シィの森
ひじか ゆい
第1話
肌寒くなってきてマントが欲しい頃パチィは今日の夕飯のコリノコと薬草を集めていた。コリノコは秋に採れるドングリの様な実だ。今日はそれらと香草を煮込んでスープにする、コリノコの実はコリコリと触感が良いのだ。
また保存食としても使え滋養によく、冬に備えるための栄養が採れる。体調の良くないパシィの父さんのためにも採ってやろうと住んでいる森で散策している。
パシィは数えてだいたい14歳といったところだが見た目は幼くだいたい10歳ほどくらいだろうか身長は120センチくらいである。髪は胸まであり赤毛を結い上げている。
そばかすがあり顔つきはまだ幼さが残っている。
この森に生まれた時からから住んでいて、父さん以外の者と会ったことがないので年齢などあまり気にしたことがないのだ。
森の事は父さんが教えてくれた.シイの森とゆう、静かで木々からの風がよく通りチコリと言う鳥の様なものの鳴き声がよく通る心地の良い森だ、この森から恵みを受け愛し生き物たちと共存し守っていくそうゆう者を森家守とゆう。
季節によっていろんな植物、実、果実などが採れる、パシィ達は肉は食べない。血も嫌いだ、肉を食べないので狩りは教えてもらっていない。
ただ食べられるもの、食べてはいけないもの、この種類の木湿ったところにはキノコが生えやすいことなどは父さんに幼い頃から教えてもらった。
パシィは鼻や耳が良いと言われ果物などははすぐに見つけ覚えも早かった。シイの森で父さんに必ず守るようににと言われたことがある、他の
小さな生き物のためにも食べ物を必要以上に欲張って取らないこと、そしてルルカとゆう獣の遠吠えが聞こえたらじっとし、
時を待ち素早く家に帰ること。小さい頃からパシィはこの父さんとの約束を守っていた、他の生き物以上に欲張ったりすると森の神様から罰を
受けるし、一本の塔の木以内であれば森の神様が守ってくれる。安全なのだ。パシィはルルカの姿を見たことがないが昔、父さんと森にいたとき
遠吠えをきいたことはあった、森に響き渡る悲しい声だ。大きな背中の曲がった獣で肉を食べる。森の動物たちや私たちもたちまち食べてしまうと聞いて
幼いパシィはとても怖がった。だが、それもまた神様に近い生き物なのだと父さんは言う、動物たちを食べるがそれでこの森の均衡を守っている
というのだ。特別死は怖いものではないよと父さんは言う、土に還り自然の一部として生まれ変わるだけ自然の事、なのでもしそんなことになってもと心は決めていた。
風がますます冷たくなりパシィは頭巾をかぶった、巾着袋いっぱいになったコリノコをみて(父さんが喜んでくれる)とうれしくなり速足で帰路に着いた。
パシィの家は太い幹の間に建っていて木の陰に隠れている、木の柱に乾燥させた木の葉を何重にも重ねてあるので中はなかなかに暖かい。
家の周りには父が以前耕した土に芋が埋まっているそれを3つ程取り出し家の中へ、「今帰ったよ!今日は丸々のコリノコが採れたよ。スープを作ってクッキーも作れるわ」
と布団に横になっている父さんに見せる、そして嬉しそうに「すごいな。ありがとう、パシィ。でもあまり遠くへは行かなかっただろうね、」と父さんは言った。
もちろんよ!とパシィ。「なら良いのだけど、お前ひとりで行かせて何かあったら私は、、」ゲㇹゲㇹ、と咳をする。
パシィは水釜から木の実の器で水をすくって父を起こして少し飲ませた、「今日は冬に備えてコリノコを取っておきたかったの、心配させてごめんなさい」とパシィは言った。
父さんは半年前から病に掛かっている咳がなかなか止まらないのと、首徐々に進み右手にかけて黒い炭の様な固い肌になっている。その痣がなぜできたか父さんにも分からない。
咳が落ち着くと横にする、「お腹すいただしょ!今ご飯作るから!」石鍋に水をいれ、小さな暖炉に火打ち石で慣れた手つきで火をつける。
「無理はしないでおくれよ」少し咳き込む父。「わかっているわ。」と火を見つめる。
コリノコを石で軽くたたいて殻を割る、殻をわったコリノコを石鍋にいくつか入れ煮立たせる。その間に残ったコリノコを袋に入れ木の棒で叩く
砕いたものをパシィ達の畑の近くの木になるココの実とゆう果物の種を絞った油で練る、ココの実の油は蜂蜜のようにねっとりとしている。
木べらでひとまとまりになるまで練って水を絞った布巾を被せ少し寝かせる。そのうちに石鍋が煮たたってきたので芋を火が通るまで待つまで待つ。
寝かせておいたコリノコの生地を一口大にちぎって丸め、石のフライパンの上で隙間ができるように軽く平らにして並べて置く再び布巾を被せておく。
スープは芋に火が通ったらが通ったら香草を入れて軽く煮立たせたら出来上がりだ。
火を弱め先ほどのフライパンに並べたコリノコの生地をじっくり焼いていく、焼けるまで少し時間がかかるのでスープが冷めないうちに父さんと頂くことにした。
「さあ、出来たわよ。冷めないうちに、」父にスープの入った器を手渡す。と父はゆっくり起き上がり「ありがとう。おいしそうだ」スープをもらい嬉しそうにゆう。
木のスプーンでいただきますを言い食べ進める。香草とコリノコの煮だした出汁が効いており素朴で美味しいコリノコは甘くコリコリとしていて、芋はほくほくとして美味しい。
父はゆっくりとスープを口に運び温まるね、美味しいよと言って右手でスプーンを掴もうとするがするりと落ちてしまう、パシィがスプーンで芋やコリノコをすくってやり一口ずつ運ぶ。
「すまないね、」「いいのよ、父さん、たくさん食べて元気になってね!」にっこりわらう。父も微笑み返し「パシィも食べておくれ、」パシィは様子を父の面倒を見ながら自分も食べ進めてゆく、
父のスープが3分の一程になったところで咳をし始め「もういいよ、ありがとう。」と言う。そう、とにっこりクッキーももうすぐ焼けるからと笑う。父に背を向け暖炉で焼けたか様子をみる、
両面こんがり焼いたら出来上がりだ。スープを飲みながら考える、父はどんどん食も細くなってきている。父に教えてもらった薬草は全て調合し試してみた、塗り薬、飲み薬、、。
