第二話 保護された少年と勇者パーティの自己紹介

 バタン。


 僕は何が何だか分からないまま、勇者様に抱っこされながら冒険者ギルドの個室に入りました。

 僕の腕の中にいるスライムのスラちゃんも、周りをキョロキョロと見回していた。

 そして僕とスラちゃんは、個室にあるソファーに優しく降ろされました。


「よいしょっと。ナオ君、いきなり抱き上げて済まなかったね」

「い、いえ……」

「しかし、ナオ君は体も細いし軽すぎだ。後で、その辺も聞かせてくれ」


 勇者様は、ソファーに座った僕にニコリと笑みを浮かべながら優しく頭を撫でてくれました。

 勇者様スマイル全開って感じですね。

 そして勇者様とお付きの二人の女性は、僕と反対側のソファーに座りました。

 僕の隣には、ギルドマスターがドカリと座ります。

 あっ、ギルドマスターに謝らないと。


「ギルドマスター、冒険者ギルド内で騒いじゃってごめんなさい。皆さんに迷惑をかけちゃいました」

「ああ、気にすることはねえ。騒いだのは、あの三人だからな。処罰するなら、ナオじゃねえって事よ」


 ギルドマスターはそういうと、ペコリと頭を下げた僕とスラちゃんの頭をガシガシと撫でてきました。

 うん、ギルドマスターは見た目に違わずとても豪快ですね。

 勇者様達もちょっと笑っているけど、お陰で落ち込んでいた気持ちがちょっと持ち直したよ。

 スラちゃんも、元気にふるふるとしています。


「取り敢えず、お互い自己紹介だな。俺はお前らの名前を知っているが、お互いちゃんとした名前を知らないからな」


 ギルドマスターが少し真面目な顔をして話をしたけど、さっき勇者様は僕の名前を話したんだよね。

 でもスラちゃんの事も紹介しないとと思い、僕から自己紹介を始めました。


「えっと、僕はナオと言います。王都の隣にあるバンザス伯爵領から来ました。年は八歳で、えっと、治癒師です。このスライムは、スラちゃんです」


 僕がスラちゃんを抱いたままペコリと頭を下げたら、目の前に座っている二人の女性が何か変な声をあげちゃった。

 慌てて顔を上げたら、何でもないって表情をしていたので敢えて何も聞きません。

 勇者様は、二人の女性を見てしょうがないなあって表情をしていました。


「それでは、こちらも自己紹介をしないとならないな。私はヘンリー、ヘンリー・ガルフォードだ。今年十八になり一応第二王子だが、それはついでに覚えてくれ」


 ゆ、勇者様は実はこの国の王子様ではないかとうわさ話があったけど、本当に王子様だったんだ。

 またもやニコリと輝くばかりの勇者様スマイルを見せているけど、僕は衝撃的な事実にかなり驚いちゃった。


「では、次は私ね。シンシア・ガルフォード、ヘンリーの嫁よ。ナオ君、シンシアって呼んで頂戴ね」


 青髪のロングヘアでとっても美人さんのシンシア様は、何と勇者様の奥さんなんだ。

 とても豪華な杖を持っていて豪華な薄い緑のドレスの上に立派なローブを羽織っているから、間違いなく魔法使いなんだ。

 あと、シンシア様はとてもお胸が大きいです。


「じゃあ、最後に私ね。ナンシーよ、ナンシー・オラクルが正式名だけど、ナンシーって呼んでね。十四になって、一応第三王子様の婚約者って事になっているわ」


 とても活発で明るそうなナンシー様は、真っ赤な髪をポニーテールにしていて騎士服にライトプレートを身に着けていました。

 因みに髪色と同じ赤いミニスカートを履いていたけど、黒のスパッツで完全ガードしています。


「えっと、ヘンリー様、シンシア様、ナンシー様、宜しくお願いします」

「うーん、ちょっと固いなあ。ナオ君、様はいらないよ」


 えっ、えっと。

 僕が三人の名前を呼んだら、ヘンリー様が勇者様スマイルのまま駄目出しをしてきたよ。

 じゃ、じゃあ、これで良いのか?


「へ、ヘンリーさん、シンシアさん、ナンシーさん、で、良いですか?」

「今はこれで良いよ。改めて話したばっかりだからね」

「私としては、ナオ君に『お姉ちゃん』って呼んで欲しいなって思ったわ」

「あっ、それ私も分かります。ナオ君に、可愛く『お姉ちゃん』って言って欲しいです」


 女性二人が何故かとても盛り上がっているけど、流石に「お姉ちゃん」はとてもハードルが高いです。

 お二人の期待には応えられないけど、「さん」でもかなりドキドキしていますよ。

 そして、ヘンリーさんは女性陣のやりとりを聞いて少し苦笑した後、僕に鋭い質問をしてきました。


「ナオ君は治癒師って言ったけど、本当はもっと魔法が使えるはずだよね?」


 勇者様スマイルのまま、厳しい質問を投げかけてくるのは反則です。

 僕は、思わず答えに詰まっちゃいました。

 すると、ヘンリーさんが僕の様子を見て慌てて言葉を続けました。


「あっ、別にこの件でナオ君を罰するとかは一切ない。話したくなければ、話さなくても良い」


 ヘンリーさんがそこまで言ってくれているので、きちんと話さないとと思い僕も意を決しました。

 スラちゃんの事も説明しよう。


「えっと、僕は多分ですけど全属性の魔法が使えます。簡単に確認した事があるので。でも、得意としているのは回復魔法です。あと、スラちゃんも全属性の魔法が使えます」

「ぜ、全属性……」


 僕の話を聞いたヘンリー様が、思わず信じられないと絶句してました。

 僕が全属性の魔法が使えるとは、全く思っていなかったみたいですね。

 シンシアさんとナンシーさんも、かなりビックリした表情を見せていました。

 僕の隣にいるギルドマスターは、とても真面目な表情で僕を見ていました。

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