第二十三話 追い詰められていく三人

「ちくしょう、なんでうまくいかないんだ!」

「あいつを追い出してから、全く上手くいかねえぞ!」

「どうするんだよ。もう、手元に金がねえぞ」


 一方で、ナオをパーティから追い出した三人は、かなりの窮地に追い込まれていた。

 ナオの予想通りあの冒険者ギルドでの騒ぎの時点で三人の手元には殆ど金がなく、ナオから奪い取った金もわずか三日で殆ど使いきっていた。

 身の丈に合わない宿に泊まり、酒を浴びるほど飲んでいれば結果はおのずと見えてくる。

 しかも、彼らはまだ未成年で本来なら飲酒はできない。

 しかし、そんなものは彼らには関係なかった。

 地元の有力者の子どもとして、今まで好き勝手やってきた。

 誰もが親の権力を恐れて、好き勝手する三人に注意しなかった。

 注意するものは、あの小さな男の子のみだった。

 とはいっても、三人がナオの注意を聞き入れるはずもなかった。

 今も、何とか泊まれた宿の部屋で責任をナオに押しつけながら愚痴をこぼしていた。


「しかも、何で俺たちだけ前金を取るんだよ」

「宿じゃなく飲食店もだぞ。明らかにおかしいぞ」

「何がどうなっているんだよ! これじゃあ、あいつにツケをつけられないぞ」


 三人は頭が良くなかったが、流石に自分たちだけ様々な店で前金を取られていた事に気がついた。

 しかし、なぜ前金を取られているかまで自分で発言しているのに気がついていなかった。

 宿屋組合の会長が流した情報が一気に広まり、食堂だけでなく他の店も三人が買い物をする時に前金を取っていた。

 どの店も、料金を踏み倒される事を警戒したからだ。

 白銀の髪の持ち主であるナオの存在によって、この大きな王都で三人の悪行が広まっているのもその一因だった。

 当初の目算通りナオにツケをつける事は防がれていて、その事が三人の手持ちの金が減った原因にもなった。

 そして、冒険者として一番大事な事も上手くいっていなかった。


「どうすんだよ。今日も依頼失敗だぞ」

「流石に、明日は失敗できないぞ」

「簡単で割りの良いものなんてないからな」


 昨日は雑草を納品し、今日は魔物討伐で肝心の魔物を見つける事ができなかった。

 冒険者としての収入が無くなったので、流石に三人も焦っている。

 しかし、薬草採取も魔物討伐も今まで全部ナオに丸投げしていた。

 なので、どうやって薬草や魔物を見つければ良いのか分からなかった。

 荷物運びなどの肉体労働などもあるが、三人はその選択を選ばなかった。

 というか、ダサい仕事だと思って選ぼうともしなかった。

 そんな三人を追い詰めるある事が、ギルドマスターから言い渡されていた。

 それは、今朝冒険者ギルドで騒いだ際に受付に駆けつけたギルドマスターが怒鳴った事だ。


「明後日、朝イチで冒険者ギルドに来いってよ」

「もしかしたら、俺たちに特別な依頼を頼むのかもな」

「あいつが勇者パーティに入ったんだ、俺たちならもっと凄い依頼が来るかもな」


 三人は部屋に持ち込んだ酒を口にしながら、ありもしない妄想に笑みをこぼしていた。

 もちろんギルドマスターはそんな大それた依頼を三人に頼むはずもなく、逆に冒険者としてはあってはいけない事だ。

 しかも、三人はギルドマスターから怒鳴られたのに自分に良いように頭の中で変換していた。

 しかし、三人はそんなことを知る由もなく夜更けまで誇大な妄想を語り合っていた。

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