父を蝕んでいるものは何なのか、知りたい。父がいなくなってしまう、そう思うと耐え難く、以前は逞しかった父を弱っていくをみているのもつらかったが、パシィは父の前では絶対に泣かなかった。
「さあ、クッキーが焼けたよ。」父はこれが好きだ、甘くてもちっとしている。「おお、美味しそうだ。」お茶を入れ父と味わいながらゆっくり食べた、幸せな時間だった。
その夜、父が眠りにつき森も静かになった頃パシィは外に出た。外は冬の前のしんとした寒さで昼の空の明かりの暖かさはない、夜は銀色の明かりが冷たく優しく広がっている。
少し歩いたところでパシィは空の明かりに祈った、また父が元気になるそう思いなんでもすると森の神に祈った。森は静まり返っている、寒さも忘れ涙が止まらず鼻から目から水が溢れ出した、
父のやせた笑みを思い出し、自分の無力さに泣いた。寒さと合わさって体も震える。
泣きつかれ鳴き声はまだ遠いが急いで家路に帰ろうとする、その時森の向こうから遠吠えが聞こえた子供のころ聞いたきりだがルルカだ間違いない。世界の終わりの様な鳴き声、自分の悲しみと重なったような気がした。
早く帰らねばそう思ったときすると夜の空から一本の塔の木に一瞬光が放った、光は消え暗闇から一つの塊の光がこちらに向かってくるのが分かった。
何かがこちらに来るルルカか?逃げなければ恐ろしかったがなぜかパシィはその場から動けなかった、光の塊がパシィの目の前に来て淡い光に包まれた。パシィは目を瞑った。
「人の子よ。」呼ぶ声が聞こえる。パシィは目を開いた、前には大きな角と蹄のついた美しい白い姿の羊の様なものがいた、「祈るものよ。名はなんというか」
パシィは神様だと思った「パシィ」思わず声に出た、「パシィ。お前の父は森に呪われている、お前だけの力では悲しいことにもう命を救うはないよ、だからお前は森と空に祈った。かわいそうな子、お前に父を直す力を与えましょう」
「ただし、お前の命を削ることになるかもしれないそれでもいいかい。」パシィは構わないと思いうなずく。「分かりました。お前に力を与えます。」羊の角から草木が脇立ち人の姿になった。
そして優しくパシィの額にくちづけをした。「これであなたの父は助かりますよ」その人は微笑み姿が見えなくなると光は儚く消えていき森の奥へ消えていった。
パシィは茫然とし一粒の涙を流した。はっと我に返り、幻覚?幻を見たと思った。父が助かる?動ける生まれたばかりの小鹿のようにその場立ち家に帰った。
父は寝ていた。苦しそうに額に汗をかいていたので拭ってやり、父の黒い痕に触れたやっぱりただの幻だったのだ。そう思い自分の寝床に着く疲れほてたパシィは目を瞑り眠りについた。
瞬間かすかに家の中ががほのかに光った。
夜が明け家のパシィは暖炉の方からする物音で目を覚ます寝ぼけているせいかまだ意識がはっきりしないが父の背中が見える、湯を沸かし茶をいれている。
「父さん?」と声をかけるがパシィはまだ夢の中にいるのだと思った。「おはよう。パシィ。さあ、これをお飲み」微笑みながらパシィに茶とクッキーを差し出す。「ありがとう。」眠たげに言う。
暖かい飲んでみるとココの実の蜜が入っていてほんのり甘かったよく父さんが作ってくれたお茶の味だ。「美味しいかい?」父さんに尋ねられ、意識がはっきりしたこれは夢じゃない。
パシィは慌てて「とっとうさん!動いて大丈夫なの?!」と尋ねる。「ああ。今朝はすっかり調子が良いんだ。きっとパシィのコリノコの料理のおかげだよ。ありがとう。」
顔色も良く黒い痣も消えていた。「そそんな私父さんが教えてくれた薬草を入れただけよ!」
パシィは困惑する(昨晩の出来事を思い出しまさかと思ったが、元気そうな父をみてあれは本当にあった出来事なんだ。昨日の事は内緒にしておこう。)とパシィは思った。
父との楽しい朝食済ませ「久しぶりに少し外に出て空気を吸いたい、パシィどうだい?」「ええ、父さんが平気ならいっしょに行くわ」
父が外に出るパシィも後に続き、父は高い背を伸ばし胸いっぱいに空気を吸った。パシィは父の以前よりやせ細ってはいるが立ち上がった姿をみておもわず抱きしめた。
「父さん、ほっ本当に良かった。」父を抱きしめ泣くパシィ。「おやおや。甘えんぼさんだ。」父は微笑む。「だって、死んじゃうかと思ったんだよっ」
「ごめんよ。パシィ本当にすまなかった、寂しい思いをさせたね。お前ひとりでも生きていけるようにあらゆることは教えてきただろう。覚悟はできていたはずだ。」
「でも私怖かったの、でも私嬉しいっ」泣くパシィ。(森と空の神様ありがとうございます。)「私も嬉しいよ。」優しく抱きしめる。
「寝巻のまま外に出てしまったからすっかり体が冷えてしまったね。家に帰ってお茶にしよう。」パシィの頭をなでる。「ええ。」涙を拭いて、父と家に帰った。
父と久しぶりに本を読んだ、怪物からお姫様を守る話、薬草の話など二人で何時間も読んでいた。
字も父から教わった父はパシィの生まれる前は森の外に住んでいた、そしてこの森で母さんに出会った。母さんはパシィが産まれてすぐに死んでしまった、だから記憶にはない。
母さんの話はあまりしないがパシィの白い肌は母さん譲りだそうだ。そばかすだらけの顔はほとんど父さんそっくりだが最近は母さんの森を愛する心、意志を持った目、母さんにはそれがあったパシィにもあると言う。
父さんと話しているうちにお腹が空いてきた、(そろそろ夜ご飯の支度をしなくちゃ)パシィはそう思いまだ病み上がりの父を労いいつものように一人森に食材を採りに行った。
(今日はキノコのスープを作ろう)キノコの生えている少し薄暗い場所まで行った、だいたい生えているところは決まっている。
木の陰に立派な株のキノコを見つけた、それを石のナイフで切り取る。嬉しくなって飛び跳ねるパシィ、(こんなに大きければお腹いっぱいになるわ)。そう思った時草の陰から苦しそうな鳴き声がした。
森の動物だろうか、見に行ってみる。草の陰には青黒い毛並みのフサフサとした小さな生き物が丸まっていた。クュ、と息苦しそうにしている。
危険ではないと思い心配になって傍によってみた、触ろうとした瞬間。生き物がさっと飛び上がり威嚇してきた、大きな瞳でこちらを見ている。この森で初めて見た生き物だ。
