ボクにも作れた……女の子を【ヘルマプロディトス】〔両性具有〕にしちゃった件♫

楠本恵士

第1話・やっぱりマッドサイエンティストはロクなコトを考えない

 女子高校生の足崎 愛夢あしざき あいむは、実験室のような機器や器具が並べられた場所のベットの上で目覚めた。


 上体を起こして、自分が何も着ていない全裸なのを確認した愛夢の視線は、股間の一点に注がれる。

 視線の先には、本来なら女性の体にはあるはずの無い、黒茶色に黒光りした〝ある器官があった〟

「なんで……女のあたしの体にこんなモノが? ここどこ?」


 畳部屋のドアが開いて、白衣コート姿の男子生徒が現れた。

 見覚えがある顔の男子生徒が言った。

「起きた愛夢? お腹空いていない? 下の食堂に夕食用意してあるから」

 足崎 愛夢の顔が引き攣る。


「あんたは、同じクラスメイトで。マッドサイエンティストな家族の。怪しい科学部部長の松戸才演まつどさいえん!」

「説明的なセリフをありがとう」

 愛夢が震える指先で、股間のピクピク動いているモノを指差す。

「あんたの仕業ね……クラスメイトのあたしの体を、実験材料にしてくれたわね」

「実験材料は酷いな……素材として使わせてもらっただけだから」


 愛夢が怒りの形相で、起こしていた上体から仰臥すると裸のまま怒鳴った。

「いますぐ、元にもどせ! あたしの体から、この不気味なモノを取り除け!」


「まぁ、落ち着いて……ボクからの【ヘルマプロディトス】的なプレゼントだと思えば……クラスメイトの女子の中で、服の上から観察してソレを付けたら。バランスがいい胸の女子は愛夢しかいなかったからさ」

「なにをワケのわからないコトを! 【ヘルマプロディトス】ってナニよ! 古代生物?」


 愛夢が裸で仰向けになって怒鳴っていると、ドアを開けて別学校の制服を着た女子生徒が部屋に入ってきて言った。

「あっ、やっぱり怒鳴り声が階段の下で聞こえたから、そうじゃないかと思ったんだけれど……愛夢ちゃんのオ●ン●ン、完成したんだ」


 女子生徒は壁のハンガーに掛けてあった、白衣コートを制服の上から羽織ると、裸で仰向けになっている。

 愛夢に近づき、股間の浅黒い男のシンボルを観察した。

「へぇ~、サブシンボルもちゃんとある」

 女子生徒は、いきなり愛夢の両足をガバっと拡げて、股間の中央を覗き込む。

 同性から変なコトをされて、動揺して赤面する愛夢。

「な、な、な、な」

「ちゃんと、女のシンボルも残っているね……愛夢ちゃんの乳房の形も完璧だし、理想的な【ヘルマプロディトス】が完成したね」


 愛夢は、部屋に入って来た変態女子生徒の顔を凝視しながら言った。

「あなたは、陸上部のエースで、いつの間にか転校していった銀子?」

「説明的なセリフありがとう……その銀子は、あたしじゃないよ。オリジナル銀子だから、あたしは才演が、AIと生体3Dプリンターの力で作ってくれた、クローン人間の銀子」


 愛夢の頬がヒクヒクと引き攣る。

「クローン人間……変態! 松戸家の人間は全員異常よ!」


 才演が咳払いをしてから言った。

「紹介しよう、彼女はボクが作った嫁の『銀子・MARK―2』だ……呼びにくかったら『銀子2号』でもいいよ」


 銀子2号が才演の腕にしがみついて、イチャイチャとキスをして言った。

「ダーリン、大好き。でも赤ちゃんを作るのは二人が学校を卒業してからね……才演のお父さんと、お母さんに早く孫の顔が見せられるといいね」


 イチャイチャしている銀子2号を見て、愛夢は洗脳されている……と、思った。


 ふたたび、ベットで上体起こした愛夢は勇気を出して。たくましい男のシンボルをつかんで言った。

「そろそろ、状況を説明してくれない……なんで、あたしの体がこんなコトになっているのか、そもそもさっきから会話の中に出てくる【ヘルマプロディトス】ってナニ? 確か一人で学校から帰ってきた時に、背後から急に口と鼻を湿ったガーゼみたいなモノを押し当てられて、意識が途切れたんだけれど」


 才演が腕組みをして考える。

「質問が複合している……【ヘルマプロディトス】がなんなのかって質問と、湿ったガーゼを鼻と口に押し当てられたって質問と、どちらの質問を先に答えてもらいたい?」

「じゃあ、学校帰りに拉致された時の薬物に関する質問を先に」

 愛夢は口や鼻を押さえただけで意識を奪えるほど強烈な麻酔薬物は、存在しないコトを知っていた。

「さすが、科学に強い愛夢……そこに気づいたか、確かにそんな都合がいい薬物なんてないよ」

「じゃあ、あの湿ったガーゼなに?」

「松戸家特製、拉致用吸引麻酔薬……副作用も皆無」

「はぁっ?」


「マッドサイエンティストの家系としては、なければ作ればいいと……世界中のマッドサイエンティストに販売して収益を得ている、中には箱買いするマッドサイエンティストも」


「精神異常者集団! そんな限定目的の違法薬物作って売るな! で【ヘルマプロディトス】って?」


 今度は銀子2号が説明する。

「ギリシア神話に登場する、男女両性をそなえた少年神だよ。父親はヘルメスで母親はアフロディテの間に生まれた男の子だけど、泉のニンフが強制融合してきて男と女の両方の特徴をそなえた両性具有の神になった……美術では乳房のある少年・男根をそなえた女性として表現されるみたいだよ」


 銀子2号の説明を聞いた愛夢が拳を握り締めて、ワナワナと震える。

「で……そんな神話の存在を、あたしの体を使って再現したと……性転換の外科手術でもしたの」

「性転換手術なんて高度な技術、ボクにできるはずないよ……ゲルちゃんに形状を覚えさせて、貼り付けた」

「ゲルちゃん?」

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