第七話 オラクル公爵家に到着

 宿のお金の問題は取り敢えず解決したけど、今夜僕とスラちゃんが泊まる場所はどうしようか。

 お金もないし、どこかで野宿をするしかないのかな。

 そう思っていたら、ヘンリーさんが明日の事を話してくれました。


「ナオ君、明日は近隣の村に移動して調査を行う事になっている。悪いが付き合ってくれ」

「頑張ります!」

「ふふ、そんなに意気込まなくても大丈夫だよ」


 僕が勇者パーティに入って、初めてのお仕事です。

 僕とスラちゃんがふんすって拳を握って気合を入れたら、ヘンリーさんが思わず苦笑しちゃったよ。

 そして、今夜どこに泊まるかという問題もあっさりと解決しちゃいました。


「ナンシー、ナオ君を屋敷に泊めてやってくれないか?」

「もちろんだよ! ふふふ、ナオ君の事をぎゅっとしながら一緒に寝ちゃおうかな? 凄く楽しみだわ」


 な、何だかナンシーさんが不穏な事を言っているけど、きっと大丈夫だよね?

 という事で、今夜はナンシーさんの屋敷に泊まることになりました。


「ナンシー、とても羨ましい……」


 シンシアさんがジト目でナンシーさんの事を見ているけど、僕だって流石に王城に泊まるのは無理ですよ。

 何にせよ、この後の対応が決まったので今日は帰ることになりした。

 あっ、そうだ、お礼を言わないと。


「おばちゃん、会長さん、色々とありがとうございます」

「いいのよ。また近くに来たら顔を出してね」

「頑張るのだぞ。何かあったら、遠慮なく相談するんだぞ」


 僕とスラちゃんは、手を振りながら宿を出ました。

 宿のおばちゃんと宿組合の会長さんにも、また会いたいな。

 そして、貴族街に向かって歩き出しました。


「今日は、僕が思ってる以上に多くの人に助けられました」

「元からナオ君はとても礼儀正しいし優しいから、冒険者も何とかしたかったんだよ」

「見た目も髪色もとっても可愛いし、女性冒険者はナオ君をかまいたくて仕方なかったんだよ。最初は、馬鹿な三人のところに美少女がいるって噂になったのよ」


 なんと言ってもヘンリーさんに助けられたし、僕の両側にいるシンシアさんとナンシーさんにもとっても助けられました。

 色々なものを失っちゃったけど、その分得たものも沢山ありますね。

 みんなでお喋りをしながら歩いていき、ナンシーさんの屋敷に到着です。


「す、凄い。こんなに大きいお屋敷だなんて。しかも、王城の直ぐ側です」

「歴史だけは古いからね。王城に近いから、よく遊びに行っていたんだよ」


 言葉の比喩じゃなくて、本当にドーンと大きな柵に囲まれて大きなお庭がある屋敷でした。

 ナンシーさんが頬をポリポリとしながら話していたけど、王城とも目と鼻の先です。

 勇者パーティの人々は、とんでもない人たちだと改めて思いました。


「じゃあ、私はこれで失礼するよ」

「ナンシー、ナオ君、また明日ね」

「またね!」

「今日は色々とありがとうございました」


 ヘンリーさんとシンシアさんと別れて、僕とスラちゃんはナンシーさんの後をついていきながら屋敷に入りました。

 うん、門から屋敷までとっても距離がありますね。

 ようやく玄関にたどり着いたけど、玄関だけで僕の実家がスッポリ入りそうなくらいだよ。

 綺麗な石造りの屋敷で、とても品の良い彫刻も飾られています。

 庭にも植物が沢山植えられていて、沢山のお花が咲いていました。


 ガチャ。


「ただいまー。ナオ君連れてきたよ」


 そして屋敷の中に入ったけど、これまた凄いよ。

 天井もとっても高くて、シャンデリアからキラキラと光が降り注いでいたよ。

 赤色の絨毯が建物の奥まで敷かれていて、ところどころに大きなつぼや鎧に絵が飾られていました。

 ナンシーさんが玄関から声をかけると、メイド服を着た使用人がやってきました。

 とてもできる人って感じの動きです。

 僕もスラちゃんも、ポケーってしちゃいました。

 うん、別世界に来たってこういう事をいうんだね。


「お嬢様、お帰りなさいませ。ナオ様を、応接室にお連れします」

「宜しくね。私も着替えたら直ぐに行くよ」


 ナンシーさんは自室に向かっていき、僕とスラちゃんは使用人の後をついて応接室に案内されました。

 廊下を歩くだけでも、すごい緊張するよ。


 ガチャ。


「こちらが応接室になります。ナオ様、どうぞソファーにお座り下さいませ」

「はっ、はい」

「紅茶をお持ちしますので、少々お待ち下さい」


 僕は、使用人に言われるがままにソファーに座りました。

 な、なにこれ!

 ソファーに座ったら、僕の体が沈んだよ。

 とってもふわふわのソファーで、凄くビックリしちゃった。

 スラちゃんも僕の肩から降りてきて、ソファーの柔らかさにビックリしていました。


「紅茶をお持ちしました。熱いのでお気をつけ下さい」

「はっ、はい。ありがとうございます」

「それでは、少々お待ち下さいませ」


 僕の目の前にとても高価だと思われるティーセットが置かれて、紅茶の湯気が立っていました。

 せ、せっかくだから飲んでみようっと。

 わあ、とっても美味しいよ。

 今まで何回か紅茶を飲んだ機会があったけど、比べ物にならないくらい美味しい。

 紅茶って、こんなに美味しいんだね。

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