救難信号

@maryumaru

救難信号

綺麗だ。




 今までじっくり眺めた事なかったけど、こんなに綺麗だったんだなぁ。




 特にここは、大気を汚すものが何もないから。




 余計にそう見えるんだろうなぁ。




 この光景は何度も、数えきれないくらい眺めてきた。




 けれども、綺麗だと感じた事はなかった。




 わずかな光がともるだけの真っ暗闇の夜の空は、不安感を膨らませるだけだったから。




 いつもそこに、探すべきものがないか、必死になって目を凝らしていたから。




 心配から解放された今は、とても綺麗に感じる。




 私は視覚の隅にうつる、宇宙船を見てそう思った。




 宇宙旅行の際に、遭難して、この星に救命ポッドを使ってたどりついた。




 でも、人がいなくてずっと孤独だった。




 早く故郷へ帰りたいと思っていた。




 救難信号は発信していたから、いつか人が助けにきてくれるとは思っていたけど。




 やっぱり実際に見てみると、安心感が違うな。




 私は「おーい」と叫びながら、船に向かって手を振ったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

救難信号 @maryumaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