小さいが尖った歯をむき出している、傷は見当たらなかったが無理をし辛そうにしている。
これ以上干渉しても体に無理が掛かってしまうと思い少し様子を見て家に帰ろうと思った、と生き物が力無く倒れた。
パシィは思わず駆け寄った、まだ浅く息がある。初めて見る生き物だがなんだか懐かしいような気持になって放っては置けなかった。
父さんにも見てもらおうシイの森の生き物を守ることも森家守の役目だ、とマントに生き物を包み急いで家に帰った。
「父さんっ緊急なの私にも分からない生き物が死にかかってるの」息も切れ切れにパシィは父に生き物をマントを広げ診せた。
父は一瞬手が止まったが大変だと急いで診た、父は薬を塗ったり飲ませようとしたが受け付けない様子で何の効果もない。父は医術書を広げたがケガや病気ではない「これは術にかけられている」父さんはそう判断した。
生き物は息がだんだんと小さくなっていく、原因は何かの術の様なものだと父さんは言ってた。父は医術は詳しいが呪術については見当もつかない。
パシィはが何か懐かしい気持ちになったこの小さなこの生き物を助けたいと生き物に触れたその時パシィの額が青く光った。
触れた生き物にパシィから緑の輝きが流れ込み生き物が一瞬白く光った。と同時にパシィは倒れこんだ。
夢を見た白髪の長い髪の女の人と父が見えた。
小川で楽しそうに話をしている、父がその人の白い髪に花をつけた、空の明かりでうっすらと虹色見え美しかった、その人の顔は良く見えなかったが父は幸せそうだった。
暗い影が差してきて木々も騒ぎ雷が鳴り響いた、その人は苦しそうになった。どうして。
父が心配そうにする父から離れながら美しかった髪は黒くなり背中が曲がり体が大きくなり黄色い目でこちらを見た。
「パシィ」
「パシィ」父の声ではっと目を覚ます。すると心配そうにパシィの汗を拭く父とふわふわの毛並みの生き物がこちらを目を丸くしてこちらを見ている。
「私、、」起き上がろうとする。
「パシィ、今はゆっくり休みなさい。」と父に横にさせてもらった。「父さん、私母さんと父さんの夢を見たの。幸せそうだったのに母さんが何か起こって、、」泣きそうになる。「疲れて悪い夢を見たんだね」
生き物がパシィに頬ずりをすして小さな舌で頬を舐めてきた。くすぐったくて少し笑みになった。
「この子元気になって良かった。」小さな生き物と父の顔を見て安心して眠ってしまった。
朝起きると父の姿が無く、小さな生き物がパシィの上で眠っていた、撫でてみるととても柔らかかった。(可愛い、この子は術にかけられていて死ぬところだったそして今ここにいる。何があったのだろう。)
「パシィ!おはよう。」「父さん!」むくっと起き上がり抱きつく。キュイっと小さな生き物が鳴いてパシィの肩に乗る。
「良かった。顔色もよさそうだ!この子がずっとお前の事を診ていてくれたんだぞ。」
「ありがとう。」小さな生き物はキュイと鳴く。「でも父さんこの子どうやって、」父の顔を見る。
パシィの肩に手をやり「パシィ、森の神と契約を交わしただろう、」どきっとした。「お前がこの子の術を解いた、そして私を救うよう願ったのだろう、。」父さんはうつむいた。
「これを見ろ」父さんはぼろぼろの鏡をパシィに渡す。うつむいたまま「顔を見てごらん」
恐る恐る鏡をのぞくと額に青くて丸い石の様なものがあった。「なあにこれ」触ってみた。固い、こすって取ろうとしてもパシィの一部になるようにそこにあった。
「森の力を使った者につくお前が宿木になった証だ。宿木になった者はその力を使うことで生き物を癒す力を与えられる、その代償として力を使う度に魂を蝕み最後は森の神が魂を食う、抜け殻になってしまう」
父さんの為だったら何でもする、森の神と交わしたことだ。宿木?魂を食うとは?「父さんなぜそんなことを知っているの?」
「お前の母さんから聞いていた、稀にこのシイの森で森の神と契約し力を得るものがいると。そしてお前の母さんは森の神様の娘で森の精だった。」すすり泣く父。あの夢で見た女の人はやっぱり母さんだったんだ確かに人離れしていた美しさだった。
父さんは壁にもたれ掛かって「私は王国からこの森まで逃げてきた、そして母さんと出会った、私の一目ぼれでね、お互い愛していた。そしてお前が産まれたんだよ。パシィ。」
「だったら母さんは、、」今まで言えなかった母への疑問を父に問いかける。「母さんは死んでしまったの?私を捨てたの?」
「いいや。母さんはお前が産まれてこの上なく喜んでいた、愛していた。見捨てるようなことは決してしていないよ、死んでもいない、、」
少しの沈黙の後父が「母さんはお前を産んである夜の日に森に連れてかれた。森の神の娘、その神の怒りに触れたんだ、私の様なものと恋に落ちること、ましてや子を設けることは罪になるんだ。」
「母さんだけでなく、森の生き物たちにも怒りの矛先が向かいルルカが現れたんだ。私もお前を連れて探したが母さんは見つからなかった、、
今まで黙っていてすまなかった、早く言っていればお前がこんなことにならなかった。」
「私後悔していないわ。おでこの石だってきれいで気になんかならないわ。だってこうやって父さんの病が治ったんですもの!もう力を使わなければ大丈夫よ!」肩に乗ってすっかりパシィに懐いた生き物を撫でてやる。
「この子と一緒に3人で暮らしていきましょうよ、でも、なぜ父さんは母さんがまだ生きていることが分かるの?」
父はパシィに自分の首を見せる。そこには以前もみた黒い痣があった、「そんな、確かに病は治ったはずよ!」
「これは森の神からの呪いだ。母さんが生きている証拠でもある。」
「母さんを森が連れ去るときに母さんを守ろうと抵抗した時にある、この痣は森の神から受けたものだ、時間とともに広がっていった。
痣が無くなったときは母さんが死んでしまったと思ったよ。でもまだ生きている、母さんを愛する限り受け入れるよ。」
呪い?父さんが死ぬのならどんな理由であれ母さんが死んでくれればよかったと思うほど愕然とするパシィ。神は私に癒す力を与えてくれたのでしょ、その神からの呪いは私の力では解けないの?
