであろう?

空いている席に掛けてくれ。」


そう言われ、私はすぐそばの椅子に座った。


「で? どうなってんの、商人?」


はぁ――、と一息付きそう聞いた。


「相変わらずだな・・・・まあいい。

現在 株価リンクシステムSLSを停止して株取引をストップさせている、今頃他国にシステムはストップしてパニックしているだろう。

船舶に関しては現在全ての運行を停止させていて、確認で取れる所では3隻のユーレイン船籍が消息不明になってる。」


元大佐は私を見てそう言った。


「そう。」

「詳細な報告レポートは参謀のタブレットに上げておく。」

「分かったわ。」


戻ることにした。

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