第19話 巷で厄災ペアと恐れられるようになってしまいました

私は普段は私に不機嫌なお父様から、皇帝陛下から私を皇太子の婚約者にしたいと言われたと喜んで言われて、

「お断りします」

私は即決で断ったのだ。


誰が何の利点があって浮気者の皇太子の婚約者になんかならないといけないのだ。

婚約者になったがために、浮気されて挙句の果てに断罪されて殺されたりしたらたまってものではない。

当然拒絶1択なのだ。


でも、父も母も私の言ったことを理解できなかったみたいだ。

というか、反対するなんて思ってもいなかったのだ。


「キャロライン、そうか、そうしてくれるか」

「キャロライン。あなた判っているのですか。あなたはこの公爵家ではおまけなのです。そのような話はお断りして、妹のニーナに譲りなさい」

「だから私は断ると言いましたけれど」

冷めた声で私は継母に反論した。

「なんですって! あなた、ニーナに譲れないというの?」

私を睨みつける継母の勘違いに私は流石に腹がたった。


「何を聞いていらっしゃるのですか?」

私は継母を睨みつけた。

「キャロライン、あなた生意気よ」

継母は今にも私を叩きそうな勢いだ。叩いたら叩いたで燃やしてやるから良いけれど……


「私は今、お義母様が言われるように、皇太子殿下の婚約者になるのをお断りすると言ったではありませんか」

「だから……はい? キャロラインは皇太子殿下の婚約者にならない?」

「そうです。ニーナがなりたいのならばなればよいではないですか」

「ちょっと待ちなさい。キャロライン。皇帝陛下からはその方を皇太子の婚約者にと」

喜色に染まったお義母様と違ってお父様は慌てるが、


「お父様。何を仰っていらっしゃるのです。お父様もお義母様もニーナを可愛がっているのは一目瞭然です。だから、私に遠慮などせずに、その可愛いニーナを皇太子殿下の婚約者にすればいいではないですか。私のことなどどうとでもなるでしょう?」

私はそう言うと二人を見たのだ。

お義母様は満面の笑みを浮かべて、父は戸惑っていた。


「しかし、お前は……」

「そうだ。私は病弱ということで領地の館に引っ込みます。お義母様。邪魔な私は領地にいたほうがよろしいでしょう」

「そうね。そうしてもらうと嬉しいわ」

この義母は本当にわかりやすい。


「しかし、キャロライン、それではお前が」

私にはこの父のほうが私にはよく判らなかった。何を躊躇しているのだろうか?

どのみち妹を可愛がるのだから、そうするように全力を上げれば良いのだ。


「では、善は急げと申しますように、私は領地の館に参ります」

私はそう言うと部屋を出たのだ。


「お義姉さま。あなたが年が上と言うだけで、皇太子殿下の婚約者になるなんて許せないわ」

部屋を出ると今度は煩い義妹まで文句を言ってきたのだ。


「何を言っているの? ニーナ! 皇太子殿下の婚約者はあなたに決まったわ」

「えっ、本当なの?」

「ええ、だからこれ以上私を邪魔しないでね」

私はそう言うとエイミーを連れてその場を離れた。


「よろしかったのですか? お嬢様。せっかくの良縁でしたのに」

「どこが良縁なのよ。あんな浮気者の皇太子なんてどうでも良いわ。それよりも、領地に籠もってもっと魔術の訓練をしないと。そして強い傭兵団に入るんだから」

「お嬢様はぶれませんね。それが叶うとは到底思えませんけれど」

呆れたように言うエイミーの最後の言葉はよく聞き取れなかった。


それから私は領地の屋敷で大人しく過ごしたのだ。


私的に!


魔術訓練に勤しみながら……


魔術訓練では領地の空き地でたまに巨大クレーターを作ったり、裏山を一つ消滅させたりしたのは御愛嬌だ。

領地にたまたま現れた古代竜を退治したり、ダンジョンのスタンピードがたまたま機嫌の悪い私目掛けて走ってきたので消滅させたりしたのは決して目立とうとしたからではない。


エイミーと二人で登録したダーティーペアならぬ、ダークペアとして登録してダンジョンに潜ったりしていた。

その中で、私のお気に入りのワンピースを汚したドラキュラを怒りのあまり、ダンジョン諸共焼き尽くしたりして、このお気に入りの名前が厄災ペアに変わったのは、なにか解せなかった。


「なんでそんな名前になったの?」

酒場兼レストランで厄災ペアの名前が出たので、隣の出来上っていた男たちに聞いたら、

「なんでだと、普通はダンジョン攻略はラスボスをやっつけたら終わりだ。まあしばらくしたらラスボスは復活してくれるんだ。

でも、厄災ペアが訪れたダンジョンは違うんだ。奴らは、ダンジョンごと破壊し尽くすんだ。二度とそのダンジョンからお宝が取れることはない。だから、俺達冒険者は奴らが現れたら、ジーザス、クライシス、なんてこった! 厄災ペアが現れたじゃないか。このダンジョンももう終わりだ。巻き込まれる前に逃げるしかないって……」

男は喜んで話していたが、周りの者たちがさああああああっと引いたのにやっと気付いた。


「えっ、皆、どうしたんだい?」

男はキョトンとして後ろを振り向いた。


「や、や、やくさいペア!」

聞かれた男がカラカラに乾いた声で私達を見て答えたのだ。

「はああああ? 何いつているか聞こえないぞ。ふんっ、厄災ペアが現れようがどうしようが関係は……」

男は私の怒りのオーラを感じたらしい。

「えっ、姉ちゃんどうした」

男が驚いて私を見た時だ。

パシーン

私の怒りの張り手が炸裂した。


ズドン!

酒場の壁に頭から男が突っ込む。


「ヒィィィィ!」

残りの男たちは場で悲鳴をあげて盛大にコケてくれた。


その男を街諸共消滅させなかっただけ感謝してほしかった。

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そろそろ厄災女も我慢が限界

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