「良いんだお前と母さんが生きているだけで私は嬉しい。お前の力でまだ長く生きられる。ありがとう。」
「私はどうしたらいいの、、」ポロポロ涙を流すパシィそれを慰めるように舐めるふわふわの小さな生き物。私の力で呪いは食い止めることはできる、
「パシィ良く聞くんだ。お前の力は使うことで宿木、魂が無くなってしまう、。私の呪いの進行を止めるためにお前はまた力を使うだろう、私の知っている限りひとつ方法がある。」
潤んだ目で父を見上げる。「この森を抜けて西の王国へ行くんだ。」
「国?森を出るの?」「ああ、私のかつて住んでいた国逃げてきた国だがそこに魔法師がいる。一流の魔法使いだ、術の解き方を知っているだろう。」
「ただしお前ひとりで行くことになる、私は呪いでこの森から縛られているし、森家守としての務めがある最後までお前と母さんと過ごしたこの森にいたい。」
「でも私この森から出たことはないのよ、私も父さんと最後まで一緒に、、」首を横に振る父。
「パシィお前は外の世界の者と比べれば小さいかもしれないが肝は大きい。神と契約を交わし力を得る素質があるのだから、それに今までこの森を生き抜くすべてを教えた、外でもきっと役に立つ。母さんの行方も分かるかもしれない」
私ももう十六歳ころになる、母さんの行方ばわかれば父さんの呪いも解けるかもしれない。
「私行くわ。この森を出て国に行く。宿木を解いてもらう方法、母さんの行方を探し出して父さんの呪いを解く方法を見つけ出す。そうすればルルカからこの森の生き物も守れるもの。」
涙をこらえるパシィ。
その夜パシィと父の最後になるかもしれない夕餉をとっていた。この日は父が特製で作ったキノコのスープとコリノコの蒸しパンが並んだ。小さな生き物はコリノコを食べた。
「お前が助けたこの生き物私も見たことがないよ。お前の力に引き寄せられたのかな。」漆黒のふわふわな毛はお代わりと言うように父のかかとにすり寄る。
「かわいいね、すっかり私たちに慣れてしまったけど森に返さないとこの森の守護精かもしれない。」
「始めは私に小さな牙をむき出しで威嚇してたんだけどね~」指で顎を掻いてやる。
「明日森に返すよ、お前を見送ってから、、」父は少し目を下に傾け言葉に詰まる。
「パシィすまないお前に苦労を掛ける、、」塞ぎ込む父。
「父さん私必ず帰る。大丈夫だから。」少し強めに言う。パシィはそっと父の肩に抱きついた。
「さあ、夜が更けてしまった」涙を拭う父「明日の為にももう寝なさい、支度は私がしておくから。」
父に素直に従い布団に入る。「おやすみ、パシィ。」額を撫でる、額の石に軽く触れる。(羊の姿をした神を思い出した。)
「これであなたの父は助かります。」
神様は確かに私を宿木にして魂を採られてしまうかもしれないでも力をくれた癒しの力だ、きっと父さんを助けてくれる。
そう信じパシィは眠りについた。
朝、出発の日だ、目を覚ますと父がいつものようにお茶とクッキーをくれた。(おいしい。)だがいつもより多く作ってあったのだがなかなか喉に通らなかった。
父も無理には食べさせなかった、部屋の隅には荷物をまとめた大きなカバンがありそこに残りのクッキーを入れてくれた。
「パシィ」古い地図を広げる父。
「王国はシイ森を西に行ったところにある、まずこの森を抜けるには一本の塔の木を越えなければいけない。それを超えるとルルカが現れるかもしれない。だからこれを。」
父は皮布に包まれたものを出した、皮布をめくるとそこには金の装飾をしてある短刀だった。刃を鞘から少し抜いてのぞかせた、それはパシィにとっては恐ろしく光った。
鞘に刃を戻し再び皮布に包んだ「ルルカが現れたらこれを使いなさい、まじないをかけてあって刃を抜けば獣よけになる。」パシィに握らせる。
「こんなものどこで、、」と疑問に思うパシィをよそにパシィの腰布に巻く。
「ルルカだけじゃないこの森を抜けるには試練がある、一本の塔を超えると小川がある、小川に沿って歩くんだ、少ししたら果実のなる木の林が現れる。
だが実は決して食べてはいけないよ。幻覚を見せるからね。」うんと頷くパシィ。
「果実の林を抜けると茨の道が現れる。その為に」と厚い皮衣の大きなマントをパシィに着せる。見た目と違って軽い。
「このマントは南の厳しいところで住んでいる珍しい生き物の皮でできたマントだ。これを着ていれば寒さもしのげるし茨の道も通ることができる。」
「父さんこんなものいったいどこに隠していたの」少し笑みを浮かべながら問う。
「畑のなかさ。芋と一緒にね。」
「嘘!わたし見たこともないもの!」
「すまない、屋根の上だよ。そこに分からないよう隠しておいた。父さんもこの森に来るまで旅をしたからね。お前には内緒にして置きたかった。」
父がどんなことをしてきたかパシィも聞いたことがなかったので話を聞いてみたいと思った。
「父さんは何をしてきたの?」
「私は人を殺めた国と国との戦いがあったんだそして国を出た、、、自分でも恐ろしいことをしたよ、そしてたどり着いたのがこの森だった、、」寂しそうに話す父がいた、思い出したくない過去。
パシィは父が人を殺めたことに衝撃を覚えたが「そう、、」とだけ言った。父が理由なく人を殺めるはずがないと思ったからだあまり詮索はしない方が父の為だと思った。
