第六十話 沢山のお金をどうしようかな?

 今日予定していた王都近隣の森の浄化作業が中止になったので、一日フリーになりました。

 とはいえドラちゃんが完調じゃないので、気にして過ごすことにします。


「ハグハグハグ」

「おー、たべてる!」


 今日もドラちゃんは食欲旺盛で、お皿の上に置かれたお肉を美味しそうに食べています。

 この分なら、直ぐに力を取り戻せそうですね。


「ほら、セードルフもドラちゃんに負けないように食べないとね」

「はーい」


 セードルフちゃんも、イザベルさんに指摘されて一生懸命にご飯を食べています。

 因みに、スラちゃんとリーフちゃんは一足先に食事を終えています。

 そんな食事風景を見て、ナンシーさんが気になった事を話しました。


「ナオ君、ドラちゃんの従魔登録だけどもう少し待ってだって。例の馬鹿の件が落ち着いてから、冒険者ギルドに連れて行った方が良いそうよ」

「確かに、ドラちゃんはスラちゃんが保護した状態ですもんね」

「そういう事よ。判決はそう時間かからずに出ると思うから、直ぐに一緒に冒険に行けるわ」


 ハイラーン伯爵家が起こしたのは、王太后のシャーロットさんの殺人未遂です。

 王国でも過去に例がない大罪で、既に関係者はあっさりと自供したそうです。

 詳しい自供した内容は、後日教えて貰うことになっています。

 そして、ナンシーさんは別の事も教えてくれました。


「それから、シャーロット様を治療した報酬が確定したから冒険者ギルドに取りに来てって聞いたわ。ハイラーン伯爵が関与した分については、後日報奨金として渡すことになったそうよ」

「えっ、報酬じゃなくて報奨金ですか?」

「そうよ。既に勲章を貰うことは確定しているから、その場で渡すんだって」


 な、何だかどんどんと話が大きくなってきて、ちょっと不安になってきちゃった。

 ただ、レガリアさんもイザベルさんも何も問題ないって言っているから大丈夫ですね。

 ということで、僕はナンシーさんと一緒に冒険者ギルドに行くことになりました。


「行ってくるね」

「いってらっしゃーい!」

「キュー!」


 冒険者ギルドに向かう僕たちを、セードルフちゃんとリーフちゃん、そしてドラちゃんと背中に乗っているスラちゃんが見送っています。

 実は最初はスラちゃんも僕と一緒に行こうとしたんだけど、ドラちゃんが不安そうにキューキューと鳴いたのでスラちゃんは屋敷に残る事になりました。

 ドラちゃんも、まだ心が不安定なんだね。

 スラちゃんは、当面ドラちゃんに付きっきりで面倒をみるそうです。


「ドラちゃんもあいつに随分と酷い扱いを受けていたから、当分は気をつけて見てあげないと。それにしても、ムーランドは本当に最低な男ね」


 馬車の中でも、ナンシーさんはぷりぷりとしていました。

 ムーランドはエミリーさんにもしつこく言いよっていたし、更にシャーロットさんの件もあるので僕もぷんぷんです。

 でも、もうムーランドは捕まってるし、後は偉い人にお任せですね。

 そして、冒険者ギルドに着くとギルドマスターが僕達に会いたいって事で個室に呼ばれました。


「今まで忙しくて中々会えなかったが、改めてナオに謝罪しないとならない。三人の対応が後手にまわって済まなかった」


 個室に入ると既にギルドマスターが待っていて、僕に頭を下げてきました。

 いきなりのことで僕はわたわたしちゃったけど、何とかギルドマスターに頭を上げて貰いました。


「冒険者ギルドも中々お固い組織になってな、今回の件を受けて初動をもっと迅速にできるようにと組織と制度改正をしている」

「上に立つ人って、本当に大変なんですね」

「まあ、これが仕事だからな。因みに、あの三人は永久追放だ。たとえ刑期を終えたとしても、冒険者ギルドに関することは一切関わることができない」


 ギルドマスターは淡々と僕に話したけど、今回の事件を受けて色々と大変なことがあったんだ。

 王家主催の炊き出しでの事件だから、多方面に影響が出ていますね。


 コンコン。


「失礼します。報酬のご用意ができました」


 ここで、受付のお姉さんが僕の報酬を持ってきたけど、かなり重そうな革袋の気がしているよ。

 わお、テーブルに置かれたらドサッって音がしたよ。

 しかも、スラちゃんの分と二つに分かれているのにだよ。

 ギルドマスターが良いよって言ったので恐る恐る革袋の中を覗いたら、見たことのない量のお金が入っていた。


「えっと、この金額は合っていますか?」

「間違いないだろう。宮廷医でも治せなかった王太后殿下を完治させたんだ、このくらいは当たり前だな」

「私も妥当だと思うよ。陛下のお小遣いからだと思うけど、自分の母親の治療をしたのだから相当の金額は出すわ。要は、王太后殿下と平民では同じ治療をしても報酬は違うのよ」


 あっさりと二人に肯定されちゃったので、僕は何も言い返せません。

 とりあえず受け取りのサインをしたけど、これだけの金額は僕には大きすぎるよ。

 あっ、そうだ。

 この方法は駄目かな?


「ギルドマスター、その、実家に仕送りすることは可能ですか?」

「送金金額の上限は決まっているが、仕送りは可能だ。ナオの両親は冒険者だし、手続きも通常より簡単だ」


 送金先の情報が直ぐに分かるから、手続きをしてくれました。

 うーん、お父さんに送るよりもお母さんに送った方が確実かも。

 あと、実家に手紙は送れるかな?

 すると、ギルドマスターが止めたほうがいいと言ってきた。


「あの三人の件がある。ナオからじゃなくて、俺から手紙を出そう。取り急ぎ、元気でやっていると伝えよう」

「あっ、そっか。実家の情報も聞くって、ヘンリーさんが言っていました」

「その件は俺も聞いているし、何よりも大逆罪案件だ。普通は、実家の情報も集める」


 ここは、ギルドマスターに色々とお願いする事になりました。

 そして、送金は分けたほうが良いと言ったので、お父さんに四割でお母さんに六割送ります。

 毎月送る事になったので、当分の仕送り代金を冒険者ギルドに預けました。


「しかし、八歳なのに実家に仕送りとは。ナオもやるなあ」

「ナオ君はとても優しいし、実家の事を常に気にしていたもんね。良いことだと思うわ」


 何故か二人に滅茶苦茶褒められたけど、お金の件は無事に解決しました。

 これからもお金が貯まるかと思うけど、貯金して無駄遣いしないようにしないと。

 もちろん、スラちゃんの分は屋敷に戻って渡してあげました。

 スラちゃんも沢山のお金が手元に集まったので、どうしようかと悩んでいました。

 当分は、アイテムボックスに貯めておくしかないですね。

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