第百十八話 オラクル公爵家に到着です

 昼食を食べたら、いよいよみんなでオラクル公爵家に向かいます。

 でも捜査は大丈夫なのかなと思ったら、もうバンザス伯爵がやる分しか残っていないそうです。


「後はこちらに任せてくれ。随時、王都と連絡を取り合う」

「バンザス伯爵、宜しく頼む」


 実家の前ではバンザス伯爵はヘンリーさんと話もしているし、この村の捜索もほぼ終わったみたいです。

 代官邸とあの三人の実家は、未だに兵が厳重に警戒にあたっています。

 家にいるものは全員連行されたみたいだし、誰もいないそうです。


 ガチャガチャ、ガチャ!


「お待たせしました」


 お母さんが家の鍵を閉めて、出発準備完了です。

 でも、流石に全員がドラちゃんに乗れないので、僕は家族と一緒に第二便で動きます。

 なお、お母さんは挨拶の為に第一便に乗るそうです。


 シュイーン、ぴかー!


「グゴー!」

「「わあ、カッコいい!」」


 大きくなったドラちゃんに、カエラとキースは両手を上げて大興奮です。

 やっぱり、子どもにとってドラゴンは憧れの存在なんだね。

 そんな大きくなったドラちゃんに、ヘンリーさんたちとお母さんが搭乗します。


 バサッ、バサッ、バサッ。


 第一便が全員乗ったところで、ドラちゃんは空高く飛び上がりました。

 あっという間に王都に飛んで行ったので、カエラとキースはまたもや大興奮しています。

 そして、十分も経たずにドラちゃんは僕の実家の前に戻ってきました。


「じゃあこれから乗るけど、しっかりとベルトを締めてね」

「お姉ちゃんが締めてあげるね」

「「おおー、凄い凄い!」」


 ドラちゃんの背中に乗っただけで、カエラとキースはまたまた大興奮です。

 対して、お父さんはちょっとおっかなびっくりしていますね。

 サマンサお姉ちゃんも準備ができました。


「じゃあ、ドラちゃんお願いね」

「グルル!」


 ドラちゃんも任せろとひと鳴きして、一気に空高く飛び上がりました。

 そして、短時間だけどひとときの空の旅です。

 そして、着陸するとカエラとキースは楽しかったと大満足でした。

 サマンサお姉ちゃんもとても楽しそうだったけど、お父さんは顔が青くなってぶるぶると震えていました。

 というか、動けなくなっていますね……


「あなた、いい年して震えているなんてみっともないわよ」

「怖い物は怖いんだよ……」


 先に到着していたお母さんが、ひょいってお父さんを持ち上げました。

 地面に降ろしても足元がぶるぶると震えているので、僕が回復魔法をかけてようやく震えが止まりました。


「はあ、帰りはどうしようかしら。カエラ、キース、帰ったらお父さんに回復魔法をかけてあげてね」

「「わかったー!」」

「馬車で帰りたいよ……」


 お父さんの呟きが無視されたことを考えると、帰りも馬車じゃなくてドラちゃんが乗せていくことになりそうですね。

 そして、サマンサお姉ちゃん、カエラ、キースはお父さんから目の前の大きなお屋敷に興味が移っていました。


「「「凄い、大きい!」」」

「やっぱり第一印象はそうだよね。僕も、初めて見た時はとても大きいと感じたよ」


 スラちゃんもドラちゃんもうんうんと僕の意見に同意していたけど、屋敷の中はもっと凄いんだよね。

 ということで、みんなを応接室に案内します。


「「「わあ!」」」


 玄関ホールに入ったら、またもや三人は大きな歓声をあげていました。

 玄関ホールもとても大きいし、とても品の良い調度品が飾られているもんね。

 王国の貴族の中でも最上位と言われている、オラクル公爵家ならではだと思います。

 そして、応接室に入ると何故かオラクル公爵家ではない人たちが僕たちを待っていました。


「あっ、ナオにーにお帰り!」

「りー!」


 なんと、マリアさんとアーサーちゃんにエドガーちゃん、それにシャーロットさんまでいました。

 もしかしたら、僕たちがオラクル公爵家に向かうと王城に連絡がいったのかもしれないですね。

 それに、レガリアさんとガイルさん、セードルフちゃんもいます。


「えっと、まず僕がお世話になっているオラクル公爵のレガリアさん、ガイルさん、セードルフちゃんです。イザベルさんと赤ちゃんのルルティアちゃんもいるけど、今は赤ちゃんの部屋にいます」


 最初にオラクル公爵家の人たちを紹介していいと言われたので、僕の家族に紹介します。

 お母さんは、既にレガリアさんと会ったそうです。

 すると、お父さんとお母さんが立ち上がって頭を下げました。


「ナオが大変お世話になっております。皆さまのお陰で、こうして無事に再会することができました」

「本当に感謝しかありません。ナオの親として、皆さまにお礼を申し上げます」

「いえいえ、こちらこそナオ君にはとてもお世話になっていますわ。今後とも、宜しくお願いします」


 レガリアさんが代表して返事をしたけど、緊張しているお父さんはともかくとしてお母さんはにこやかに話をしていました。

 それでは、次に王家の紹介ですね。


「えっと、王太后様のシャーロットさんです。王太子妃のマリアさんと、次の次の王様のアーサーちゃん、弟のエドガーちゃんです」

「こんにちはー」

「ちわー」

「「「えっ、えっ?」」」


 うん、お父さんはともかくとしてあのお母さんも流石に驚いていますね。

 サマンサお姉ちゃんも驚いているけど、子どもたちは元気よく挨拶しています。

 すると、今度はシャーロットさんが立ち上がってお父さんとお母さんに頭を下げました。


「私は、ナオ君とスラちゃんに治療してもらって命を救ってもらいました。その後も、いつも私を気にかけてくれていますわ。ナオ君と会うことが出来て、ご両親には本当に感謝しております」

「いえ、ナオは治癒師としてできることをしただけですので」

「ナオは人を見捨てられないところがありますので。王太后様、頭を上げてくださいませ」


 お父さんだけでなくお母さんもワタワタしちゃったけど、それでもシャーロットさんはニコニコとしていました。

 前に言っていた、お父さんとお母さんは下心を持って王家に近づく人ではないって思っているのでしょうね。

 マリアさんも、ヘンリーさんたちもそのことに気がついてホッとしていました。


「ねーねー、ナオにーにのおねーちゃんなの?」

「ええ、そうよ。いつもナオと一緒にいてくれてありがとうね」

「どーいたしましてー」


 そして、セードルフちゃんはいつの間にかサマンサお姉ちゃんに抱っこされていました。

 アーサーちゃんとエドガーちゃんも、カエラとキースとドラちゃんと何かお喋りしています。

 子どもは、あっという間に仲良くなりますね。

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