キュイっと鳴き声がした。小さな生き物だ。ふわふわの尻尾を振って二人をきょろきょろと見ている。
「すっかり君の事を忘れていたね。森に返さなければね。」
父が小さな生き物を手に乗せパシィと森の中へ行き、生き物はお礼のつもりか一度振り返りと森の奥へ去っていった。
「さようなら。元気でね。」と少し寂しそうなパシィ。そんなパシィの肩に手を置く父。
「さあ行こうか、次はお前を見送らないといけないな、」パシィの肩に置いた手に少し力が入った。
地図や水筒、食料と国に着いたら使うだろうと父が持っていた硬貨と荷物を詰めた鞄を背負うパシィ、少し重かった。
茨を抜ければ国が見えてくるという門番がいるかもしれないから父が昔使っていた通行書を持たせてくれた。
「上手くいけば2日で森は抜けられる、お前なら大丈夫だ。父さんと母さんの子だ、母さんもきっとどこかで見守っている。」父はパシィ顔の高さに膝をついて向き合いながら
「国に入ったらたくさんの人がいるから驚くかもしれないが、魔術師のいるところを聞くんだよ。
それとその額は隠しておきなさい力を持つ者だけがある証だから人に見せてはいけないよ、お前の力を利用する人がいるかもしれない。力は決して使わないでおくれ」パシィの頬を撫でる。
「それにこの短剣も人に見られないように包んでおきなさい、人にとっては高価なもので喉から手が出るほど欲しい者もいるからね」
「わかったわ。」確かに金の装飾をしてあるこれは美しい狙うものは現れるだろう帰ったら父のもとに返そうと誓った。
「父さん、自分の為でもあるけど母さんの為にも行ってくる、必ず帰ってくるわ!」
父にもう一度抱きつきたかったがそうするとパシィの一人で行く気持ちが遠のいてしまいそうであったのでぐっと我慢した。
「必ず帰ってくると信じている。待っているよ。」そう言ってパシィの首に小さい巾着のついた首飾りを付けてくれた。
「お守りだよ。お前を守ってくれるように」
「行ってくる。」とパシィは駆けるように森の中へ入っていった。
一本の塔の木までは知っている道なので迷いなくこれた。一本の塔の木の前でパシィは少し息が荒くなったのを整えた、水筒の水を飲んだ。
そして木に触れ(無事にこの森に帰れるように見守りください)とつぶやいた。
パシィは勇気を振り絞って一本の塔の木を超えた。
超えたとたん空気が変わったような気がした、ルルカがいるせいか、短刀を確かめながら先を少し速足で進む。
すぐ水の流れる音がして小川を見つけた、この川に沿って歩けば茨の道に出る。茨を抜ければ国が見えてくる、簡単じゃないのかと思えた。
小川に駆け寄ったいつも飲んでいる水と変わらないきれいな水だ、この水は飲めるのだろうか一本の塔を超えたとしても同じ森の中だがパシィ油断できないと思って飲まないようにした。
小川に沿って進んでいく暗くなる前に森を抜けたい、お腹が空いたが今は早る気持ちで進む。
木々がざわめき始める、ルルカか。獣鳥たちの羽ばたく音パシィは、心臓の鼓動が早くなるのを感じた、手に汗を握り短剣を握った。(父さん守って)
林から何かがパシィに向かって飛び出してきた。パシィは驚きのあまりしりもちをつきとっさに短剣を抜けずに倒れこんでしまった。(私は食べられるんだ、ごめんなさい父さん)
何かがパシィの上に乗っている。ルルカはこんなに小さな生き物なのか、恐る恐る目を開ける。
キュイ!と元気な声でパシィが助けた小さな生き物がいた。「なんだお前だったの?!とっても恐ろしかったんだから、」と小さな生き物を持ち上げる。
いつの間に付いて来てしまったのだろうか、ここが住処だったのかもしれない。
キュイ!パシィの手から抜けてリュックの中に入ってしまった。「あっ!」
お腹が空いていたのか、コリノコのクッキーが気に入ったようで匂いで見つけてサクサクと食べ始めた。
パシィは安堵して緊張が抜けた、今まであまりにも力を入れすぎて呼吸もまともにできなかったので気持ちを楽にできた。少し気を張りすぎていたのかもしれない。
パシィもお腹が空いていたのでクッキーを食べて休憩することにした。
キュイ!とパシィの膝に乗る、「お前もこれが欲しいのね、はい、どうぞ。」自然に返したつもりだったがいつのまにかついて来てしまった、ルルカのいる森に堂々と立ち入るなんてなかなか肝が据わっている。
これも何かの縁だ、一人で心細いのもある「お前、私に付いて来てくれる?」生き物は可愛らしく首をかしげる、とキュイ!と大きく鳴いた。
「そうだ!名前は、、キクリはどう?」
「鳴き声がキュイ!でコリノコのクッキーが好きだからキクリ!なんだか変かしら?」小さな生き物はパシィの顔に近づき頬を舐めだした。
「わっ!くすぐったいっ気に入ってくれたのかな。今日からお前はキクリ!よろしくね!」キュイ!とキクリは鳴いた。
キクリを肩に乗せて歩くパシィ一人でいた時よりも心強く歩みに勇気がある。
小川を歩いていくと落葉樹が生い茂る場所に来た、甘いかぐわしい匂いがする。そこには今にも落ちてきそうな完熟に実った丸い赤く実った果実があった。パシィには初めて見た果実でとても美味しそうだと思った。
果実に近づき今すぐ食べたいと思った、果実に手を伸ばす。この果実は父さんが言っていた幻覚を見せるものだろうか、食べてはいけないそう思いながらもパシィは果実を手に取ってしまった。
