【寝取られ勇者】は幼馴染への一途な恋を貫く！

乙女ざかり

＃街道（かいどう）の旅（たび）は、いまだ二日（ふつか）目（め）で、その夕（ゆう）暮（ぐ）れのこと――

　夜（よる）は、闇（やみ）をはらみ始（はじ）めて、空（そら）に星（ほし）が瞬（またた）いて行（ゆ）きます。

　勇者（ゆうしゃ）一行（いっこう）は、街道から少（すこ）し離（はな）れた、目立（めだ）たない場所（ばしょ）で野宿（のじゅく）です。

　現在（げんざい）、案内（あんない）人（にん）『ジュリア』は、勇者『雄大（ゆうだい）』の顔（かお）を、食事（しょくじ）を摂（と）りながら、こっそりと眺（なが）めていました。

　雄大は、格好（かっこ）良（い）い体格（たいかく）の男前（おとこまえ）で、色気（いろけ）のある整（ととの）った顔をしています。

　ジュリアが、恋（こい）に落（お）ちるには、さほど時間（じかん）を要（よう）しませんでした。

　やがて、ジュリアが、雄大の顔を眺めていると‥‥雄大と、目（め）が合（あ）いました。

　雄大は、勘（かん）違（ちが）いの気（き）配（くば）りを告（つ）げます。

「トイレなら‥‥俺（おれ）を気（き）にせず、行（い）くと良（い）い」

「違（ちが）います！」

　ジュリアは、赤面（せきめん）しながら、慌（あわ）てて応（こた）えました。

　ただ、ジュリアは、自分（じぶん）の想（おも）いが遂（と）げられない事（こと）に、気付（きづ）いています。雄大は、聖女（せいじょ）『紗夜（さや）』への報（むく）われない恋に、心（こころ）を囚（とら）われていました。

　ところで、聖女『望月（もちづき）紗夜』（１８才（さい）、４月（がつ）生（う）まれ）は、勇者『日野（ひの）雄大』（１７才、２月生まれ）の幼（おさな）馴染（なじみ）です。

　紗夜は、魔王（まおう）側（がわ）の人材（じんざい）として、召喚（しょうかん）されました。そして、魔聖婚（ヒエロガモス）式典（しきてん）（公開（こうかい）儀式（ぎしき））で、魔王に処女（しょじょ）を奉（ささ）げて、魔王の情婦（じょうふ）となりました。

　対（たい）する雄大は、魔王による聖女召喚に対抗（たいこう）して、人間（にんげん）側が召喚した人材です。

　ところが、雄大が召喚されたのは、魔（ま）聖婚（せいこん）式典の当日（とうじつ）でした。雄大は、あられもない決定（けってい）的（てき）瞬間（しゅんかん）を、魔王側からの魔法（まほう）ライブ映像（えいぞう）で目撃（もくげき）しました。

　それは、魔王の子種（こだね）を受（う）け入（い）れた瞬間の『幸（しあわ）せそうな紗夜の姿（すがた）』です。

　ともあれ、２４才のジュリア・フォレスターは、いま‥‥恋に落ちています。