第三十九話 教会で奉仕作業を行う日の朝
今日も、普通に朝早く起きちゃいました。
うーんと背伸びをして、ベッドからソファーに移動します。
スラちゃんも起きたみたいで、もぞもぞとしてから僕の腕の中にぴょーんと飛んできました。
じゃあ、今日も頑張って魔法の訓練をしようっと。
「ナオ君、今日は冒険者服じゃなくて王城に行った時の服を着てね」
朝食の際に、僕にイザベルさんが話しかけてきました。
うーん、何で冒険者服じゃないのかな?
その疑問は、レガリアさんが教えてくれました。
「今日は冒険者としての依頼じゃなくて、王族の福祉活動を手伝うことになるのよ。ナンシーも、今日は騎士服じゃなくてドレスを着ていくわ」
「分かりました。念の為に、冒険者服もアイテムボックスに入れておきます」
「そうね、その方が良いわ。ナンシーも、魔法袋に冒険者活動に必要なもの一式を持っていくわ」
ということで、僕も朝食を食べたらこの前王城に行った時に着ていた青い服に着替えます。
朝食時は眠そうにパンを食べていたナンシーさんも、出かける時は貴族令嬢らしい赤のドレスを身にまとっていました。
では、馬車に乗って王城に向かいます。
といっても、屋敷から王城までとっても近いのであっという間に到着です。
既に王城の玄関には、大教会に行く面々がスタンバイしていました。
僕が馬車から降りると、元気よく駆け出してくる小さな二つの影がありました。
「ナオにーに!」
「あー!」
ギューって僕に抱きついてきたのは、他ならぬアーサーちゃんとエドガーちゃんです。
僕もスラちゃんもギュッと抱き返すけど、今日も元気いっぱいですね。
「ふふ、とても嬉しそうだわね」
「ええ、朝から待ち遠しいって感じでソワソワしていましたわ」
「良いわね、本当に仲が良いわね」
「ナオは悪意が全く無いから、純粋無垢な二人が懐いたのでしょうね」
同行する王妃様、マリアさん、シンシアさん、エミリーさんも、僕に抱きつく二人を微笑ましく見ていました。
ちなみに、皆さんも王族らしいとても綺麗なドレスを着ています。
アーサーちゃんとエドガーちゃんも、カッコいい服を着ていますね。
さっそく出発ですけど、警備の関係でアーサーちゃんとエドガーちゃんは泣く泣く王家の馬車に乗ります。
僕と一緒にいられない代わりに、スラちゃんが二人と一緒に王家の馬車に乗っています。
護衛の近衛騎士や騎馬隊もスタンバイできたので、僕たちは大教会へ出発します。
パカパカパカ。
「ナンシーさん、今日は炊き出しや無料治療がメインですか?」
「後は、教会内を清掃したり、説法のサポートをしたりもするわ。有力貴族の令嬢も来るから、手分けして行うのよ」
大教会に行く道中でナンシーさんに色々なことを教えて貰ったけど、思ったよりも沢山のことをするんですね。
僕とスラちゃんは治療がメインになるから、沢山の人を治療できるようにしようっと。
そして、僕たちを乗せた馬車は大教会に到着しました。
見た感じ、僕たちが一番乗りですね。
馬車の教会側の方に降りると、昨日と同様にシンシアさんのお父さんが僕たちを出迎えてくれました。
「皆さま、朝早くからお集まり頂き教会を代表して感謝申し上げます。教皇猊下は朝のミサの準備をしておりまして、私が皆さまをお迎えに参りました」
「こちらこそ、わざわざ出迎えて頂き感謝します。本日は、どうぞ宜しくお願いします」
王妃様が代表して挨拶をして、シンシアさんのお父さんと握手をします。
そういえば、昨日教会の治療施設で治療した時は、教皇猊下とは会っていないんだよね。
一体、どんな人なんだろうな?
「じゃあ、私は教皇猊下に挨拶しに行くわ。マリア、アーサー、エドガーも一緒にいらっしゃい」
「畏まりました、お義母様」
「じゃあ、ナオにーに、後でね!」
「あー」
マリアさんは王太子妃で、アーサーちゃんとエドガーちゃんは王太子の息子です。
シンシアさんも、お父さんと一緒に大教会内に入って行きました。
スラちゃんも、アーサーちゃんに抱かれたまま一緒ですね。
ある意味、護衛の役割をしているのかもしれません。
「じゃあ、私たちは炊き出しと無料治療を行うところに顔を出しますか」
「そうですわね。シスターに挨拶をしませんと」
僕と一緒に大教会前に残ったナンシーさんとエミリーさんは、教会前で準備中の現場を見に行くことになりました。
多くのシスターさんや男性聖職者が忙しそうに会場準備をしていて、既に野菜とかを切ったりとかもしていました。
「皆さま、おはようございます。本日は宜しくお願いします」
「朝早くから準備して頂き、感謝します」
おおー、ナンシーさんとエミリーさんがとても綺麗な淑女の礼をしているよ。
僕も、ペコリと頭を下げました。
準備をしていた人たちも、僕に挨拶を返しています。
そして周囲を見渡すと、既にチラホラと人が集まっていました。
きっと、炊き出しや無料治療の一番乗りを狙っているのかな?
そんなことを思っていた時でした。
「キャー!」
急にシスターの一人が、甲高い悲鳴を上げました。
他の人たちも、「えっ」という表情をしています。
なんだろうなと思って、僕たちもシスターの見ている方向に振り返りました。
「ナオーーー! テメーーー!」
建物の陰から、物凄い勢いで走ってくる若者がいました。
茶髪の短髪ってことは、もしかして!
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