キクリが体中にまとわりついてきてきた、「キクリちょっとやめて!」とキクリを払った、と果実を齧った。それは身も溶けるように甘く心から虜になった、パシィはまた一口と食べていきまるまる一つ食べてしまった。
パシィは心地よい気分になり、笑いが込み上げてきた。「あははははあ」と思いっきり笑った。
その時父の呼ぶ声が聞こえた。「パシィ」「父さん来てくれたの」
「体はもう大丈夫なの?」「もう何ともないさお前の癒してくれた力でね、さあおうちに帰ろう」と手を差し伸べ優しく微笑む父。
コクリとうなずくパシィ父に近づき父の手を取ろうとした瞬間。
「痛い!」激痛が走った、キクリがパシィの指に嚙みついていた。
その時父の姿はなく一歩進めば崖の上にいた。我に返りパシィは後ずさった心臓の鼓動が止まらないキクリがいなかったら命を落としていた。
申し訳なさそうに大きく長い耳をたたむキクリ、噛みついた痕にに血が出ているのを舐めている、この子に命を救われた。
「ありがとう、キクリ」キクリを撫でほっとした気持ちとこの小さなキクリへの感謝の気持ちに一粒涙を流すパシィ。
「キュイ、」と心配そうに鳴く。
涙を拭いて「私は大丈夫よ。さあ、行きましょう!」
父の言うとおりに小川を行き、幻覚を見せる果実をまんまと食べてしまったが、キクリのおかげで危機を逃れたそのまま進めば茨道があるそこを抜けて門を通れば王国だ。
ルルカは今のところ運よく気配を見せない。
パシィはもう果実の誘惑には罹らなかった、一度幻覚の実を食べたものはその誘惑に惑わされないようだった。そのまま果実のなる通りを進んで行くと痛っと腕に何か鋭いものがに引っかかった。服の上から血がにじんだとそこはもう茨の道の中にいた。
ぐんぐんと茨のとげが近づいてくるようにパシィを囲んだキクリを服の中に入れ急いでマントを探しだし覆いかぶさった。こわい怖い、死とゆうものを知らないパシィだが自分はここで終わってしまうのかと息を切れ切れに縮こまった。
そのまままるくなったパシィは息をのんだが茨のとげは刺さってこなかった、パシィはそっと立ち上がってマントの隙間から外を見ると無数のとげが見えたが止まっている前方も塞がっていたが、勇気を振り絞り歩み始めてみた。
茨のとげはマントを避けるようにしてパシィの歩みを止めなかった。
どのくらい歩いただろうか水を飲むにもむやみに動けばマントから出て茨のとげが刺してくるかもしれないとゆう恐怖で水が飲めなかった。
キクリはパシィの服の中でのん気にうたたねしていた。
いつになったら出られるの?この方向で合っているのだろうか。意識が遠くなっていく、、(父さん、、母さん、、)ふいに膝をつく。
キクリがもぞもぞと服から飛び出してしまった。
(キクリっ!)
同時にバサバサとが聞こえる。マントの隙間から何か大きな生き物が暴れている茨を崩している。
大きな生き物がパシィに近づき(つかまって)と言う優しい言葉が頭に入ってきた。
パシィの生き物の毛に捕まり力を振り絞り背に乗った。
風のように茨を抜けていく音が聞こえる。パシィは暖かい大きな背に捕まりとても安心した。
音が無くなると、パシィはそっと草むらの地面に落とされた。茨を抜けたのか静かだった、ただ生き物の荒い息づかいが聞こえる。
パシィはマントをとった外は真っ暗ではっきりとは見えなかったが月明かりに照らされて大きな生き物の姿を見た。口は大きく牙が生え、背の毛が白く長いの背の曲がった醜い獣がいた。
あれはルルカだった。
ルルカは姿を暗闇に消し、恐怖は無く茨から出たこととルルカに安心感を覚え、疲れ果てたパシィはそのまま眠ってしまった。
明け方、キュイっと元気に泣く声が聞こえた。
日の光のまぶしさとその声でパシィは目を覚ました、そこには「キクリっ」とそのふわふわの毛に思わず頬ずりした。
「良かった~、お前も助かったのね、」パシィの頬をキクリもペロッと舐めた。
キクリはキュイっげた小さな生き物がいた「キクリっ」とそのふわふわの毛に思わず頬ずりした。
とキクリがキュイ!と鳴くとパシィの頭の傍に水筒と木の葉に包まれたものが置いてあった。
パシィは喉がカラカラだったのでそれを思わず飲んだ、生き還るようだった。
それはパシィのものではなかった、パシィはリュックがないことに気が付いた山賊か何かに取られたのだろうか。マントは身に着けていた父の刀はと思い、腰巻を見た。
無事だった、良かった安堵した。
パシィはひとまずほっとたらお腹が鳴った。木の葉に包まれたものからほんのり良い匂いがしてくる。
「それ食べなよ!」と背後からはつらつとした声が聞こえた。
パシィが振り向くと背後には誰もいない、「ここだよ!」
「よっと!」と木の上から人が降りてきた。
そこにはパシィよりも少し背の高い少年が立っていた、パシィは年齢よりも背が低く幼く見えるので少年は十二,三歳くらいだろうか。
これも食べなと青い実を渡された、わわっとパシィは慌ててそれを受け取った。
「その実見た目も美味しそうじゃないけど味はなかなかなもんだ、体の疲れもとれるぞ。」
パシィは生まれて初めて会った人にどぎまぎした。「なんだ。しゃべれないのか」と少年はパシィの顔をのぞきながらと「お前、、」
額を石を見られたかと思い顔をマントで隠した。
