キミの知らない物語

河端夕タ

プロローグ

星に願いを

 校舎の屋上にひとり、夜空を見上げて寝ころがる。


 満天の星空から数えきれないスポットライトが、降りそそいでいる。


 キレイ。私だけで見るのが、もったいないくらい。


「あっ!」


 すぃ、と、流れ星が横切った。指をさして、軌跡を追う。


 もうひとつ流れ星が、すぃ。それから、追いかけるみたいにいくつもの星が夜空を走っていく。


「流れ星が消えるまでに願い事を3回唱えたら、願いが叶う……」


 胸の前で両手を結んで、考える。願い事かぁ、なんだろう……


 なんて、考えているうちに流れ星はいなくなってしまった。あんなにたくさんあったのに。


 ……こういうところが、運が悪いっていうか、もってないんだよね。私って。


『つくね』


 左手首で声がする。腕時計の画面がチカチカ光っていた。


 心配性のお姉ちゃんから、電話だ。


『そろそろ部屋にもどりなさい。明日も授業があるんだから、夜更かしはダメ』


「はぁい。すぐいくよ」


 立ちあがり、最後にもう一度だけ空を見あげる。

 

 流れ星はないけれど、私は星空に言ってみた。


「いっしょに星を見てくれる、運命の人ができますように」

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