第14話 ギルド2

左後ろから怒声が聞こえる。振り向くとボサ

ボサの髪に胸当てのみの革鎧、ボロボロの鞘

に入った剣を帯刀している男がいる。怒声を

放った人間だろう。


「チンピさん!新人相手に、絡むのは辞めて

 下さいっ!あまり人が来ない土地なのに!

 飲んでないで依頼を受けたらどうです!?

 仕事をして下さい!」


(軍隊時代に盛場でケンカになるのは慣れて

 いるが、違う世界に来てまでこうなるかね

 …まぁ成り行きによっては冒険者とやらの

 実力も測れるかな?)


「るせぇ!良い女を独り占めしやがってぇ!

 テメェみたいな黒づくめ野郎はイライラと

 むしゃくしゃすんだよ!」


(はぁー。なんだそりゃ…軽く会話して本当

 に成り行きまかせになるかな)


俺は取り敢えず、会話を試みる。


「すいませんねぇ田舎者で。ギルド利用も初

 な人間でして。面倒事は勘弁して下さい」


少し微笑んで言ってみた。


ブチッ!と聞こえてきそうな顔色で殴り掛り

ながら距離を詰めてきた。


「オラァ!」


(あぁ…不正解だったか。やりますかね)


右パンチを軽く流しながら掴み、相手に背を

見せて、1本背負いでブンッと地面に投げる。


「ブベッ!」


チンピの間抜けな声がする間に、そのまま右

手の関節を極める。


「…痛いぞ」


ボッゥギィィィ!と音と共に骨を折った。


「プッギャャャャァァァァァァ!!!」


チンピの汚い悲鳴が響く。

骨折の痛みを短時間堪能してもらったとこで

俺は治癒魔法を掛けてやる。


「あれ?痛くねー?…ドゥワ!テメー…何を

 しやがった!?」


「冷静になりましたか、先輩?」


俺は身体に赤い魔素を軽く纏わせ、チンピを

威圧した。


チンピは転がりながら起き上がり、ギルドの

入り口付近で吠えた。


「テッメッェェ覚えてやりゃまりゃぁぁ!」


呂律の回らないまま、脱兎のごとくギルドを

出て行った。


(あぁ。目立ってしまった。…ここは冷静に

 1からやっていきますアピールだな。)


ギルドのバースペースを見ると、怒り少々と

好奇の目が多数といったところだろうか…。

ナイラが急いでやって来る。


「ヒロさんすいません!トラブルに会わせて

 しまって!お怪我はないですか?」


「ええ。大丈夫ですよ。多少ヤンチャな職場

 である事は理解しました。あっ。話の途中

 でしたね。宿の紹介をお願い出来ます?」


「えっ?…ああ!そうでしたね!宿でしたら

 このギルド裏手の領地経営ピシエドホテル

 をご利用ください。とても綺麗で宿泊料金

 も凄くリーズナブルですよ」


「裏手ですね…分かりました。早速、訪ねて

 みます。仕事は明日からという事で今日は

 この辺で失礼しますね」


「わかりました。では、また明日お会いしま

 しょう…ヒロさん」


俺はナイラに軽く会釈をして、ギルドを後に

した。

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