「んな、驚くなって、ここいらじゃ見かけない顔だなって言おうとしただけだ。まあ、いいから食べな」
マントの中でパシィはお腹が空いたので一口齧ってみる、硬い実だったが噛んでみると花のような香りとさっぱりとした酸味を感じる。
パシィはそれを人齧りづつ食べていく、幻覚を見せる実ではないみたい。一つ食べ終えると体が少し軽くなった。
パシィは腰布を半分契って額に巻いた。
少年にお礼を言おうとマントから顔を出した。
それを見た少年は、ははっと笑って「なんだそのハチマキ~歩兵か何かかっ」
笑われてパシィは恥ずかしくなったが「その!ありがとう!」と大きな声で少年に向かって言った。
「なんだ、喋れるんじゃんか、何てことないさ。困ったときはお互い様だよ。お前まだ小さいんだし助けるのが当たり前だろ」と優しく話す。
パシィは自分のが歳が上だろうと思っていたが、ただうんと頷いた。
「まあ、これも食べな。」木の葉に包まれたものを手渡されたものをパシィは受け取った。それはほのかに暖かかった。葉をめくってみるとパシィにも見慣れた芋だった、それを一口食べる。
ほくほくとして美味しかった、それは父と食べた芋と同じだった。
「どうだ?うまいだろう?家で採れた芋だ。お前が寝てる間に焼き石でじっくり焼いたからな~、時間は掛かるが芋の美味さが引き立つっ、、て」
パシィは食べながら涙を流す、父の安治を思ったこと、森を抜けるまでの恐ろしかったこと一気に気が抜けた。
少年は驚いた様子だったが、察したように「お前も何か辛かったんだな、、」とパシィの背中を撫でてくれた。パシィは泣きながら暖かい芋を食べた。
パシィが落ち着いて一息つくと少年に「あなたの名前は何てゆうの?」
ははっと少年がそうだったと手をぱちりと打った「俺の名前はリュカ、お前の名前は?」
「パシィよ」
「改めてよろしくなパシィ!パシィはどうしてこんなところで倒れていたんだ?」
「キュイ!!」くるくるとパシィの周りを回る。
「フフッ。この子はキクリ。この子と一緒にこの森を抜けたの」シイの森を指さす。
「お前!パシィ!シイの森をか!ルルカや呪いが掛かっている危険な森だ。森を抜けたとゆうことはパシィ!」
リュカはパシィを指さす「おっお前魔物か!」
パシィは内心焦った半分人間、半分妖精だとゆうこと、ここは冷静に「馬鹿ね!私は人間よ。魔物なら尻尾や角、牙が生えているわ」歯を見せ、ふんと首を横に振る。
「そ、そうだよな!魔物だったらとっくに俺も食べられていただろうしな、ははっ冗談!悪かった、でもどうしてシイの森なんかに、」
パシィはリュカが腰に差してある短剣にも手を出していないので盗賊でもない、ここまで助けてくれたんだ。信頼がおけると思い自分がシイの森で生きてきたこと、父の命が危ないので王様に頼み呪術師に呪いを解く方法を知る為に森から出てきたことを話した。自分に癒しの力があることは洩らさなかった。
「そっか、お前苦労してんのな、おっとさん今無事だといいな、。」
パシィはコクリと頷き、リュカに話して少し楽になった「こうしている間も父さんは命が危ないのだから私行かなくちゃっ、キクリと一緒にリュカも怖がるこのシィの森を抜けたんですもの大丈夫!もう行かなくっちゃっ。ありがとう!リュカ。」ここからは父からは教わっていなかったが王国は西にある、太陽が昇ってきた方角に進んでいけばいい。
リュカが大きな声で「まてよ!パシィ!」
「俺にもお前くらいの妹がいるんだ、だからここまで助けたんだお前みたいなチビ放っておけないね、お前の旅見届けてやる。」
「え!本当に!?嬉しいわ」パシィは満面の笑みでリュカに答えた。
リュカは少し気恥ずかしそうに「お前のその油断しやすいところも心配だしな」とパシィの頭をぐりぐりと撫でた。
リュカの話では西の国は西にあるとゆう訳ではないそうだ、教えてくれなかった父に少し腹を立てたが父もそこまで把握できなかったのであろう、それから崖下り、草原に出たパシィは驚いた、シイの森では冬になる前だったのに春の緑のようだった。
「ここからは西の王国の範囲内だ。お前も気づいた通りここには四季がない一年中熱さも寒さもないから飢えることもない。」
パシィは「それってとっても素晴らしいことだわ!いい国なのね。」
リュカは小さな声で「気味が悪いね、」
パシィはリュカのその言葉とどうしてこんな環境になっているか聞きたかったが、「さ!王国の門はもうすぐだ行くぞ!」と足早にさっさと行ってしまったので言いそびれてしまってパシィはあわててリュカの後に付いていった。
草原を抜けると「さあ、ついたぞ」とリュカは堂々と言った。
そこにはパシィが思いもしない高く大きな壁がそびえたっていた、門には父の本の表紙で見た竜の刻印に似た紋章が彫られていた。
その大きな壁に圧倒されパシィはその場で立ち尽くしてしまった。キクリも心細くなったのかパシィの首に纏わりつく。
「おいおい、パシィ大丈夫かよ~」とパシィが止まっている間にリュカが先に進んでいた。
「まっ!まってよ!リュカ!」とリュカのもとまで駆ける。
追いつくと歩きながら「パシィ、お前ここまで来て怖気づいたのか?」
パシィは少しむきになって「馬鹿言わないでちょうだい。このくらいで驚いてなんかいないわ。」
リュカがパシッと軽くパシィの背中を叩いて「お前なら大丈夫だ。自信持て。」
