第21話 皇太子を燃やした罰に屑伯爵に嫁がされそうになったので『傭兵バスターズ』を立ち上げて世直しする事にしました

「ギャーーーーー」

頭の髪の毛を燃やされた皇太子の悲鳴が中庭中に響き渡った。

このまま燃やし続けてもいいんだけど、流石に殺してしまうとまずいだろう。


ドボーン

っと私は頭の上から大量の水をぶっかけてやったのだ。

役立たずの側近共と共に……


水しぶきが無くなった跡には髪の毛が燃えてほとんどなくなった濡れ鼠になった皇太子がたたずんでいた。

散々私に言いたいことを言ってくれた奴のなれの果てだと思えばいい気味だと私は思った。



でもそれからが大変だった。

騒ぎを聞きつけた騎士達や先生たちががすっ飛んできたのだ。


こういう時は女はやる事が決まっている。

「わーん、皇太子殿下に襲われそうになったんです」

私は先生たちの前で泣き崩れてやったのだ。


「な、何ですって!」

女の先生たちはきっとなって皇太子殿下を見た。


「いや、違うぞ、その女がいきなり」

「いきなり第二夫人になれと言われて、今から可愛がってやるって言われたんです」

私は何も嘘は言っていない。このぼんくら皇太子が言ったことをそのまま言ってやったのだ。


「なっ!」

「いきなり手を取られて、手を放してくださいって泣いてお願いしても放して頂けなくて」

そう言って泣いてやった。


先生たちの皇太子に対する視線がどんどん冷たくなっていく。


「いや、違う」

「違わないです。周りの皆に聞いてください。私はそう言われました」

「いや、そうではなくて……」

皇太子は必死に言い訳しようとしたが、言い訳しようとすればするだけドツボにはまってくれたのだ。

側近たちも役立たずだった。



結局、私と皇太子は自宅謹慎になった。

まあ、皇太子の頭を燃やしたのは事実だし。

すぐに生えてくるとは思うけれど、しばらくはその燃えた髪で日頃の言動を反省すればよいと私は思ってやったのだ。


でも、下手したら歴史の教科書に載るかもしれない。皇太子に襲われそうになっての頭を燃やした女として……うーん、なんかもう一つだ。

もっとも教科書にはそれ以上にいろんなことが書かれることになるのだが、この時は知らなかった。



私は家に帰っても大変だった。

今度はいきなり怒り狂った父と継母がやって来たのだ。


「キャロライン! 貴様皇太子殿下に何という事をしてくれたのだ」

「そうです。殿下はニーナの婚約者なのよ。貴方が問題を起こしてどうするのよ」

「でも、お母さま、襲ってきたのは殿下ですし」


パシーン

「ギャーーーー!」

その瞬間、私は母に頬を張られた。でも、身体強化で頬を強化した私はびくともしなかった。

代わりに張った母が手を掴んで悲鳴を上げたのだ。

下手したら指を骨折したかもしれない。


継母にはいい気味だ。


手を抑えて私を睨みつけた継母はそれ以上私には何もしようとしなかった。

何だつまらない。

今度は継母の髪の毛を燃やしてやろうと思ったのに……

でも、こういう輩はしつこいという事を私は忘れていた。



結局、この後、皇太子は学園で婦女暴行を働こうとしたという事で廃嫡、皇弟の息子のハルムントが皇太子にたてられることになるのだ。帝国にとってはあんなぼんくらよりは余程良い事になった。

私はとてもいいことをした。褒美をもらいたいくらいだ。

でも、後で、このぼんくらが将来的にこの公爵家を入り婿で継ぐことになったのは誤算だった。領民にとっては最悪の事態だ。


まあ、しかし、他人の事は後回しだ。

私は怒り狂った継母によって黒い噂のある伯爵の後妻として送り込まれようとしていたのだ。


その情報を持ってきたエイミーは怒り狂っていた。

「何ならやりますか?」

絶対にエイミーのやる事は碌でもない事だ。

まあ、継母を殺したいのは私もそうだが、殺すほどではないだろう。今は指にひびが入っているみたいだし。まあ、女の命の髪を燃やしてやってもいいかもしれないが……



まあ、ゲームでも断罪後に厭らしい老人貴族の後妻に送り込まれるというのは確かあった。

断罪ではなくて、私がぼんくら皇太子の髪を燃やしてやったんだけど、断罪後の罰はそのままついて来るらしい。面倒な事だ。


エイミーの調べたところでは、その男はサディストで、何人もの妻を殺しているそうだ。

領内のきれいな未亡人にも手を出しているらしい。きれいな人妻を見るとその旦那を殺して未亡人にして、自分の妾にもしているそうだ。本当に女の敵、いや人間の屑だ。


私は少し早いが、ここで傭兵団『バスターズ』を立ち上げようと決意したのだった。

その手始めにこのサディ伯爵を陸の消し屑に代えても良いだろう。

私はやる気満々だった。

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