リュカはまっすぐ前を向いていた。パシィもそれを見て前に進み出た。
門の目の前まで来ると竜の刻印の垂幕を付け帽子を深く被っている背格好の良い男が一人立っていた。
リュカが小さな声で「あれが門番だ、俺が何とかするからお前は横に隠れてろ。」がパシィは背筋を丸くしてうつむくようにリュカの脇に立った。キクリはパシィの服の中に隠れた。
リュカが調子よく「こんにちは!セブルスさん!お疲れ様です!今日もまた森から盗賊が現れました、俺が見たところ数名でしたが注意した方がいいかと思いますが、虎をも倒したあなたなら恐れなしですね!」
男は身動きせず「そうか、造作ない。たわいないな。鐘を鳴らしに来たか」と低い落ち着いた声で返した。
リュカが「はい!そのことについて、森の変化についても知らせようと思います」リュカは王国で外の時間を報せる役割をしているようだ。
「その小さな娘はどうした。王国の外のものであろう。」と低く冷たい声で男が尋ねた。パシィは心臓が跳ねた。
「ええ、村の病院の孤児でございますが、こいつは医学を学んでおります。まだ子供ですが薬の調合などに詳しく王国の図書館でも知識を身に着けさせるようにと言われ連れてきました。」とリュカがいつになく真剣に話す。
「御触れはないだろうな」と深く被った帽子の隙間からパシィを鋭く見た。
「この通りです。」リュカがパシィの腕を掴み腕をまくって見せた。
セブルスとゆう名の男は「うむ。許可書はあるのか?」とリュカに尋ねた。
「こちらにあります。」とリュカは紙をセブルスに見せた。
紙を受け取るとセブルスは「シスターからの申し出であるか、いいだろう。」
セブルスは門の目の前にある大きなレバーを片手で後ろに引いた。
機械音が鳴り門の脇にある歯車が動き出した、するとゆっくりと門の扉が開いた。
鈍い音がして門が開ききるとセブルスが「通れ!」と怒鳴った。
門の開くのに圧倒されていたパシィはその声にビクついたがリュカは慣れた様子で「ありがとうございます!」とセブルスにいうと、パシィに小さな声で「さ、行くぞ」と言った。
門を抜けたそこにはパシィには見たことのない世界が広がっていた。
沢山の行きかう人、果物や美味しそうなパン、焼き菓子を売ったり、日用品の道具を扱っているお店や修理屋など小さい時から父さんが本で読んでくれた世界がそこにはあった。
パシィは目を輝かせながら「わあー!すごい!王国ってすごいのね!リュカ!」と驚く。
リュカは冷ややかに「そいつは良かったよ。」
パシィはリュカそっちのけで「おじさん!これはなあに?」丸い筒状のものを指さす。
店の店主は「筒の中をのぞいてごらん、お嬢ちゃん。」と店主の言った通りのぞいてみるときらきらと光る光景が映っていた。
「きれい、、」パシィは思わず見入ってしまった。
店主が「それは金鉱でとれた宝石でできている宝石と言ってもジュエリーやらを製造した時に余る欠片だがな美しいだろ。お嬢ちゃんここらじゃ見かけない顔だね。どこから来たんだい?」
すると「おじさん悪いな。こいつは少し頭を打っちまって医者に行くところなんだ。」リュカがパシィが見とれていた筒を元に戻すと店主が「リュカじゃないか!村の娘さんかい?かわいそうに今日は特別まけとくよ。」
リュカははっきりと「おじさん悪いな。急いでるんだ。また今度な!」とそそくさとパシィの腕を掴んで去っていった。
人ごみを抜けて人道理の少ない角まで来たところでリュカがパシィに「お前ひとりでうろつくなよ!おもちゃに気をとられて王国に来た目的を忘れたのか!」パシィは気を落とし「ごめんなさい、」と一言言った。
それを見たリュカは自分の頭を掻き「お前はまだ子供だ。この国には子供は少ないんだ。生まれたときに呪詛をもらう子供が多い。珍しいんだ。だから人買いにも狙われやすいし、ましてやお前は王国の印を持っているだろ。」
王国の印?パシィはぽかんとした。リュカが「お前の腰につけている小刀だよ。」
リュカは気づいていた、パシィが倒れていて出会った時からリュカはこの金の小刀に目を付けなかったのだ。父からは喉から手が出るほどに欲しいお宝だと聞いていたのでそれを盗まなかったリュカにさらに信頼をおいた。今もパシィを妹のように思ってくれて心配して怒っていたのだと思うと申し訳なくなった。
パシィが腰布につけた小刀に触れリュカに「気づいてたのね。」
リュカが当たり前だと言うように軽く笑って「パシィの親父さんがそれを持っていたってことはこの国のお偉いさんであったことは確かだ。それを王国の城で見せればきっと魔術師にもあえるだろうよ」と優しく微笑んだ。
「リュカ、ありがとう。ここまでくれば大丈夫。」
「そうだな、さっきの行動はちと心配だが。大丈夫だろう、城は目の前だ。日が暮れる前に早く行きな。」王国の町を抜けて城は目前だった。
「リュカ、今はお礼が何も出来ないけどあなたにお礼がしたいの。私が帰ってきたら、必ずまた会いましょう。」パシィはリュカに手を差し伸べた。
「パシィとの旅楽しかった。お礼何ていいさ、まっお前がどうしてもっていうならな。」パシィの手を握り二人はまた会うことを約束した。
リュカと別れ、パシィはキクリとの最後の旅を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます